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最強のザコ(なろう版)  作者: 或亜豊
第三章 ゲ賊
9/10

第一部 金剛編 第三章 ゲ賊 第30~32話

『最強のザコ』は、カクヨムで連載している作品です。


カクヨム版はこちら→https://kakuyomu.jp/works/16818792440121150740/episodes/16818792440121414856




小説家になろう版は、カクヨム版にあった暴力描写、性描写をゆるめた全年齢対象作品となっています。


また、一回の投稿で5000文字以上(3~5話分収録)としています。


ストーリーは同じですが、媒体に合わせて描写や文字数を変えているので、読みやすい方を選択ください。

第30話 〈内在〉と〈外在〉


◆◆


「そっか。〈内在〉と〈外在〉は、金剛(ヴァジュラ)の使い方が根本的に違うんだ」


「達人なら〈外在〉でも同じように武器を錬成することも可能だ」


「うん」


「だが、今のお前にそれは無理だ」


「だったらどうしたら……」


「選択肢は2つだ。一つは通常兵器で補う。〈鈍刀(ドントー)〉の練成における時間のレスを避けるには、それが無難な選択だ」


「うん」


「武器屋に行けば、代わりになるナイフが売ってる。相手が人間ならそれで十分だ」


「もう一つは?」


「近接戦闘用の武器を〈内在〉で練成する」


「そんなことできるの?」


「理論上は可能だ。だが金剛の基本は〈外在〉。〈内在〉は邪法とされている。だから両方使う奴はいない」


「……キュウタは?」


「オレは〈外在〉が使えない。〈外在〉を使えない人間が金剛’(ヴァジュラ)を操るために生み出したのが〈内在〉だ」


「どうやったらできるの?」


「〈内在〉か?」


「うん」


「体内に金剛(ヴァジュラ)を取り込んだ時、身体に耐性があればできる」


「耐性?」


「詳しくは知らないが、耐性がないと金剛と身体を接続することができず、体内で消化されてしまうらしい」


「どうやったら耐性はできるの?」


「生まれつきだ。まれに金剛(ヴァジュラ)による攻撃を直接皮膚に受けると体質が変化する……というこちもあるらしいが……」


「あっ」


 ミチオは右手の掌を広げて〈鈍刀(ドントー)〉のイメージをした。


 〈外在〉による練成の時は大気中に散らばる粒子状の金剛ヴァジュラを掌に集めるところからイメージしたが、今回は体内から掌に金剛ヴァジュラが集まる姿をイメージした。


「……できた」


 キュウタと比べるとスピードは遅かったが〈外在〉よりも早く、ミチオの手に〈鈍刀(ドントー)〉が練成された。


「ミチオ。〈内在〉使えたのか?」


 ミチオは上着をめくり、腹をキュウタに見せた。

 キュウタはキョトンとしている。


「キトラの三摩耶形(サマヤ)、たしか甘露(アムリタ)螺旋白蛇(クンダリーニ)〉って言うんだけど、それを使うための特訓で、攻撃を受けた後、治癒を受けていた」


「治療?」


「原理はよくわからないけど、キトラの髪が白い蛇になって傷口に噛み付くんだ。すると牙から金剛が出てきて傷口を塞ぐんだ。その時の感じがなんか……」


「どうした?」


「いや、なんでもない」


「いつからだ?」


「え?」


「その特訓、いつからやってた」


「2年前……」


「それで耐性ができたのか……」


 表情はいつもどおりポーカーフェイスだったが、キュウタの口調は明らかに驚いていた。


「前に金剛(ヴァジュラ)を口に入れた時に、身体の調子が良くなったから、もしかしたらって思ったけど……」


「傷口から金剛(ヴァジュラ)が体内に流れこんでたんだな」


「でも今ので、この間、取り込んだ石獣(ヒビワレ)の分は、もう使い果たしたみたい」


「明日までにモノにするのは無理だな。だが〈内在〉と〈外在〉、両方使えるとなれば、戦いの幅は大きく広がる。それにミチオには奥の手もある」


「うん。でもあれは本当に奥の手だよね」


「ないよりマシだ」





第31話 ザコくん。装備を整える。



 午後になると、ミチオは装備を整えるため、武器と防具を扱っている店へと向かった。


 まずミチオは、〈鈍刀(ドントー)〉の代わりとなるサバイバルナイフを購入した。


 そして革性の鎧、ブーツ、篭手を購入。余裕があれば兜も欲しかったが「慣れないと戦いの邪魔になる」とキュウタは見送った。


 ショップには銃火器も売っていたが、金剛使い(ヴァジュラシ)にとっては不必要なものなので今回は見送った。


 この時代の銃火器は、金剛(ヴァジュラ)の皮膚で覆われた石獣(ヒビワレ)の皮膚を貫くほどの破壊力を持ち合わせていたなかった。


 ただ、それでも流通しているのは、生身の人間に対しては十分通用するからだった。


◆◆


 装備を揃えたことで、母親が荷物に入れてくれたお金はほとんど使い果たしてしまった。


「キュウタは軽装だね。防具はつけないの?」

「必要ない」


 キュウタの服装は黒いブカブカの袖なしランニングシャツに膝までの短パンというバスケの選手のユニフォームを思わせるもの。


 布の面積が少なく、いつでも脱げる格好だった。  


 肉体を金剛(ヴァジュラ)化させた際に何度も衣類が傷つき駄目にしてしまうため、鎧のたぐいは邪魔だった。


「値段的に革がベストっぽいけど、銅とか鉄もいいなぁ」


「金属製は長旅には向かない。慣れてないと重量で体力を消耗する」


「これは、えーとスケイル?」


「小さい金属のパーツで構成された鱗状の鎧だ。ガチャガチャうるさい」


「へー。パーツごとに分解できるのか。これだったら、一部が壊れてもすぐに取り替えられる……」


「どうした? もう用がないなら次に行くぞ」


「キュウタ。これ使えないかなぁ?」




第32話 ザコくん。ゲ賊と戦う。



 3日後。


 二人はカギュウ街から2キロほど離れた峠に向かった。


「待ちな。ここは関所だ。交通費を払いな。……ってオメェ!」


「この間はお世話になりました」


 ミチオは申し訳なさそうに頭を下げた。


「お前らは賞金首だ。おとなしく投降しろ」


 キュウタは小型タブレットで動画撮影をしながら「投降しろ」と警告する。


 投降することはないとわかっていた。


 これは業務上の手続きのようなものだった。


 相手が警告を拒絶する前に先制攻撃することは「野良犬」では厳禁で、警告なしに攻撃したことがわかると賞金を減額されることもあった。


「黙れガキ。オレ達は自由だ。フリーダムなんだよぉ! クソみたいなカギュウの言いなりになんかならねぇ!」


 ゲ賊のナンバー2、ドーが悪態をつくと、ロー、コー。ソーが「そうだ!そうだ!」と合いの手を入れる。


 一方、リーダーのスーは後ろで構えて、二人の様子を冷静に観察していた。


 目つきの鋭いガキ。


 こいつがリーダーか。


 もうひとりのつぶら目、イチゴ鼻のガキは革鎧で武装している。


 脇に挿しているのはサバイバルナイフ。


 どうやら戦いの準備はそれなりにしているようだな。


 どっちも金剛使い(ヴァジュラシ)か。  


 おそらく〈()〉じゃない。〈野良(フリー)〉か?


 まぁ、ちゃんと戦えば始末できるだろう。


 だが、こいつらを倒した後も新手の〈野良(フリー)〉が湧いてくるのは時間の問題だな。

 

 そろそろ餌場を変えるか。


「おい、スーちゃん、どうする」


「ばか、スーちゃんって呼ぶな。賊長と呼べ」


 スーはドーを怒鳴りつける。


 二人は幼馴染で海辺の村で生まれた。


 貧しい生まれゆえに幼い頃から悪さをしていたら村を追われ、山賊稼業をしながら旅をしてきた。


 金剛使い(ヴァジュラシ)でアル中のローを仲間に入れたことをきっかけにゲ賊を結成。


 それ以降、仲間たちはゲの性を名乗るようになった。

 

 やってることはチンケな犯罪行為だったが、悪行に手を染めているという自覚があるからこそ5人の結束は硬かった。


「行け」


「うん」


 ミチオが一歩前に出る。


「なんだ。また、てめぇーか?」


「舐めやがって」


「今度は負けない。五人まとめてかかって……こっこい!」


「やば。こいつ噛んでやんの」


 自信があるかのような口調でミチオは答える。


 それは精一杯の虚勢だったが5人にはバレバレだった。


 戦いになれば5人同時にかかってくる可能性が高かったが、前回の失敗から5対1は避けたいとミチオは思っていた。


 まずは一対一に持ち込み、少しでも数を減らす。

 

 それがミチオの考えだった。そのため、わざと挑発的な物言いをした。


「兄者。こんなやつ、オレ一人で大丈夫だ」


 アル中のローが革袋に入った酒を飲みながら前に出た。


「ロー、勝手に前に出るんじゃねぇ」


「まぁいいだろ。ローお前がやれ」


「スーちゃん!」


「うぃっぷ。小僧。お前、同業だよなぁ。おれも、実はぁ。あだますたぁなんだ」


「あだま?」


 ローは酔っ払っており、千鳥足でミチオに近づく。

 完全に舐められているとミチオは思ったが、これは好機だとミチオは思った。


 ミチオは〈外在〉で大気中に漂う金剛(ヴァジュラ)の粒子を集める。


「てめぇの身体、金剛(アダマス)の匂いがぷんぷんするぜ」


 ローは右手に革の酒袋、右手には手斧を持って構えている。


 足元はふらついているが巨漢でミチオよりも大きい。

まともにぶつかればやられる。

 

それにやつの金剛法術(ダルマ)はわからない。


正体がわからない以上、うかつに近づくことはできない。


だからまずはやつの手の内を暴く。


そうミチオは考えた。


ミチオは4発の〈尖弾(センダン)〉を飛ばす。


おぼつかない足だがローは素早い動きですらすらと交わしていく。


「次」


 焦ることなくミチオは続けて4発の〈尖弾(センダン)〉を飛ばす。


今度は低い位置から足元を狙ったが。ひょいひょいとローはかわすと酒をくいっと飲んだ。


「ミチオ、コイツただのアル中じゃない」


「うん」


「ガキの時オレは、サルベージされた円盤で旧世界の映画を見た」


「……」


「酒を飲めば飲むほど強くなる男の話だった。チョー感動したぜ。その時からオレは酒無しには生きられねぇ身体になった。周囲からは馬鹿にされてたが、あの映画を見てオレは悟った。酒こそがパワーだってな」


 ローはフラフラと揺れながら、着実に間合いを詰めていく。


 〈尖弾(センダン)〉は当たらない。


 だったら!


 ミチオは続けて〈尖弾(センダン)〉を4発撃った。


 かわされるのはわかっていた。


 だからミチオの方から間合いを詰めた。


 そして腰に挿していたサバイバルナイフを抜いて、懐めがけて突き刺す。


「効かねぇよ」


 サバイバルナイフの刃先をローは手斧で弾く。


 単純な戦闘力ではローの方が格上だった。


「うぇっぷ」


 ローの顔色が真っ青になる。


 その刹那、口から大量の吐瀉物がミチオの顔にかかる。


 怯んだミチオは顔を抑えて地面に転ぶ。


「くらえ、これがオレの金剛星印(アダモス・アスタリスク)酩酊饗宴(デュオニソス)〉じゃぁ!」


 吐瀉物にはアルコールとローの朝食。


 そして大量の金剛(ヴァジュラ)が混ざっていた。


 彼が常時飲んでいる酒は金剛が混ざっていた。


 ローはこの酒を常時体内に取り込むことで金剛(ヴァジュラ)を練成していた。


 アルコールに解けた金剛(ヴァジュラ)は独自の粘りと悪臭を放ち、まともに喰らって動ける人間はほとんどいなかった。


 つまりローの吐瀉物は一度くらうとまともに動くことができない有毒物質だった。


 その吐瀉物を浴びせた時点で彼の勝利はほぼ確定だった。だが、そこから〈酩酊饗宴(デュオニソス)〉の本当の恐ろしさは発揮される。


「知ってるか? アルコールって燃えるんだぜぇ」


 ローはポケットからライターを取り出し火をつけるとミチオに投げる。


「ジ・エンドだ」


ミチオの身体は着火し激しい炎が全身を覆った。


「ローのやり口、相変わらずエゲツねぇな」


「オレ、あの匂いだけでうぉえー」


 コーは気持ち悪くなって嘔吐する。彼は下戸だった。

「おい、小僧。お前の相棒は火だるまだ。次はお前か?」

 ローがキュウタを挑発する。

 しかしキュウタは平然としている。


「おめぇ、ハクジョーだな。ダチのこと助けなくていいのか? あぁ?」


「まだ終わってない」

「なんだと?」


 火だるまになったミチオがゆっくりと起き上がる。


「はぁはぁはぁ」


 炎が拡散していく。ミチオは無傷の状態でそこに立っていた。


「てめぇ……どうして」


 ローの動きを見て、何かあるとミチオは睨んだ。しかしそれが何かわからなかった。


そこで彼は相手の攻撃を誘発し、攻撃が来た瞬間、全身を金剛(ヴァジュラ)でコーティングする〈薄膜(ウスマク)〉を発現した。


 吐瀉物を浴びたところにライターを投げつけられ、ミチオの全身は燃え上がったが、それは〈薄膜(ウスマク)〉の金剛だけだった。


 もしも火力が強ければ、〈薄膜(ウスマク)〉を溶かしミチオの身体を焼き尽くしたかもしれないが、そこまでの火力はローの攻撃にはなかった。


「ふざけやがって。オレの〈酩酊饗宴(デュオニソス)〉は無敵だ」


 ローは革袋に入った金剛の混じった酒を全て飲み干す。

 そして、スペアとして残していたライターを取り出し着火すると一気に吐き出した。


 吹き出した酒は燃え、曲芸師のように火炎を放射した。


 しかしミチオはその攻撃を読んでいた。


 ミチオはスライディングの体勢になって地面を滑り、ローの足元に入り込んだ。


 そして、胴体に魚の鱗にように付着させていた無数の〈尖弾(センダン)〉を一気に発射した。


身体に無数の〈尖弾(センダン)〉が直撃し、ローは気絶した。



掲載は不定期です。



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