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最強のザコ(なろう版)  作者: 或亜豊
第三章 ゲ賊
8/12

第一部 金剛編 第三章 ゲ賊 第25~29話

『最強のザコ』は、カクヨムで連載している作品です。


カクヨム版はこちら→https://kakuyomu.jp/works/16818792440121150740/episodes/16818792440121414856




小説家になろう版は、カクヨム版にあった暴力描写、性描写をゆるめた全年齢対象作品となっています。


また、一回の投稿で5000文字以上(3~5話分収録)としています。


ストーリーは同じですが、媒体に合わせて描写や文字数を変えているので、読みやすい方を選択ください。

 第25話 ザコくん。山賊に囲まれる。


 ◆◆


 延々と続く荒野を抜けて、キュウタとミチオはカギュウ国へ向かっていた。


 カギュウは周辺地域の物流拠点となっている商業都市で、多くの食料や武器がカギュウを経由して全国に運ばれていた。


 ゴドウがそうだったように、カギュウもまた国と呼ばれてはいたが、その内実は商業都市だった。


 この時代の村や街はその規模に関係なく、国と呼ばれていた。


 そして土地の名前は、その地域を治める豪族の氏が用いられていた。


 無論、豪族はすべて〈手の(ランテ)〉であり、カギュウ家もまた金剛手の家系だった。


 峠の道を登っていくと、カギュウが見えた。


 ゴドウよりも大きな街で、人の賑わいが激しく商店が多いのが遠くからでもわかる。


 街は高い壁で覆われ入り口は一箇所。


 おそらく何度も攻め込まれた結果、防衛力を高めていったのだろう。


 壁の四方には弓を構えた兵士が立っており、何かあればすぐに射とうと待ち構えている。


「疲れたか?」


「流石に村を出て三日だからね。でも思ったよりは動けるかな」


 犬型石獣(イヌガタ・ヒビワレ)から取り込んだ金剛のおかげで多少の飢えはあったが体調は万全だった。


「入ったらまず宿に泊まろう。だが……」


「!?」


「そう簡単には行かないようだ」


 ミチオとキュウタの前に五人の屈強な男たちが現れた。


 男たちは毛皮のコートの下には革の鎧を着ており、それぞれ狼を模した兜を被っている。


 そして手には蛮刀や手斧を持っている。


 間違えない。山賊だ。


 五人は全員巨漢で身長は180cm以上で、体がガッチリしている。


 真ん中のリーダーらしき男に至っては2メートル近くある。


「ボクたちぃ。カギュウに行きたいのかなぁ?」


 真ん中の男が舐め腐った口調で話しかけてくる。


 すると残りの四人がヘラヘラと笑う。


 子どもだと思って二人のことを完全に見下しており、同時にとても威圧的だ。


「ここは関所だ。カギュウ国に入りたいのなら通行料を払いな」


「どけ」


 ミチオはよくわからず、そういうものかとお金を出しそうになった。


 しかし、キュウタは間髪入れず拒絶した。


「はぁ? てめぇ、それが目上の者に対する口調か?」


「どけ」


「最近のガキは親の躾がなってないようだな」


「いない」


「ほー。俺たちと同じじゃねーか」


 なめた態度の男たちに対してキュウタは淡々と言い返し、全くひるまなかった。


 そんなキュウタをミチオは誇らしいと思いながらも、できれば無駄な戦闘は避けてほしいと願った。

  

 だが外の世界にはゴドウ村とは違うルールがあり、今の自分にはそれが全く理解できない。


 だから余計な口を挟むことは避けようと、ミチオは思った。


「ここは関所だ。街に行きたいなら通行料を払いな。そうだなぁ。銀貨二枚でどうだ?」


「前、通った時は関所なんてなかった」


「今できたんだよぉっ!」


「カギュウの許可は取ってるのか? 証明書を見せろ」


「そんなもんあるわけねぇだろぉ」


「ひゃっひゃっひゃ!」


 後ろの四人が同時に笑う。


「消えろ。バカと話す時間はない」


「俺たちはバカじゃねぇぞぉ。すげーぇ強ぇえんだからよぉ!」


「ストロングッ!!」


 五人が道を塞ぐ。どうやら簡単は通れないらしい。そうミチオは思った。


「ミチオ。お前がやれ」


「え? 一人でってこと?」


「そうだ。ただし〈あの力〉は使うな」


「でも……?」


「これは試験だ」


「……そうだよね。まだ試用期間だもんね」


「何グダグダ喋ってんだよぉ! こっちはエンジンフルスロットルなんだぜぇい!」


「……わかったよ」


 ミチオは一歩前に出た。





 第26話 ザコくん。ボコボコにされる。


 ◆


 5分後。五人に袋叩きにされてボロボロになったミチオは地面に倒れていた。


「……生きてるか?」


「……うん」


 ミチオは五人の男たちの前に立つと、覚悟を決め、まず〈尖弾(センダン)〉を放った。


 ミチオを金剛使い(ヴァジュラシ)だと察知した男たちは即座に警戒し、防衛体勢に入った。


 だが、ミチオのたどたどしい動きを見て、コイツは素人だと判断した。


 彼らはミチオを取り囲み、同じタイミングで攻撃を仕掛けた。


 初めの男の手斧による攻撃と二番目の男による蛮刀の斬撃はなんとか交わした。


 だが、背後から羽交い締めにされ、ボコボコに殴られた。


 ミチオに勝ち目がないと悟ったキュウタは即座に金剛(ヴァジュラ)を発動し、硬化させた〈黒い左手〉で五人を薙ぎ払った。


「畜生ォ! 卑怯だぞォ。金剛使い(ヴァジュラシ)なら先に言えッ!」


「今度合ったら袋にして海に沈めてやるっ。覚えてろッ!」


 自分たちに勝ち目がないと判断した山賊たちはその場を退散した。


薄膜(ウスマク)〉で全身をコーティングしていたため、致命傷には至らなかった。


 だが、男たちの手斧や蛮刀が直撃していたら死んでいただろうと、ミチオは思った。


「……ごめん」


 ゆっくり起き上がるとミチオはキュウタに謝った。


こんな無様な姿を見せたんだ。


バディは解消かもしれない。そうミチオは思った。


「なぜ謝る?」


「……倒せなかった」


「気にするな」


「……でも、試験じゃなかったの?」


「お前の力を知りたかっただけだ」


「だから一人で戦わせたの?」


「そうだ」


「……ボク弱いよね」


「あぁ。弱い」


「……」


「だが、収穫もあった」


「え?」


「できることとできないことを知る。まずはそこからだ」


「……」


「先生の言葉だ」


「先生?」


「……歩けるか? 行くぞ」


「うん」





 第27話 ザコくん。「野良犬」を訪れる。


 ◆

 

 カギュウ国に入ったキュウタは、眠っているドーベルマンの絵に「野良犬」と書かれた看板が掲げられている雑居ビルのドアを開いた。


 建物の壁は煉瓦。


 中央には暖炉があり、8人の男女が固そうなピザを食べていた。


 キュウタとミチオが扉を開けて中に入ると8人がこちらを睨んだ。


 だが、キュウタは彼らと目をあわせることも挨拶をすることもなく、まっすぐカウンターへと向かった。


「おっ生きてやがったか? 〈半邪鬼(ハンジャキ)〉」


 髭を生やした坊主頭の男がキュウタに話しかける。どうやらここの店主みたいだ。


狼型石獣(ウルフ・ヒビワレ)を10体倒した。だが、シモン2体は逃した」


「証拠は?」


「エリア21、ゴドウ国周辺。座標は41:38」


「写真や動画は?」


「撮る暇がなかった」


「だったら賞金は出せねぇな」


「現場鑑定士の派遣を頼む。支払いは賞金から引いてくれ」


「まいどー」


 坊主頭の男の顔が緩む。報酬額を減らせたのが嬉しいようだ。


「今日は宿に泊まる。二人部屋は空いてるか?」


「お前とオレの中だ。ツケにしといてやるよ」


「あと、コイツを賞金稼ぎに登録したい」


「わかった。ここに名前を書け」


 受付の男は分厚い帳簿を渡した。言われるままにミチオは自分の名前を書いた。


「コザカナ・ミチオ……これ本名か?」


「はい」


「賞金稼ぎになるくらいだから、どうせワケアリだろ。偽名にしとけ。なんかねーのか? カッコいいアダ名とか」


「オレも本名だ」


 キュウタが割って入った。


「あれ? お前の登録名(エントリーネーム)半邪鬼(ハンジャキ)〉じゃなかったけ?」


「名乗ったつもりはない」


「じゃあ、通り名ってやつか」


「どうでもいい」


 坊主頭の男はニヤニヤと顔は笑ってる。


「偽名か。えーと」


 とっさのことで、ミチオは悩む。


「まぁ、ゆっくり考えな」


「……」


「どうせこれは仮登録だ。最初の任務で無事帰ってこれて、はじめて正式登録になる」


 ミチオは登記簿をみる。


 ミチオの上にある名前は全部、赤い二重線が引かれていた。


 おそらく戻ってこなかった仮登録の賞金稼ぎだろう。


 店主のキュウタに対する態度と自分に対する無関心な態度の落差に最初は面食らった。


 おそらく自分は生きて戻ってこないと店主は判断したのだろう。


 明らかに舐め腐っている店主の態度に苛立つ気持ちはあった。


 しかし、峠で男たちにボコボコにされた自分の不甲斐なさを思うとそれも仕方のないことだと、ミチオは思った。


「それで、そいつの最初の依頼だ」


「名はゲ賊。街を出た峠で勝手に関所を開いて通行料を奪う奴らがいるんだ」


「……」


「ゲ・スーをリーダーとした山賊集団でゲ賊と名乗っている。カギュウ家からの依頼だ。二人でやるか」


「はい」


「このターゲットは現在、お前たちだけの独占案件だ。期限は3日。期限を過ぎたら情報が賞金稼ぎ全員に公開される」





 第28話 何で負けたかわかるか?


 ◆◆


 二人は二階の奥にある部屋へと向かった。


 部屋にはベッドが2つ並んでいる。


「あいつらゲ賊って言うんだ」


 ミチオはゲ賊の賞金が書かれたリストを見る。

 

 ゲ賊全員の捕獲(生死は問わない)    


 賞金 金貨 1枚


 ゲ・スー ゲ賊のリーダー   戦士   


 賞金 銀貨50枚


 ゲ・ドー ゲ賊のナンバー2  戦士   


 賞金 銀貨20枚


 ゲ・ロー ゲ賊のナンバー3  金剛使い 


 賞金 銀貨20枚


 ゲ・コー ゲ賊のナンバー4  不明   


 賞金 銀貨 5枚


 ゲ・ソー ゲ賊のナンバー5  不明    


 賞金 銀貨 5枚

 

 この時代に流通している通貨は銅貨、銀貨、金貨。銅貨100枚が銀貨1枚に相当し、金貨一枚が銀貨100枚に相当する。

 

 現在の日本円に換算すると銅貨一枚は1万円。つまり金貨一枚は1億円相当の価値だといえる。ただ金貨を使うのは大きな取引のみで、食料や宿代のような銅貨一枚未満の取引には、各市町村でのみ通じる地域紙幣が使用されている。

 

◆◆◆◆◆


「こんなにもらえるんだ。ボク、金貨なんて見たことないよ」


「手数料で2割引かれる。正確には銀貨80枚だ。装備の準備金や移動の際にかかる食費等はこちら持ち」


「それに……失敗したら死ぬかもしれない……んだよね」


「そう考えれば激安案件だ」


 ミチオは言葉に詰まった。しかし選択肢はなかった。


「敵の情報がわかってるのはラッキーだ。この間の戦いを踏まえた上で対策を考えろ。3日後、戦いを挑む」


「……またボク、一人で戦うんだよね」


「……お前ならできる」


「……」


◆◆◆◆◆


「何で負けたかわかるか?」


「敵が5人だから?」


「人数は関係ない。囲まれて逃げ道を失ったことの方が大きい」


「そっか……」


「あと切り替えが遅かった。最初の遠距離攻撃はそれなりに通じていた」


「……」


「だが、敵が距離を詰めてきたときに近距離攻撃用に金剛(ヴァジュラ)を切り替えた際に動きがもたつき、時間のロスが生まれた」


「うん。そこで突っ込まれた」


 それはミチオの抱えている致命的な弱点だった。


キトラとの特訓でも〈尖弾(センダン)〉から〈鈍刀(ドントー)〉に切り替える際の隙をついて攻撃を受けていつも敗北していた。


キトラは〈尖弾(センダン)〉の数が足りないと言っていたが、ミチオも攻撃の切り替えの際に起きる時間のロスが気になっていた。


「あとは攻撃力。お前の鏃も刀も、強度が弱い」


「そうだね」


 攻撃の切り替えによる時間のロスと強度のなさ。

それがミチオの弱点だった。





 第29話 ザコくん。キュウタと特訓する。


 ◆◆


 それから二人は疲れを癒やすために睡眠を取った。


 3日と言われたが、登録した今日も含まれるため、あと2日しかなかった。


 そのため二人は2日目を準備に当てることにした。

 できれば一週間くらい特訓に当てたいと考えていたが、悠長にかまえていることはできない。


 必要なことは戦場で覚えるしかないのだと、ミチオは覚悟を決めた。


 二日目の朝。


 二人は「野良犬」の地下にあるトレーニングルームへと向かった。


 筋トレ用の施設はそれなりに揃っていたが、キュウタは目もくれずに、バトルルームに入った。

 

「攻撃してみろ」


「でも……」


 バトルルームはガラス張りで外から丸見えだった。


 そのため、二人のことを賞金稼ぎたちが見ている。


「気にするな。見られて困るような戦いじゃない」


「そうだけど、緊張するなぁ」


「時間がない。まず弱点を塞ぐ。オレに攻撃をしろ」


「わかった」


 ミチオは目を閉じて念じる。


 大気中に散らばる塵芥状の金剛(ヴァジュラ)が集まり、小さな鏃へと変わっていく。


 ミチオは〈尖弾(センダン)〉を5体錬成するとキュウタめがけて飛ばした。


 キュウタは右腕に錬成した小刀で〈尖弾(センダン)〉をすべて弾き落とした。


 ダメだ。


 まったく歯が立たない。


 ミチオは自分の非力さに落胆した。


「続けろ」


「うん」


 ミチオは引き続き〈尖弾(センダン)〉を飛ばす。


 手に持った小刀を避けるために左側を狙った。


 しかしキュウタは硬質化させた左手で、弾き返す。


「続けろ」


「うん」


 今度はキュウタの足元をミチオは狙った。


 その次は頭部。


 様々な角度から弱点を突こうと狙った。


 だが、キュウタに死角はなく、やがてミチオは地面にへたり込んでしまった。


 その一瞬をキュウタは見逃さなかった。


 すぐさま走り出し間合いを詰めるキュウタ。


 ここで来るのかよ? 


 ミチオは〈鈍刀(ドントー)〉を錬成するが動きが遅い。


 キュウタは喉元に〈牙剣(ガケン)〉を突きつける。


「死んだな」


「うん……」


◆◆


「気づいたことはあるか?」


「ボク……弱いね」


「いや、そうでもなかった」


「え?」


「お前は12発連続で〈尖弾(センダン)〉……による遠距離攻撃をおこなった。一度に出せる弾は5発。強度は弱いが、鍛え方次第だ」


「うん」


「逆にオレと戦って気づいたことはないか?」


「え?」


「考えろ。敵の動きを分析するのも大事な力だ」


 ミチオはキュウタとの戦いを思い出していた。


「えーと。キュウタはボクの攻撃をすべて弾き返した。そしてボクの尖弾が尽きたところで、間合いを詰めて刺し殺そうとした。実践なら確実に死んでいた……と思う」


 ミチオは思いつく限り言葉にしてみた。


「ボクの攻撃をキュウタはすべて弾き返した。はじき返したけど……そういや、どうしてキュウタは〈尖弾(センダン)〉で遠距離攻撃しなかったの?」


 ふと頭に浮かんだことをミチオは尋ねた。


「しなかったんじゃない。できないんだ」


「え!?」


「なぜ驚く?」


「いや、キュウタにもできないことあるんだなって思って」


「〈内在〉の弱点だ。〈内在〉と〈外在〉の違い、わかるか?」


「確か、大気中に散らばっている金剛(ヴァジュラ)を集めて錬成するのが〈外在〉。今、ボクがやってるやつ」


「そうだ」


「それでキュウタがやってるのが〈内在〉。金剛(ヴァジュラ)を体内に取り込んで内側から皮膚自体を硬質化させる。左手のやつがそうだよね」


「あぁ」


「じゃあ右手の〈牙剣(ガケン)〉は〈外在〉」?」


「いや、これも〈内在〉だ。見ろ」


 キュウタは右手を開いて見せる。


 掌から塊のようなものが盛り上がり短剣に変わっていく。


「うわぁ」


 爪や牙のようなものか? 


 ミチオは少し気持ち悪いと思ったが、キュウタに悪いと思ったので黙っていた。


「体内に吸い込んだ金剛で〈牙剣(ガケン)〉は錬成している。本当は外部の金剛(ヴァジュラ)も集められるといいのだが、一度体内に吸い込んでからでないとうまくいかない」


「だから(錬成が)早かったんだ」


自分の三倍以上のスピードで〈牙剣(ガケン)〉を生み出すキュウタの手さばきにミチオは驚く。 


「ただ、欠点もある」


 そう言うとキュウタは短剣を手放した。


 地面に落ちる前に短剣は塵芥となって大気中に消えていった。


「ミチオもやってみろ」 


「うん」


 ミチオも〈鈍刀(ドントー)〉を錬成した。


 そして手から離して地面に落とした。  


 落下した〈鈍刀(ドントー)〉は地面に落ちるとガンッという音を立てたが、その形は保たれていた。


 それから10秒ほどして〈鈍刀(ドントー)〉も消えたが、キュウタの〈牙剣(ガケン)〉よりは長持ちした。


「これが〈内在〉だ。皮膚から直接金剛(ヴァジュラ)を送り込むから短時間で錬成できる。だが皮膚との接触が離れると途端に強度が落ちて雲散霧消する」


「強度があるのは、体内の金剛(ヴァジュラ)を常に流し込んでいるから」


「そうだ」


「左手の、えーと?」


「〈半邪鬼(ハンジャキ)〉か」


「それは……三昧耶形(サマヤ)なの?」


三摩耶形(サマヤ)の詳しい原理は知らない」


「キトラはゴドウ家に代々伝わる聖典を幼い時から読み込んで、そのイメージを具現化した武具だって言ってた」


「〈半邪鬼(ハンジャキ)〉はオレの中にあるイメージが具現化したものだ」


「イメージ?」


「うまく言えないが、恐怖と怒りが形になったものだと先生は言っていた」


「キュウタ、先生がいるの?」


「あぁ」


「その人、今どうしてるの?」


「破門になった」


「……そうなんだ。ごめん」


「汚点だ。二度と会う気はない。最初、これは〈黒邪鬼(クロジャキ)〉と呼ばれてた。だが、部分的にしか具現化できないから〈半邪鬼(ハンジャキ)〉と呼ばれるようになった」


「ハンジャキ?」


「半分だけ鬼って意味だ」


「ひどいな」


「呼び名なんてどうでもいい」


 キュウタは興味なさそうに言った。 


「〈半邪鬼(ハンジャキ)〉も〈牙剣(ガケン)〉も原理は同じだ。体内にある金剛を用いて皮膚から錬成する。皮膚から切り離して手で持つのが〈牙剣(ガケン)〉。皮膚そのものを硬質化させることで顕現させたのが〈半邪鬼(ハンジャキ)〉」 


「皮膚……というか左手そのものと同化してるから、〈半邪鬼(ハンジャキ)〉は簡単に解けないんだね」


「強度だけなら〈半邪鬼(ハンジャキ)〉だけでも十分だ。だが、これにもリスクがある。だから盾として防御に使い〈牙剣(ガケン)〉で攻める」


そう言うとキュウタは右手に〈牙剣(ガケン)〉を錬成した。


「すぐ消えるのは短所だ。だが使い方次第で長所になる」


「そうだね」


 キュウタが石獣(ヒビワレ)たちと戦った時のことをミチオは思い出していた。


 キュウタは〈牙剣(ガケン)〉を使い捨てだと割り切り、敵に突き刺すとすぐに手を離して錬成していた。


 次から次に生み出した短剣をその都度刺していく。


 単純だが無駄のない戦い方だった。


「ミチオ。オレが何を言いたいかわかるか?」


「……〈内在〉には長所と短所がある」


「長所は何だ?」


「皮膚から直接錬成でき……あっ」


「気づいたか?」


「ボクの〈鈍刀(ドントー)〉の錬成が遅れるのは〈外在〉だから……」

 



掲載は不定期です。



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