〈1・4〉 男たちの反逆
●若い恋人たち:妊娠した女性のお腹を蹴る男の話
ある風俗店で働いていた21歳の女性が、なかなか良い彼氏に恵まれず悩んでいた。ところが、ある時点から急にウキウキした様子で「彼氏できたーーっっ!」と報告してきた。
美人であり、多少破天荒な部分を除けば基本的に性格の良い女性だったので、言い寄ってくる男性は多かった。いろいろなタイプの男性と付き合ってきたが、どれも長続きしなかった。今回の相手はキャバクラのホールスタッフをしている彼女より一つ年下の若い男性で、彼女が言うには優しい男とのこと。はじめて長続きするタイプの男性とめぐりあえたのが相当うれしかったようだ。当然彼女としては、結婚も視野に入れていてSEXも相手の望むがままにして避妊もしなかった。同棲もして彼氏は稼いできた給料を彼女に全額渡して二人の生活費の管理は彼女に任せていた。
ある日、彼女は妊娠した。子どもができたのがうれしくて将来3人で甘い生活を送れることを夢見ていた。妊娠3ヶ月を過ぎたあたりから彼氏は彼女のおなかを蹴るようになった。彼女は「なんで子どものいるおなかを蹴るの?」と泣いていたが、男性側からすると理由は明白だった。しかし、それを彼女に伝えたところで納得しないことも明らかだったので言えなかった。その後、金銭トラブルで疎遠になってしまったので、彼女とおなかにいた子どもがどうなったのかは知らない。
ふつうの男性は結婚するかどうかの判断をするときは、結婚後の将来を想像し、そのうえで覚悟をきめて結婚する。できちゃった結婚を除けば単なる見切り発車はしない。男性にとって結婚は妻と子どもたちを養う責任をとることであり、恋愛している現状と結婚という予想される現実を天びんにかけて選択する。独身である現状より不自由になったとしても総合的に考えてメリットがある、苦しいことがたくさんあったとしても愛し続けられると判断するか、いろいろ考えて悩んだ挙句にごちゃごちゃ考えてもよくわからないから勢いで結婚するかのどちらかで、恋愛結婚の場合はたいてい後者である。
まっとうな社会的感覚を持って生きている男性たちならば決して考えないだろうが、アウトロー的な男たちの一部で流布している話は、
「付き合っている女が、もし望まない妊娠をしたら女の腹を蹴って流産させろ。それが最も手っ取り早い。」
というものだ。今回の話の登場人物である相手の若い男性は、キャバクラ勤務で立場的にほぼ新人で、キャバ嬢たちにはいろいろときつい注文をされ、男性の先輩たちの指導も厳しく、心身ともにヘトヘトになるまで働いていたから、この状況に加えてまだ若すぎるのに子どもがいる生活など考えただけで気が狂いそうになるため、流産させる道を選んだと思われる。彼女のほうは病院に行って中絶手術を受けるなどということはさらさら考えていなく、彼氏とケンカになったときは、彼女が窓ガラスを割るくらい激しいケンカになると笑いながら語っていたので、この彼氏の精神的ストレスは相当強かったであろうと想像される。




