第一部 金剛編 第一章 旅立ち 16~18話
『最強のザコ』は、カクヨムで連載している作品です。
カクヨム版はこちら→https://kakuyomu.jp/works/16818792440121150740/episodes/16818792440121414856
小説家になろう版は、カクヨム版にあった暴力描写、性描写をゆるめた全年齢対象作品となっています。
また、一回の投稿で5000文字以上(3~5話分収録)としています。
ストーリーは同じですが、媒体に合わせて描写や文字数を変えているので、読みやすい方を選択ください。
第16話 ザコくん・ゴドウ・ユキマサと戦うことに。
◆
キトラを倒したミチオは全力で走り、キュウタのいる廃ビル跡地へとたどりついた。
ここを出て58分。
なんとか間に合った。
しかし、キュウタの姿はそこにはなかった。
置いてかれた?
一世一代の賭けだったのに。
ミチオは落ち込んだ。
だが、ここで諦めたら終わりだ。
どちらにせよ、もう家には帰れない。
だったら一人で行くか?
いや、それはいくらなんでも無謀だ。
第一、どこに行けばいいというのだ?
ひとまず落ち着こう。まずは深呼吸だ。
ミチオは考えを切り替えた。
猛スピードで走ってきたので息が絶え絶えだった。
ミチオは呼吸を整えた。
呼吸が落ち着き冷静になると周囲の気配が見えてくる。
いる。……まだ近くに。
ミチオは目をつぶる。
金剛の気配……間違えないキシモリ・キュウタだ。
まだ遠くには行ってない。
だが、気配はもう一つある。
大きな気配。
これはゴドウ家の長男・ユキマサさんのものだ。
◆◆◆
そして物語は第1話冒頭につながる。
「観念しろ! 石獣。ゴドウ家の名にかけてお前を滅ぼす」
「……オレは人間だ」
「だったらその醜い左手は何だ? 全身を覆う醜い裂け目。それこそ石獣の証!
廃ビルからハズレた場所にある開けた場所でゴドウ・ユキマサとキュウタは睨み合っていた。
「キシモリく~ん!」
ミチオはキシモリ・キュウタに呼びかける。
「ユキマサさん。誤解です。彼は人間なんです。ひっ石獣ではありません」
「君は……ザコくん」
ユキマサがミチオを見る。
「確かこの間、試験を受けてた。キトラの友達の……何で君がここに?」
「キシモリくん。先に行っちゃったと思ったよ」
ミチオはユキマサを無視してキュウタに話しかける。
「追手が来た」
「……ゴドウ・ユキマサ。ゴドウ家の長男。〈手〉……です」
「だろうな。凄い金剛だ」
「ザコくん。彼は石獣だ。そいつから離れなさい」
「誤解です。彼は人間です。ただの賞金稼ぎです」
「彼の手を見たまえ、そのおぞましい右腕!」
「オレは金剛使いだ。これは〈内在〉によって生み出された腕」
「〈内在〉だとっ!? 貴様、邪法の使い手か!」
ユキマサの目つきが変わる。
「ユキマサさん。彼……キシモリさんには人間としての意識がちゃんとあります」
「金剛を体内に取り込むことは禁止されている」
「……」
「〈内在〉を使えば、意識と身体が乗っ取られ、やがて石獣化する。おそらく彼はもう……」
「オレは人間だ」
「金剛は正義の力。常に正しく用いられなければならない。法に背いて生み出される力は……悪だ!」
「お前らのルールだ。オレには関係ない」
「……どうやらもう手遅れみたいだな」
ユキマサが剣をキシモリに向ける。
「君はもう手遅れだ。今すぐ始末する」
「……コザカナ・ミチオ!」
「え?」
突然、キシモリに名前を呼ばれ、ミチオは戸惑う。
「あいつを倒せ。そしたらバディにしてやる。試用期間は一ヶ月」
第17話 ゴドウ・ユキマサの敗因
◆
「え? でも……」
「お前ならやれる」
ミチオはユキマサを見る。
ゴドウ・ユキマサは黄金の鎧で全身を武装し、右手には龍剣〈倶利伽羅〉(クリカラ)を握っている。
篭手から束には角の生えた黒い龍が絡みつき、モゾモゾと蠢いている。
試験で見た残り2つの三摩耶形はまだ発動していない。
剣も鎧も三摩耶形。
キトラの双剣〈無熱〉とは格が違う。
何より複数の三摩耶形を発動して自由に操るユキマサの持久力にミチオは改めて驚く。
あの黒い龍も金剛?
レベルはケタ違いだが、おそらく〈薄膜〉みたいに剣の表面を黒龍によって覆うことによって破壊力を何倍にも高めているのだろう。
どんな攻撃が来るのかわからないが、直撃を受ければ間違えなく即死だ。
「ザコくん。試験で君の金剛は拝見させてもらった。悪いけど、あの程度では私には通じないよ」
「……」
「それに君は三摩耶形を持っていない!」
ユキマサは「痛いところを突いてやったぜ」という得意顔を見せた。
「悪いことは言わない。今すぐここを去りたまえ」
「……嫌だ」
「何?」
「ボクはアンタを倒す。そして前に進む」
「わかった。受けて立とう。手加減はしないよ。ザコくん」
ユキマサが三鈷剣を構える。
「ナウマクサンマンダーボダナン」
剣に絡みついた黒龍がぐるぐると回転しながら刃先に登っていく。
刃先に黒龍が絡みつき、禍々しくねじれた刃へと変わっていく。
「カーン。倶利伽羅竜王よ。黒き炎となりて我が願いに応えよ」
ユキマサは、黒い炎に覆われた竜剣〈倶利伽羅〉を振り下ろす。
「天地両断!」
ユキマサは勝利を確信した。
彼にとってミチオは取るに足らない雑魚でしかなかった。
だが、たとえどんなに弱い相手でも、全力でぶつかるのがゴドウ家の矜持だと父から教えられてきた。
だからこそザコくんのミチオに対しても、全力で戦いを挑んだ。
〈倶利伽羅〉で焼き殺すのはその証明だった。
ミチオと仲が良い、妹のキトラにことを思うと胸が痛んだが、そこに油断や満心は一切なかった。
しかし彼はミチオの力を見誤っていた。
それこそがゴドウ・ユキマサの敗因だった。
第18話 これからよろしく
ユキマサを倒したミチオはキシモリ・キュウタと共にその場から急いで立ち去った。
二人は夜通し走り、気がつくと日が登っていた。
「ここまで来れば追っ手はこない」
「そうだね」
ミチオは周囲を見舞わす。
ゴドウ国の外れから更に離れると、建物らしい建物はなかった。
一応、道らしきものはあるが、路面はズタボロ。コンクリートは剥げ落ちており、隙間から草木が生い茂っていた。
「……これからどこに行くの?」
「まっすぐ進み、荒野を抜けて峠を超えたところにあるカギュウ国の「野良犬」に向かう」
「「野良犬」?」
「賞金稼ぎの斡旋所だ。まずそこで登録してもらう」
「試験とかあるの?」
「ない。……強いて言えば最初に紹介される任務がそうだ」
「どういうこと?」
「大半は死ぬ」
「ははっ」
ミチオは引きつった笑みを浮かべた。
「ねぇ」
「なんだ?」
「どうして、ボクがユキマサさんを倒せると思ったの?」
「思わなかった」
「え?」
「戦えと言えば、お前が逃げると思った。仮に戦ってお前が死んだとしても、アイツの戦い方を見れるなら、オレに損はない」
「ボクを捨て駒にしたんだ」
「そういう世界だ」
「ははっ」
ミチオは苦笑いした。
「だが、お前は勝った。アイツの三摩耶形は強かった」
「……」
「ベテランの金剛使いでも正面からぶつかれば、一撃で殺されていた」
「ボクもそう思う」
「だが、やつの攻撃は当たらなかった。剣を振り降ろした後、意識を失い倒れた」
「……」
「気絶した身体を確認した。顎が腫れていた。何か当てたのか?」
「……」
「お前は必ず命中する武器を錬成することができるのか?」
「……」
「あるいは見えない武器……。石獣と戦った時、お前の攻撃が命中したことが不思議だった。シモンも驚いていた」
「……」
「金剛には気配がある。金剛使いなら誰でもその気配を感知できる」
「……」
「だが、お前の金剛は気配を一切感じなかった。だから攻撃を感知できなかった」
「……これ見えますか?」
ミチオは人差し指でキュウタを指差してみせた。
「……」
キュウタは指先を見る。そこは何もないように見えた。
「これが答えです」
「気配を消した透明の武器か?」
「〈零弾〉と呼んでいます」
「当てられたら一発だな」
「硬度はほとんどありません。だから当てるだけならダメージはほとんどない。でも突然、何かがぶつかったら驚いて警戒するので、威嚇にはなると思います」
「だが、やつは気絶した」
「当たりどころが悪かったんです。ボクシングのアッパーと同じ原理です」
「……」
「学校の図書館で人体の本を読んで研究しました。当てたら一撃で相手を仕留められる場所を」
「……」
「そしたら、下から顎に直撃を受けると脳震盪を起こすと書いてありました」
「……」
「目や耳を狙うって手もあるけど、あれが一番無難な使い道です。と言っても、試したのはまだ二人だけですけど」
「……凄い金剛だ」
「でも、使い方は凄く難しいと思います。一対一じゃないと意味がないし、正体が知られたら対策は簡単に立てられる。だから今まで隠してました」
「そうか」
「種がわかればそれまでです。あっ、バディをやめるなんて言わないでくださいよ」
「それはこれから次第だ。ミチオ」
「え?」
「どうした?」
「突然、名前で呼ばれたので」
「呼び名は短い方がいい。あと敬語もやめろ。情報の伝達が遅くなる」
「はい。……じゃなくて「あぁ」かな、それとも「おぉ」とか?」
「短ければ問題ない。大事なのは削ることだ」
「だったら「はい」で。……ボクもキュウタって呼んでいい?」
「あぁ」
「じゃあ、キュウタ。これからよろしく」
「……よろしく」
掲載は不定期です。
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