第一部 金剛編 第十章 ナラカ最下層 第120~124話
『最強のザコ』は、カクヨムで連載している作品です。
カクヨム版はこちら→https://kakuyomu.jp/works/16818792440121150740/episodes/16818792440121414856
小説家になろう版は、カクヨム版にあった暴力描写、性描写をゆるめた全年齢対象作品となっています。
また、一回の投稿で5000文字以上(3~5話分収録)としています。
ストーリーは同じですが、媒体に合わせて描写や文字数を変えているので、読みやすい方を選択ください。
第120話 キュウタ。ゴドウ・ユキマサとにらみ合う。
◆◆
ミチオたちが第四階層に降りた頃、最下層では、キシモリ・キュウタとゴドウ・ユキマサが睨み合っていた。
「どけ」
「断る」
二人はこのやり取りを何時間も続けていた。
第一階層の床が崩壊した時、無数のシモンズたちといっしょにキュウタとユキマサは最下層まで落下した。
ユキマサは金剛で焔の翼〈迦楼羅〉を生み出し、落下速度を落とし静かに着地した。
一方、キュウタは減速することなく真っ逆さまに落下し、左肩から地面に衝突。しかし怪我ひとつ負っていなかった。
キュウタは〈半邪鬼〉の力を発動し、左肩、左手を硬質化させ、巨大な殻を作り出して全身を覆い、衝撃を防いだ。
今まで試したことのない錬成だったが、ナラカの金剛の影響は強く、普段の何倍もの硬度を獲得することに成功した。
その力の大きさだけに、反作用となる侵食を懸念したが、今のところ30%ぐらいで問題はないとキュウタは安堵した。
「相変わらず君はやることが派手だな」
「……」
「私のこと忘れたとは言わせないよ」
「ゴドウ……」
「……」
「ユキマキ」
「ユキマサだ!」
名前を間違えたキュウタに対しててユキマサがツッコミを入れる。
「あんたを倒したのはミチオだ」
「彼一人の力でボクを倒せるとは思えない。裏で君が何かやったんじゃないか?」
「くだらない」
「まぁいい。ここで君を倒せば全てははっきりする。だがその前に……」
ユキマサとキュウタの周囲を無数のシモンズが取り囲んでいた。
「床に擬態していた奴らだな」
ユキマサはシモンズの姿を凝視する。
それぞれ背丈は2メートル前後。
手足はひょろ長く岩のように乾燥した中肉中背の肉体は筋肉の塊で、顔から足元まで指紋のような渦巻き状の紋様が全身に刻まれていた。
手には武器らしきものは持っていないが、指先には岩をも切り裂けそうな鋭い爪が生えている。
一方、キュウタは取り囲むシモンズの後ろ側を見つめていた。
キュウタの目線の先をユキマサは見る。
そこにはマントで身体を覆った髪の長い女の姿があった。
「待て!」
キュウタは女の方に向かおうとするが、無数のシモンズが壁となって立ちふさがる。
「どけ!」
キュウタは鋭利なメスを模した〈牙剣〉を錬成すると、シモンズの頭部に突き刺す。
シモンズが怯むとキュウタはメスから手を離す。
そして新たにメスを錬成し、隣のシモンズの喉笛をスパッと切り裂く。
両手に錬成したメスでシモンズを突き刺すとメスを捨て、すぐさま新たなメスを錬成して突き刺すというキュウタの攻撃を見たユキマサは無駄のない見事な戦い方だと感心した。
だが同時に、キュウタから冷静さは感じられず、どこか危ういものも感じた。
「三摩耶形顕現(・竜剣〈倶利伽羅〉」
ユキマサの持つ三鈷剣に顕現した黒い龍が絡みつく。
黒龍を纏った三鈷剣による斬撃が、シモンズの身体は吹き飛ばす。
「焦るな。まずは周りの敵を片付けることに集中しろ!」
そう言うとユキマサはキュウタの背中に自分の背中を合わせる。
二人は自分たちを取り囲むシモンズを睨みつけ、同時に斬りかかった。
第121話 ユキマサ。キュウタを止める。
◆◆
激闘の末、キュウタとユキマサは立ちはだかるシモンズを撃退した。
しかし、彼らと戦っている隙に、マントの女は護衛のシモンズと共にその場を立ち去っていた。
護衛のシモンズは一緒に落下した地獄のカギュウブラザーズの5人の身体も持ち去っていた。
意識のないカギュウの5人が生きているのか、なぜ彼らの身体を持ち去ったのか、ユキマサにはわからなかったが、何か嫌な予感がした。
一方、キュウタは無我夢中で女のことを追いかけようとした。
「待て!」
ユキマサはキュウタの前に立ちはだかる。
「どけ!」
「一人で追うのは危険だ。せめて一緒に落下した部隊が合流するまで待とう」
「どけ!」
「あの女が気になるのかい?」
「どけ!」
「確かムツミと言ったっけ。あの女性の名前」
「……」
「君の知り合いなのか?」
「……黙れ」
「恋人? それとも……」
「答える必要はない」
「だったらここは通せない。今の君は冷静さを失っている。そんな状態で行っても返り討ちにされるだけだ。なぁ、せめて仲間たちが降りてくるのを待たないか?」
「どけ!」
キュウタはユキマサの話を聞こうとしない。
どうする。
ここで無駄な戦いをするくらいなら、キュウタを行かせるか?
いやダメだ。ここで彼を行かせることで生じるリスク……たとえば、彼がシモンズに取り込まれて石獣化すれば、自分たちにとって大きな脅威となる。
あるいは彼がムツミの側について我々を裏切る可能性もゼロではないだろう。
それに彼は今、冷静ではない。
こんな状態では返り討ちに遭うだけだ。
だから彼を行かせるわけにはいかない。
なんとしても、ここで食い止めなければ……。
そうユキマサは思った。
◆◆
「命を取るつもりはないが……腕の一本や二本は覚悟してもらう」
ユキマサは〈倶利伽羅〉の刃をキュウタに向ける。
「オン・ハンドマダラ・アボキャジャヤニ・ソロソロ・ソワカ。三摩耶形顕現・捕縛投縄〈不空羂索〉」
ユキマサの左手に先端に尖った鉾のついた投げ縄が錬成される。
「衆・生・救・済!」
ユキマサが捕縛縄を構えると縄が八本に枝分かれし、キュウタに向かって飛んでいく。
キュウタは捕縛縄を交わすが、枝分かれした縄がキュウタを捉えようと飛んでいく。
〈不空羂索〉には追撃機能があり、一度標的に定めたターゲットの金剛を辿って、どこまでも追撃する。
「チッ!」
すばやい動きで、キュウタは〈不空羂索〉をかわしていく。
今のキュウタにとってそれは造作もないことだった。
しかしかわすことはできても、捕縛縄を避けて前に進むことが難しかった。
〈不空羂索〉で捕らえてしまえば動きを封じることができる。
あとはそのままヒョンスたちが合流するのを待つだけだ。
でも、全員合流できなければどうする?
ヒョンスとキトラはともかく、ザコくんたちはここまで来られるだろうか?
わからないが、今は信じるしかない。
少なくともキトラとヒョンスと合流しないことには埒があかない。
やがてキュウタは〈不空羂索〉の動きをみて、これは時間稼ぎだと気付く。
キュウタは向かってくる捕縛縄を睨むと、錬成したメスで〈不空羂索〉を一本ずつズタズタに切り裂いていった。
捕縛縄は大気中に散らばり、その姿を消した。
「どけ!」
「やれやれ。君はそれしか言えないのかね」
余裕のあるふりをしたが〈不空羂索〉が破壊されたことにユキマサは驚いていた。
まさか、ここまでやるのか?
やはり彼は強い。
本気でいかないと私の方がやられる。
「三摩耶形顕現・竜剣〈倶利伽羅〉」
再び、ユキマサの三鈷剣に錬成された黒龍が現れ絡みつく。
ユキマサは剣を両手で持って構える。
「できればこれはやりたくなかった。なぜだかわかるかい?」
神妙な顔でユキマサが言う。
第122話 ユキマサ。奥義・不動天地眼。
◆◆
「興味ない。どけ!」
「君にはコミュニケーションを取ろうという気持ちがないのかい?」
「興味ない」
「実はこの技はとっておきなんだ。でも私は可能な限りこれを使いたくない。なぜだかわかるかい?」
「……」
「すごくカッコ悪いからだ。だが君に対して手段を選んでいる余裕はないようだ。行くよ」
ユキマサの言葉にキュウタは警戒する。
「ナ―マク・サンマンダ・ボダナン 上求菩提、下化修生……不動天地眼!」
ユキマサの髪の毛が逆立ち、右眼が上、左目が下を睨む。
そして口は右の口角が上に上がり、左の口角が下に下がり、双方から牙が覗く。
凄まじい金剛がユキマサの周囲に集まり、とてつもない威圧感がキュウタに放たれる。
一時的にユキマサの戦闘力が高まったことをキュウタは察知した。
このまま飛び込めば間違えなく自分はやられるだろう。だが、ここで待っていたら、黒竜の餌食となる。
あの不動黒竜剣をまともに喰らえば、即死。
どうする。
攻めるか、守るか?
どうする。
攻めるか。守るか?
キュウタはユキマサの顔をにらみつける。
一方、ユキマサは自分の顔に対するキュウタの無反応ぶりに虚を突かれた。
不動天地眼は天と地を同時に見ることで金剛を周囲に集める究極の防御術だ。
この天地眼と不動黒龍剣の攻守一体の戦いにユキマサは絶対の自信を持っていた。
だが、天地眼を使うと屈指の“変顔”となってしまうため、できれは使いたくない……。これは最後の手段だった。
ミチオとの戦いの時に天地眼を使わなかったことを、後にユキマサは後悔した。
使うことを躊躇ったのは、ミチオを敵として見下したからではなく、変顔を見た敵に笑われることが恥ずかしかったからだった。
今振り返るとくだらない見栄が招いた敗北だったと、ユキマサは後悔していた。
天地眼のことはヒョンスとキトラにも黙っていた。
それくらいこの顔を見られることは恥ずかしく、キュウタの嘲笑も覚悟していた。
しかし、キュウタは自分の顔を笑わなかった。
君は私のこの顔を見ても笑わないのか?
そう問いかけたくなったユキマサだったが、すぐに自分を恥じた。
……そうか。戦いの場で顔が乱れることを恥ずかしがる私が愚かだったのか。なんてことだ。
私は人間として器が小さすぎる。こんなことでは〈手〉として失格だ。
「ありがとうキュウタくん」
「……どういう意味だ?」
突然の感謝の言葉にキュウタは戸惑う。
「わかってる金剛バトルに言葉は不要だったな。君の邪法は認めたくないが、戦士としては敬意を払い、全力でぶつかろう」
「……」
一瞬、気持ち悪い奴だとキュウタは思ったが、それ以上、ユキマサに関心を持つことはなかった。
気持ちを切り替え、キュウタは左手に意識を集中する。
全力を出さないと負ける。
〈半邪鬼〉の力を解放する。しかしどれくらい?
落下の時の侵食率は30%だったが、同じレベルの発動で奴を倒せるか?
いや、ダメだ。もっと力が必要だ。〈半邪鬼〉が身体を奪うギリギリの力が……。
「来い!」
キュウタは覚悟を決めた。
第123話 全員集結。
◆◆
「ユキ兄―」
「ヒョンス?」
「キュウタァ―」
「ミチオ?」
一触即発だったキュウタとユキマサの耳に、第四階層から降りてきたヒョンスとミチオの呼ぶ声が響いた。
不動天地眼でガン決まっていたユキマサの表情がいつもの優しいものに戻っていく。
一方、キュウタも〈内在〉で解放しようとしていた〈半邪鬼〉の力に急ブレーキをかけた。
さっきまで周囲を覆っていた金剛はみるみる引いていき、二人から殺意が消える。
「ユキマサ兄さん、無事だった? 怪我はない?」
「大丈夫だよキトラ。二人とも怪我はないか」
「うん。ボクたちは大丈夫」
再会を喜ぶゴドウ三兄妹。
「キュウタ、無事だった?」
「あぁ」
心配するミチオに対し、キュウタはそっけなく答える。
「うん。いつもどおりだ」
ミチオは安心した。
「これで全員揃ったみたいだな」
ゴロゴロスが前に出る。
「いろいろイレギュラーなことがあったが、ついに最下層に辿りついた」
◆◆◆◆ ◆◆◆ ◆ ◆◆◆◆◆
「ゴドウ・ユキマサ、現状を教えてくれ」
ゴロゴロスはユキマサに説明を求めた。
「はい。私と彼……キシモリ・キュウタは最下層に落下。共に落ちたのは第一階層で対峙したマントを羽織った女と無数の人型石獣……通称・シモンズでした。キシモリくんはすぐさま、女を追いかけようとしましたが、無数のシモンズの軍勢に阻まれ二人で撃退しました」
「女は?」
「シモンズたちと最深部へと向かいました」
「兄者は……一緒に落ちた地獄のカギュウブラザーズは?」
「シモンズに連れ去られました」
「兄者……」
ゴロゴロスは黙ると熟考した。
どうする。このままあの女を追うべきか? しかし最深部にはこれまで以上にシモンズの軍勢が待ち構えている。
ΑΩ聖騎士団、ワシュルカの姫様と従者、ゴドウ3兄妹。ザコくんと呼ばれているガキは一段落ちるが、キシモリ・キュウタの力は桁違いだ。
地上だったら城だって落とせる戦力だ。だが、ここはナラカの最下層。地上の常識で計るのは危険だ。
やはり地上に戻って体勢を立て直すべきか?
「オレは行く」
静寂を破るキシモリ・キュウタの一言にその場にいた全員が振り向いた。
「キュウタ!」
ミチオがキュウタを呼び止める。
「キュウタ……あの人のこと、ムツミって呼んでたよね」
「……」
「ムツミってキュウタの姉さん?」
「……あぁ」
「姉さんを助けたいの?」
「あぁ」
「……わかった」
ミチオが一歩前に踏み出した。
てっきり止められると思っていたキュウタは、きょとんとした表情でミチオを見ている。
第124話 進むか戻るか?
◆◆◆◆ ◆◆◆ ◆ ◆◆◆◆◆
「ボクたちは奥に向かいます」
「あんた! バカじゃないの?」
「そうだよ。ザコくん。この先何が待ち構えているかわからない。ここは冷静になって」
キトラとヒョンスがミチオを止めようとする。
「それにあの女……人間じゃないっしょ」
「……」
キュウタが鋭い目でキトラを睨む。
「コワッ。そんな目で見ないでよォ!」
「僕もキトラの意見に同意だな。むしろ彼女こそが、シモンズを束ねる元締めに見えたけど」
ヒョンスがキトラを庇うように口を挟む。
彼の意見はその場にいる全員の総意だった。
「キュウタくん。話してもらえないか? 彼女は人間なのか? それとも……」
「わからない」
ユキマサの問いかけにキュウタはゆっくりと口を開いた。
「オレの家は、金剛病について研究している病院だった。ある日、何者かに襲われ病院は全焼した。研究成果はすべて奪われ、父と母は殺された。姉さん……ムツミは行方不明になった」
「キュウタくん。君の右半身を被う金剛……〈半邪鬼〉と彼女の左半身を被う金剛。とてもよく似ていたよね」
「黙れ」
キュウタはユキマサを睨む。
「お姉さんがもしも石獣だったら、君はどうするつもりだ?」
「黙れ!」
「ユキマサさん。それ以上はやめてください」
ミチオはユキマサとキュウタの会話に割って入った。
ユキマサの言ったことはその場にいた全員が懸念していたことだ。
そしてミチオ以外の者は、キュウタが裏切り、ムツミの側に付くのではないかと警戒していた。
「ボクはキュウタを信じます。ですが、もしも彼が敵に付くようだったら、ボクが殺します」
「ミチオ……」
「とりあえず、ボクたち二人で行かせてくれませんか? 偵察隊って感じで」
「ザコさん。一度、戻って体勢を立て直した方が……」
「そうだよ、ザコくん。二人で行くのは危険だ」
ダリアとサチがミチオを止めようとする。
「……くだらん」
サラは冷たい目でミチオたちを見ている。
「あんたねぇ」
イラッとしたキトラがサラに食ってかかる。
「みなさん。心配してくださってありがとうございます」
「ザコくん。なんで?」
「ボクはキュウタの相棒だから……まだ試用期間ですけど」
なんで行くの? とキトラが聞こうとした瞬間、キュウタが口を開いた。
「……オレからも頼む」
話を聞いていたゴロゴロスが重い口を開いた。
「指揮官としては一度撤退すべきだと思う。入り口自体埋めてしまうべきだ。この奥にいる奴らが地上に溢れ出せば、カギュウ国だけでなく帝都も危ない。それだけヤバい奴らがこの奥にいることはオレにもわかる。……だけど」
そう言うとゴロゴロスは泣きながら土下座をした。
「兄者たちを助けたいんだ。頼む、一緒に来てくれ!」
「ゴロゴロスさん。顔を上げてください。兄弟を助けたいという気持ち。わかります」
そう言うとユキマサはヒョンスとキトラの顔を見た。
二人は照れくさそうに笑った。
「ありがとう。だが、目的はあくまで偵察と救出だ」
その後、ゴロゴロスは作戦を指示した。
「まず戦力を分ける。ヒョンスさん。あんたは本部に戻ってうちの兵士たちを呼んできてくれ。あんたの金剛ならすぐ戻れるだろう」
「私と姫様も戻らせてもらう」
「サッちゃん!」
「ザコくん。実は先程、私たちは目的を果たした。だからもう、ここにいる必要はない」
「わかりました。お二人は上に戻ってください」
「ありがとう。報酬は地上に戻ってから支払う」
「イヤです。私も一緒に」
「ダリアさん。オレからも頼む」
戻りたくないと言うダリアに、ゴロゴロスが話しかける。
「あんたの三摩耶形なら、第一階層に空いた穴と最下層をつなぐことができるんじゃないか?」
「それは……」
「いつでも逃げられるように、脱出経路を確保してくれ。そして、できればあいつらも助けてくれ」
「……あの石獣さんたちですね……わかりました!」
「ペロちゃん。君もここに残ってくれ」
「キューン」
ゴロゴロスがペロちゃんから降りるとペロちゃんは彼の足に身体を押し付けてくる。
「ごめん。こっから先は一緒だと目立ちすぎるんだ」
「キューン」
「必ず戻ってくるから、ここで待ってて」
「……キューン」
ペロちゃんはゴロゴロスから離れたが、その目はどこか淋しそうだった。
◆◆ ◆◆ ◆ ◆◆ ◆◆ ◆◆◆◆ ◆
「私もザコくんたちと行く。回復要員は必要でしょ」
「師匠……。」
「勘違いしないで。アンタたちのためじゃないから」
「もちろん、私も行くよ」
「ユキマサさん……」
「キュウタくん。君が裏切る素振りを見せたら、私が君を斬る」
「勝手にしろ……」
キュウタはユキマサの顔を見ずに吐き捨てるように呟いた。
「で、あんたらはどうする?」
ゴロゴロスはΑΩ聖騎士団に問いかける。
「ゲヘナは我が国でも存在が確認されている」
ΑΩではナラカのことをゲヘナと呼んでいた。どちらも旧世界で〈地獄〉を意味する言葉である。
「ゲヘナの浸食を防ぐために我々は旅に出た。その手がかりが今、目の前にある。これは好機だ。なぜ退くことができる?」
「ありがとう。あんたらがいれば心強い。だが少し人数が多すぎるかな」
「ファイターと私が行く。あとは脱出経路の確保」
「はっ!」
掲載は不定期です。




