第一部 金剛編 第九章 ナラカ第四階層 第118~119話
『最強のザコ』は、カクヨムで連載している作品です。
カクヨム版はこちら→https://kakuyomu.jp/works/16818792440121150740/episodes/16818792440121414856
小説家になろう版は、カクヨム版にあった暴力描写、性描写をゆるめた全年齢対象作品となっています。
また、一回の投稿で5000文字以上(3~5話分収録)としています。
ストーリーは同じですが、媒体に合わせて描写や文字数を変えているので、読みやすい方を選択ください。
※この章は短いので改行込みで3100文字です。
第118話 第四階層へ。
◆
「貴様、私に命令するつもりか?」
「姫!」
ビショップがサラをたしなめる。
「冗談よ、爺ィ。ゴロゴロスよ。これは元々、私たちが請け負った仕事だ。悪魔どもは我が聖剣の錆にしてくれる」
そう言うと、サラは自分の持つ剣を鏡にして自分の顔をチェックした。
「我々の意思は姫と共にあります。改めて最下層まで同行しましょう」
サラ以外のAΩの騎士たちは再び仮面をつけた。
◆
「そういえば、ダリアさん達はどうやってここに来たんですか?」
「私たち第四階層から上がってきたんです」
第一階層の床が抜けて、落下したダリアは金剛で三本足の大ガラスを錬成した。
ナラカで無我夢中になって錬成した大ガラスのサイズは、ダリアの想像以上に大きく、足一つで人間をつかめる巨大さだった。
大ガラスに自分自身を掴ませたダリアはいっしょに落下したサチと近くにいたゴロゴロスを掴ませ、ゆっくりと落下。
このまま第五階層に降りるのは危険だと判断し、手前の第四階層に着地した。
「残念ながら、キュウタさんともうひとりの方は最下層に落ちてしまいましたが、もうひとりの方は赤い翼を錬成していました」
「ユキマサ兄さんだね」
キトラはヒョンスの目を見て確認した。
「その後、私と姫様は第四階層を制圧した。キュウタのことを考えると最下層に向かうべきかとも考えたんだが、その時、上から激しい金剛の衝突を感じた。それで嫌な予感がして上に向かった」
「おかげで助かたよ。二人が来てくれなかったら僕たちやられてたなぁ」
「馴れ馴れしく話しかけるな」
「そんなぁ。サっちゃん、せっかく知り合ったんだし、仲良くしましょうよ!」
「サッちゃんって言うな!」
ヒョンスがヘラヘラとサチに話しかける。
巨体ゆえに男女ともに恐れられることがデフォルトだったサチはヒョンスの馴れ馴れしさに困惑してはねつけようとした。
だが、ヒョンスはグイグイと距離を詰めてくる。
「ヒョン兄ィ、ナンパなら外に出てからやんなよ!」
「どうしたキトラ。お兄ちゃんが取られて寂しいのか?」
「あー、馬鹿らしい」
「そういや、君もサッちゃんだね。ΑΩのお姫様」
「……馴れ馴れしいぞ。ひょろ長」
サラはヒョンスを冷たくあしらう。
さっきまで殺し合いをしていた相手にも気軽に話しかけるヒョンスのフランクさにキトラは呆れた。
「それじゃあ、第四階層はもう安全なんですか?」
ミチオはダリアに尋ねる。
「えぇ、敵はもういません」
「二人でよく大丈夫でしたね。ボクたち3人……まぁ、ボクを戦力に入れるのはおこがましいのですが、第2階層でシモンズたちと遭遇して大苦戦したので」
「私たちはラッキーでした」
「どういう意味ですか?」
「それは下に降りればわかる」
ミチオとダリアの会話にゴロゴロスが割って入った。
第119話 お前たちはここで待ってろ。
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆◆◆
通路の端にある階段を降りて、ミチオたちは第四階層に降りた。
サチとダリアが言うようにフロアに敵の気配はなかった。
足元や壁を見ると、激しい戦いが繰り広げられたことがわかる。
軽く話していたが、やはりあの二人が本気を出すと凄まじいとミチオは思った。
「なぁ、お前たち。本当に悪魔どもを殲滅したのか?」
「はい」
「だが、私には薄汚い悪魔の気配を感じるぞ」
そう言うとサラは腰にかけた短剣に手をかける。
「こいつらは敵じゃない。見てろ」
そう吐き捨てるとゴロゴロスは一歩前に踏み出した。
「みぃんにゃぁー。パパが帰ってきたよぉーん」
これまで仏頂面だったゴロゴロスが猫撫声を出す。
ぴょこん、ぴょこん。壁の影から無数の石獣たちが姿を表す。
石獣たちがゴロゴロスに駆け寄る。ゴロゴロスはマントを脱ぎ、パンツ一丁で石獣たちに抱きつきじゃれ合う。
「なっ、何してるの?」
「あっ師匠は見るは初めてですか?」
人型石獣は殺せ。
しかし人型以外の石獣を見つけたら知らせろ。
そうゴロゴロスは遠征隊の参加者に命じたが、まともに従っていたのはミチオたちだけだったようだ。
そもそも、人型にせよ人型以外にせよ石獣は〈手〉にとって殲滅対象で、助けるなどもっての他だった。
それは他の賞金稼ぎにとっても同様で、どんな石獣も忌むべき討伐対象で、保護するという発想は理解できなかった。
だからユキマサたちは命令を無視し、人型以外の石獣と遭遇したら容赦なく討伐していた。
サラたちにとってもそれは同じことで第3階層にいた人型以外の石獣も容赦なく潰した。
「このフロアは無数のシモンズによって制圧されていた。だが、シモンズに追いやられて隅っこに隠れている石獣もいた」
「ゴロゴロスさんは、そういったシモンズに追いやられた動物型の石獣さんにどうしても目が行っちゃうんです。それでいつものアレをやって」
「あいつが石獣とじゃれ合ってる間、無数のシモンズが押し寄せてきて大変だった。まぁ、私と姫様の力で撃退したがな」
「そんなことを繰り返しているうちにだんだん、ゴロゴロスさんの周りを石獣さん達が取り囲むようになって、私たちと戦ってくれるようになって……」
「それで第4階層をこんなに早く制圧できたんですね」
ダリアとサチの言葉を聞いて、ミチオは納得した。
◆
「ゴロゴロスさん。そろそろ行きますよ」
「それが……。待ってくれ。こいつらが」
ゴロゴロスの周りを動物の姿をした石獣が取り囲んでいる。
「お前たちはここに残っていろ」
「きゅーん」
石獣たちは切ない声で泣きながら、悲しそうな表情でゴロゴロスを見つめている。
「ダメだよ。下は危険なんだ」
ゴロゴロスは必死で石獣たちを説得する。
その場にいる石獣のサイズは様々で、大きな者で子グマ、小さいもので子リスぐらいの大きさだった。
仮に彼らを連れて行っても大した戦力にはならないかもしれないが、弾除けぐらいにはなる。
石獣使いとしてのゴロゴロスの力を活かすのであれば、金剛の力で餌付けした石獣を操り戦闘に活かすことが必須だった。特にここは何が起こるのかわからないナラカである。
戦力は少しでも欲しいところだが、彼らを戦いの道具にしたくないとゴロゴロスは思っていた。
それはゴロゴロスの抱える甘さだったが、その甘さがあるからこそ石獣たちはゴロゴロスに轢かれるのだとミチオは思った。
「上に避難してくれ。頼む。お前たちを巻き込みたくないんだ!」
どれだけ会話が通じているのかミチオたちにはわからなかったが、ゴロゴロスの気持ちは石獣たちに通じたようだ。
石獣たちは上の階へと登っていった。
「行くぞ」
石獣たちを見送った後、ゴロゴロスはマントを羽織り、更に地下へと降りていった。
掲載は不定期です。




