第一部 金剛編 第七章 ナラカ第三階層 第113~117話
『最強のザコ』は、カクヨムで連載している作品です。
カクヨム版はこちら→https://kakuyomu.jp/works/16818792440121150740/episodes/16818792440121414856
小説家になろう版は、カクヨム版にあった暴力描写、性描写をゆるめた全年齢対象作品となっています。
また、一回の投稿で5000文字以上(3~5話分収録)としています。
ストーリーは同じですが、媒体に合わせて描写や文字数を変えているので、読みやすい方を選択ください。
第113話 ザコくん。裏切りに遭う。
◆◆◆
階段を降りて第三階層に足を踏み入れた3人の目に入ったのは、第二階層以上に金剛でびっしりと覆われた床や天井、そして足元に倒れている無数のシモンズの亡骸だった。
「死んでる?」
「どうやら先客がいたようだね」
「ユキマサ兄さん?」
「いや、兄者はこんなやり方はしない」
ミチオたちは転がっているシモンズの亡骸を見た。
キュウタ?
それともダリアさんとサチさん?
違う。
どのシモンズも一撃の元に葬り去られているが、攻撃に迷いがない。
まず手足を跳ねて動きを封じ、頭部を切断、もしくは粉砕されている。
その殺し方は合理的かつ残酷で、ミチオの中に同情心が湧いた。
「この戦い方は集団戦だね。統率のとれた無駄のない戦い方だ」
「ねぇ。第一階層から落ちたのって、ユキマサ兄さんと私たち3人とザコくんたちのチームの4人」
「あとはカギュウのゴロゴロスさんと」
「異国の仮面をつけた……」
キトラは5人のチーム名を思い出そうとした。
その瞬間、強い敵意を3人は感じた。
「よけろ!」
◆◆◆
3人は散り散りになって柱の影に隠れた。
追撃の攻撃が柱に刺さる。
それは金剛で錬成された光の矢だった。
間髪入れず、二の矢、三の矢が飛んでくる。
一本一本の矢は強固で自分の〈尖弾〉の何倍も固く鋭い。
弓矢による攻撃、ミチオはヌンキの〈黄道の射手〉のことを思い出した。
だが、この連射の速さと矢の硬度は、ヌンキ以上だ。
金剛の濃度が強まっていることもあってか、光の粒が周囲を覆っていて視界が悪い。
まるで光の海の中を漂っているみたいだ。
そんな中、敵の矢が容赦なく飛んでくる。
柱から少しでも顔を出せば狙われる。
畜生!
このままじゃ埒が明かない。
「僕が隙を作る。後はよろしく」
そう言うとヒョンスが飛び出した。
「〈蓮華〉」
ヒョンスは空中に蓮華座を作り出し、変則的な動きで飛び回る。
ヒョンスを狙い無数の矢が放たれるが、ヒョンスは軽々と交わしていく。
続いてキトラが動き出す。
矢の軌道を見て射手は一人だとキトラは判断した。
落下した騎士の数は確か5人。
残り4人がどこに隠れているかはわからないが、動かなければやられる。
だったら先手必勝。そうキトラは思った。
一方、ミチオはヒョンスを狙う矢の軌道を見て、敵の居場所におおよその目処をつけて〈尖弾〉を放つ。
キトラにように飛び出せなかったのは彼の臆病さゆえだったが、結果的に囮になるヒョンス。
接近戦を挑むキトラ、遠距離から攻撃するミチオという攻守の連携は即席としてはバランスの良い配置だと言えるだろう。
しかしそれは並の敵だった場合の話だ。
第114話 終わった……。
◆
射手がいると思われる場所めがけてキトラは駆け出す。
「三摩耶形顕現・双剣〈無熱〉」
キトラの両腕に細身の刺突用の剣が錬成される。
「そこだぁ!」
絶叫しながらキトラが無数の刺突攻撃を繰り出す。
命中すれば蜂の巣となるキトラの必殺剣だったが、攻撃を繰り出そうとした瞬間、キトラの前に小さな影が飛び込んできた。
「くっ!」
キトラは急停止して背後に跳んだ。
影は小さな刃物を振りかぶっており、このまま突っ込んでいたら、キトラの首が飛んでいた。
こいつできる。
キトラは目の前の影を睨んだ。
ズタボロのフードで全身を覆っているが顔は異国の仮面を被っている。
手には小型ナイフを持ち、足元にはブーツ。金剛の気配は今のところ感じられない。
一方、空中を飛び回るヒョンスを狙う矢による連撃は続いていた。後方からミチオは〈尖弾〉で応戦するが、いまいち決め手に欠けていた。
キトラが動けない以上。このままでは長期戦になる。
それに敵はあと3人。
でも、なんてあいつらは僕たちを襲うんだ?
敵だと勘違いしてる?
だったら。
「攻撃を辞めてください。僕たちはあなた達と同じ賞金稼ぎです!」
ミチオは大声で叫んだ。
相手が敵だと思って勘違いしているのであれば、誤解を解けば戦う必要はない。
それは極めてまっとうな判断に思えた。
しかし、ここはナラカ、地上の常識は通じない。
「あのバカッ」
ミチオの声を聞いたキトラはヤバいと思う。
戦闘経験が浅いミチオと違い、キトラとヒョンスはそのことを理解していた。
彼らの容赦なく合理的な殺戮方法と、自分たち3人の姿を見て即座に攻撃してきた。
こいつらは……初めから自分たちを殺るつもりだった。
「ザコくん。そこから離れて!」
飛び回っていたヒョンスが叫ぶ。
「えっどういう事?」
ヒョンスの言葉を聞いたミチオが戸惑う。
その瞬間、背後で凄まじい金剛の気配を感じた。
ミチオは前に飛び出し地面を転がる。
空気が揺れる激しい衝撃音が全身に伝わる。
振り返ると、地面がクレーター状にえぐれている。
全身を鎧に包み異国の袈裟で身を包んだ仮面の僧兵が巨槌を持って構えていた。
どうやらあの巨槌で吹き飛ばしたみたいだ。
僧兵は間髪入れずに巨槌を構える
「天使降臨・剛砕〈神の腕〉」
巨槌の周辺に無数の白い羽が現れ、武器の周囲を覆っていく。
巨槌は一回り大きくなり、白い光を放つ。
やばい。これが直撃したら間違えなく死ぬ。
ミチオは恐怖のあまり、その場から逃げ出そうとした。
だが、その瞬間、新たな金剛の気配を感じた。
振り返るとそこには仮面にマントを羽織った騎士が立っていた。
背丈は僧兵よりも一回り小さかったが剣と盾を構えている。
「天使降臨・審剣〈神の炎〉」
赤い光を放つ業火の剣がミチオを襲う。
赤い刃が〈薄膜〉を引き裂き、ミチオの身体をかすめる。
「痛ッ!」
敵の踏み込みが一歩深ければ、ミチオの身体は斬り裂かれていた。
極度の緊張ゆえか痛みは麻痺していた。
ミチオはそのまま起き上がり、僧兵と騎士が視界に入る場所に立ち、適切な間合いを取った。
一人でさえ歯が立たない相手を二人も相手にしないといけない状況に、ミチオは追い込まれていた。
このままではやられる。
キトラとヒョンスは目の前の敵がいるため動けない。
おまけに正体を見せていない相手がもう一人いる。
どうする。〈零弾〉を使うか?
ダメだ。仮に一方を倒せたとしても、もう一方にやられる。
何よりあの兜と仮面に覆われた頭部を狙ったとして攻撃は効くのだろうか?
必死で考えるミチオに僧兵と戦士の攻撃が行き着く間もなく飛んでくる。
先程のダメージが残ってる中、ミチオは背後に飛びながら避けるしかなかったが、攻撃が当たるのは時間の問題だった。
やるしかない。
狙うなら動きの鈍い僧兵の方だ。
たとえ〈零弾〉の正体を知られたとしても、一人倒せば活路が開ける。
難しいことはその後だ。
ミチオは覚悟を決めて〈零弾〉を錬成する。
騎士も僧兵も〈零弾〉の気配に気づいてない。
これなら当てればなんとかなる。いくっ
「うっ!」
〈零弾〉を発動しようとした瞬間ミチオの背中に何かが当たった。
ミチオは後ろを見る。しまった。もう一人のやつか? 隠れて様子を伺ってたのか。
足に力が入らない。
ミチオはふらふらと身体が揺れて地面にうつ伏せに倒れた。
そこに僧兵と騎士が詰め寄り、武器を振りかぶる。
……終った
第115話 それだけの価値がある。
◆
ミチオが死を覚悟したその時、僧兵の身体が吹き飛んだ。
突然の攻撃に驚き、騎士は一歩退き、盾を構える。
「ザコくん! 生きてるか!?」
豪快な声がフロアに響く。重装備の僧兵の身体を吹き飛ばすほどの一撃を繰り出せる人間で自分のことを知っている人間をミチオは一人しか知らなかった。
「サチさん……」
「私たちもいっしょですよ」
サチの背後にペロちゃんに乗ったゴロゴロスとダリアが立っている。
「おいおいこれはどういうことだ?」
「あいつらが……ボクたちを襲って」
「あいつらって荒野の傭兵団か?」
ゴロゴロスが前へ出る。
「おい待て! 大事な時に何、仲間割れしてるんだ?」
「彼らが勝手に襲ってきたんです!」
「そーよ。私たちは無罪!」
ヒョンスとキトラは大声で弁明する。
敵の攻撃を必死で払いのけながら、ヒョンスとキトラは叫ぶ。
「三摩耶形顕現・三足〈八咫烏〉」
ダリアは金剛で三本足の大ガラスを錬成した。
大ガラスはキトラと対峙しているフードを被ったナイフ使いに飛んでくる。予想外の攻撃にナイフ使いはたじろいだ。
チャンス!
その一瞬を狙いキトラはナイフ使いを攻撃しようとする。
しかしそこに、別々の角度から攻撃が飛んでくる。
一つはさっきまでヒョンスを狙っていた光の矢。
もう一つは銀色に発光する球体のエネルギー弾。
これは今まで見たことのない攻撃だった。
「ちっ」
キトラは一歩下がり、ゴロゴロス、サチ、ダリア、ミチオのいる場所に駆け寄った。
キトラにターゲットが移ったことで余裕ができたヒョンスも〈蓮華〉を蹴り上げ、5人の元に集まった。
6人は一箇所に固まる。
「ミチオさん。大丈夫ですか? 今、私の三摩耶形で」
「私がやるから!」
ダリアがミチオの怪我を治そうとした瞬間、キトラが間に割って入った。
「あんたは敵の攻撃に供えて」
「はっはい!」
「貴様! 姫様に対して」
「サッちゃん!」
キトラの高圧的な態度に対し、サチが抗議しようとするが、ダリアはサチを止める。
キトラのドスの利いた声に圧倒されたダリアだったが、彼女の言うことは確かに正しいと思い、気持ちを切り替えた。
「三摩耶形顕現・霊獣〈大黒白鼠〉」
ダリアが錬成した無数の白鼠がフロア内を駆け巡る。
「え? 何この数!」
野良犬の時の何十倍もの数の白鼠を錬成できたことにダリアは驚く。
ナラカの金剛の濃さはある程度、想定していた。しかし第三階層に降りたことで金剛の濃さは更に強まっていた。
キラキラと輝く金剛の迷宮は白鼠の身体で覆われていく。
一方、サチは両手を大きく広げ、ミチオたちの壁となる。
「三摩耶形顕現・甘露〈螺旋白蛇〉」
キトラの髪の毛が白蛇となり、ミチオの身体に絡みつく。
「ここは金剛が濃いから、すぐ治るから!」
倒れているミチオにキトラが話しかける。
一方、僧兵はゆっくりと起き上がる。
巨体の僧兵と戦士が一列に並び、背後にナイフ使いが隠れる。
「気をつけろ。あと二人、どこかに隠れている」
「はい」
「あいつらのチーム名は荒野の傭兵団。メンバーはシーフ、ファイター、モンク、マジシャン、ビショップ」
ゴロゴロスはタブレット端末に記録された彼らの情報を読み上げた。
「目の前の3人がシーフ、ファイター、モンク。隠れてるのがマジシャンとビショップ。おそらく隠れて作戦を支持しているのがビショップ」
「僕を狙った矢は、マジシャンのものか」
「何か気づいたことはないか?」
「あいつら……三摩耶形じゃなくて違う唱え方で金剛を錬成してました。確か天使降臨」
「ヤコブの梯子……AΩか?」
ヒョンスのスラムヤコブという言葉にゴロゴロスが反応する。
アルファオメガとは西の砂漠を超えた大陸にある王国の名前だ。
国が違えば金剛に対する考え方も違った。
彼らは復数の神を信奉する多神教国家の帝都と違い、唯一神を崇拝する一神教目下。金剛によって顕現される力は神に使える天使によるものとなっていた。
「その異国の傭兵どもが何でここに?」
サチが疑問を抱く。
「アンタ達の目的が何かはわからねぇ。ナラカに来た目的があるんなら話を聞く。だからこんな馬鹿げたことはやめろ!」
ゴロゴロスが大声で絶好する。しかし、傭兵たちは聞く耳を持たない。
モンクとファイターがじりじりと前に進む中、二人のの背後にシーフが構えている。
「モンク、ファイター、シーフが物理攻撃、そして身を隠しているマジシャンが遠隔攻撃、そしてビショップが」
「全体を観察して指示を出す司令塔」
「潰すべきはビショップか?」
「でもどこに?」
「姫様わかりますか?」
「ごめんなさい。私の〈大黒白鼠〉さんたちにもわからないみたい。どうやらビショップさんは気配を完全に消している」
「仕方ない。向こうは5人、こっちは6人。強引に突っ込めば」
サチはモンクを睨み、いつでも飛び出せるように体勢を低くする。
「おい待て。オレを数にいれるな。それにそこのガキは怪我してるだろう」
「ボクは……大丈夫です」
キトラの三摩耶形で傷を塞いだミチオがゆっくりと起き上がる。
「とりあえず、あの3人をボクたち4人で倒します」
「ダメだ!」
ヒョンスの提案をゴロゴロスが否定する
「ここであいつらを倒したとして、その後どうする? どっちが勝っても犠牲が大き
すぎる」
「でも……」
「ちっ。これだから賞金稼ぎは。目的を履き違えるな。あいつらを殺しても報酬は出さないからな!」
「……」
「どうしたキトラ?」
無言でシーフを睨んでいるキトラにヒョンスが話しかける。
「さっき……そこのおちびさんが」
「貴様ァ、姫様になんて口を」
サチがキトラに怒鳴りつける。
「さっちゃん! ごめんなさい。キトラ様、続けてください」
「……その時、私はあの小柄のナイフ使い……シーフを狙おうとした。でもそこに攻撃が2発飛んできた。一つはヒョン兄を狙ってたマジシャンの矢。もう一つは白いエネルギー弾。後者はたぶん、ビショップ」
「それ、おかしくないか?」
ヒョンスは疑問を挟む。
「なぜリーダーのビショップがシーフを助けるんだ?」
シーフとは旧世界の言葉で盗賊や泥棒という意味。そこから転じて本来の役割は情報調査の斥候や罠の解除といった後方支援。
よほどのことがない限り、戦闘には不参加というのが賞金稼ぎの世界の共通認識だった。
その意味で荒野の傭兵団のシーフは前衛として戦いすぎだった。
それだけなら、武力のあるシーフというイレギュラーな存在として見逃していただろう。
しかしリーダーのビショップが自らの居場所がバレる危険を冒してまで、シーフを守ろうとしたことに6人は引っかかりを覚えた。
「マジシャンの矢もそうだ。あの時キトラを狙ったから、僕は逃げられた」
「そうなの。なんで二人してシーフを助けるの?」
「それだけの価値が……シーフさんにあるってことですか?」
ダリアの一言にキトラがうなずく。
「……試してみるか」
話を聞いていたサチが、最後にそう呟いた。
第116話 姫様。敗北を認める。
◆
次の瞬間、まずサチが飛び出しモンクに掴みかかった。
振り回す槌を避けて、サチはモンクの懐に飛び込み、がっちりと身体を掴んだ。
そして、サチの背後から、ヒョンス、キトラ、ミチオが飛び出した。
3人は一斉にシーフを狙う。
まずファイターが飛び出すがミチオは〈鈍刀〉を錬成してファイターの剣を受け止める。
「三摩耶形顕現・〈制咜迦〉独孤
〈蓮華〉で上空に跳んだヒョンスは背後に12本の独鈷杵を錬成し、シーフ目掛けて一気に放つ。
シーフは素早く動き、独鈷杵をかわすがシーフが避けた先にキトラが待ち構える。
「三摩耶形顕現・双剣〈無熱〉」
キトラは両手に持った細身剣で無数の刺突攻撃を繰り出す。
「うりゃりゃりゃりゃ~!」
猛スピードで繰り出されるキトラの攻撃をシーフはかわしていく。
私のスピードについてこれるなんて、相当の使い手だ。だが……
「〈螺旋白蛇〉」
キトラはツインテールを白蛇に変えて、攻撃に参加させる。
無熱の双剣に二対のツインテール白蛇。
突然手数が倍になったことでシーフの動きに乱れが生じる。
シーフのマントに攻撃がかすめる。
シーフを追い詰めるキトラに対して光の矢とエネルギーの球体が飛んでくる。
さっきと同じマジシャンとビショップの攻撃。
しかし攻撃は白い壁によって阻まれた。
〈大黒白鼠〉が連なって盛り上がった防壁だ。
「四面楚歌だな」
キトラは勝ち誇った表情で笑う。
白い壁は敵の攻撃を阻むだけでなかった。
シーフとキトラを囲む壁は、やがて白い箱となって二人を閉じ込めた。
◆
「お前の負けだ。克服しろ」
「くだらない」
シーフはそう言うと、〈大黒白鼠〉でできた白い壁に触れた。
その瞬間、鼠たちの姿は胡散霧消し元の金剛に戻ると大気中をキラキラと漂っていた。
〈大黒白鼠〉が消滅し、キトラと一緒に閉じ込められたシーフの姿が露わになったことに、その場にいた全員が驚いた。
「テメェ!」
キトラはひるまず、細身剣をシーフの喉笛めがけて突き刺そうとする。
しかし、シーフはキトラの剣戟をかわして懐に入り込み、手にもったナイフを喉元めがけ突き刺そうとした。
「やめてください!」
その瞬間。威厳のある大きな声がその場に響いた。
その声を聞いたキトラとシーフはあと一歩というところで、動きを止めた。
「我々の負けです」
これまで姿を隠していたビショップが姿を表した。
異国の法衣とマントを纏った男は髭を生やした老人の顔を方だった仮面を被っており、手には錫杖を持っている。
「あなたがビショップですか?」
全員を代表してダリアが話しかける。
「いかにも……」
「あなたはリーダーですか?」
「……」
「なぜシーフを助けるために降伏したのですか?」
「詳しい話は後程。皆のもの集まれ」
ビショップが命じると、サチとつかみ合っていたモンク。ミチオと対峙していたファイター、姿を隠していたマジシャンが姿を表した。
そして4人同時に仮面を外した。
「我らにとって、この仮面は神への信仰と誇りの証。これを外すことの意味を理解いただきたい」
「……キトラ!」
「……ちっ」
キトラは細身剣を消滅させる。
「命拾いしたな。小娘」
「あんた勘違いしてるけど、あのままやってたら私の逆転勝利よ」
「なんだと?」
シーフは自分の首元にキトラのツインテールを金剛でコーティングした白蛇が牙を向けていることに気付いた。
キトラは逆転勝利と言ったがそれは強がりで、少なく見積もっても同士討ちだった。
だがそれは荒野の傭兵団にとっては致命的な喪失となる。
そう判断したからこそ、ビショップは負けを認めた。
「まだやる? 私はOKだけど」
「小娘ェ……!」
「姫さま。我々の負けです。仮面を外してください」
「クソッ」
シーフはフードを下げて仮面を外した。
ボロボロの衣とは不釣り合いな長い金髪がこぼれおちる。
そこには透き通るような美しい肌ツヤをした碧眼の美少女が立っていた。
「わらわはΑΩ王国・第3王女、サラ・アルファオメガ」
サラは堂々としてた態度にキトラたちは圧倒され、彼女がこの傭兵団を率いていたことを改めて理解した。
「ぬしら。なぜわらわがリーダーだと気づいた?」
「私がアンタを攻撃した時、マジシャンとビショップが遠距離攻撃してきたからだよ!」
「爺ィ! だから言ったのじゃ。わらわを特別扱いするなと!」
「しかし姫様。姫様の身にもしものことがあれば、国王になんと申せば」
「あー。だからお前らは来るなと言ったのに!」
サラは、その場にいるキトラたちを無視して、ビショップと喧嘩を初めた。
第117話 ΑΩ聖騎士団。
◆
「それで、あんたら、なんでカギュウ国に来たんだ?」
ゴロゴロスがサラに尋ねた。
「我らはΑΩ・聖騎士団。御翼について知るため世界中を旅している」
「カナフ?」
「お前らが金剛と呼んでいる存在だ」
「実は我々の王国・ΑΩも、悪魔――あなた方が石獣と呼ぶ存在の驚異に晒されています。ですので、唯一の対抗手段である御翼を研究し少しでも〈使者の力〉を引き出せるようになるため、全世界を巡り御翼について調べていました」
サラに変わり、ビショップと呼ばれる老人が自分たちの現状について説明する。
「旅先でナラカという悪魔の住処が世界中にあることを私たちは知りました。ここには御翼の秘密を知る大きな手がかりがあると思い選抜隊に参加させていただきました」
「それで、何で私達を殺そうとしたの、お姫様?」
イライラしながらキトラがサラに尋ねる。
「異教徒の力がどの程度のものか試したくなったのじゃ。お前、なかなかの腕前だな。私の従者にならないか?」
「あんたねぇ!」
「第一階層で賞金稼ぎ同士の殺し合いが起きた例がいくつか確認されている。それをやったのはお前らか?」
ゴロゴロスがサラに問いかける。
「そんな昔のこと覚えてないわ」
美しい金髪の先を指に絡めながらサラは笑う。
「邪な目で姫さまを見る男を返り討ちにしたまでです。確かにやりすぎた面もあったと反省してます。どうだ、ここはお互い水に流さないか?」
ビショップはそう言うと頭を下げた。
彼らの言うことが事実ならば正当防衛で仕方ないとゴロゴロスは思った。
だがそれが事実かどうかはわからない。
だがそれ以上にゴロゴロスが不愉快だったのは、彼らに反省の意思が全く見えないことだ。
降りかかる火の粉を払っただけ。
その際にゴロツキの命を奪ったとして何が悪い。
そう言っているようにゴロゴロスには聞こえた。
高慢さがにじみ出ているサラに対し、ビショップの口調は穏やかで誠実に対応しているように聞こえた。
だが、どれだけ丁寧な言葉を紡いでるように見えても、全く心が伝わってこない。
仮面を外して誠意を見せているはずなのに、素顔を見せている今の方が仮面をつけているようだとミチオは思った。
「同業者の命を狙うことは賞金稼ぎの間ではご法度だ。だが……ここはナラカだ。見なかったことにしてやってもいい。ただし条件がある」
ゴロゴロスは困惑した表情でサラたちに語りかける。
「これから最下層に降りて、俺たちを殺そうとしたあの女と人型石獣どもを一掃することに協力しろ」
掲載は不定期です。




