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第46話 魔物は花を愛でるか その3

今回は、スライム回です。


ゆるく読んで頂けると嬉しいです

スライム

「てめーら!ピンクスライムちゃんに何しやがった!?」


ピンクスライム

「スライム君!?」


アイアンスライム

「おいおい、スライム。いきなり体当たりっていうのはマナー違反だぜ」


スライム

「てめーは黙ってろ」


アイアンスライム

「あ?てめー誰に言ってんだ?」


スライム

「なんだてめー」


ピンクスライム

「スライム君!」


スライム

「ピンクスライムちゃんは黙ってて」


シグリ

「ちょっと、ちょっと、喧嘩しないで」


まるでヤンキー同士の喧嘩だった。その光景はまさに、カオスだった。


そのときだった。


二体の間を、一筋の閃光が走る。


スライム

「危ない!」


アイアンスライム

「うわっ!?」


スライムはとっさに、アイアンスライムの身体を弾き飛ばした。

次の瞬間、閃光は二人がいた場所を通り抜けていった。


ティア

「アポロ?なんで?」


アポロ

「…気付かないか?こいつの異常な魔力に…それに」


アポロの視線の先には、うずくまるエンキがいた。


エンキ

「…はぁ…くっ…こいつただのスライムじゃねぇぞ」


シグリ

「大丈夫?エンキ?」


エンキ

「…あぁ」


ティア

「すぐ回復するわ!」


アポロ

「…お前…名前は?」


スライム

「カオスだ…お前は?」


アポロ

「カオス…僕は…勇者…アポロだ!」


スライム

「勇者…」


スライムは、一瞬で冷静になった。魔の森の冷ややかな空気に冷やされたからではない。ビビったからだ。


スライム

(やべー…そういえば…勇者から避難させる為にピンクスライムちゃんを、迎えにきたんだった…)


アポロ

「どうした?」


スライム

「俺はいいから、ピンクスライムちゃんは助けてくれ」


ピンクスライム

「…スライム君」


アポロ

「…」


スライム

「彼女はちょっと天然だけど、花が好きな優しい子だ」


アポロ

「…なんで…お前達は」


スライム

「あと、アイアンスライムパイセンもついでに助けてくれ…ただ固くなるだけのいいパイセンだ」


アイアンスライム

「…お前」


不意を打たれたアイアンスライムは、少し胸が、キュンとしていた。


シグリ

「なんで、こうなっちゃうの〜」


シグリの気の抜けた言葉とは裏腹にスライムとアポロの間には、緊張の糸が張り詰めていた。


アポロ

「…行くぞ」


アポロの斬撃は空を切り裂き、スライムを襲った。スライムは斬撃を交わしながら、体を弾ませ不規則なステップを刻んでいた。


次の瞬間、スライムの青い身体は、闇を孕んだ深い藍色に変色していた。


地面を爆ぜさせ、カオスは一直線にアポロへ跳ねた。


スライム

「くらえ!魔弾!!」


アポロ

「くっ」


轟音とともに、剣とスライムの身体がぶつかった。


衝撃は周囲の木々を揺らし、地面を大きく抉った。


ティア

「なに、あの威力……」


エンキ

「…俺も…あれを食らってやばかったな…」


シグリ

「アポロー!」


立ち込める砂煙から露わになったアポロの口から、一筋の血が伝った。


アポロ

「…流石…魔王軍幹部か…」


スライム

「ハァハァ、あれを受け切るなんてやるじゃないか」


アポロ

「…今度はこちらの番だ」


アポロの身体が光を放ち、スライムに切りかかった。スライムに、アポロの斬撃を防ぐ暇はなかった。


アポロは攻撃の手を緩めなかった。緩めることができなかった。


ティア

「効いてない…やっぱり、資料にあった通り物理攻撃はきかないの?」


アイアンスライム

「…奴は柔らかい、柔らかいは硬い」


エンキ

「ん…あ、あぁ、そうだな」


エンキは心の中で呟いた。「何だこいつは」と。


シグリ

「でも…」


斬撃そのものは、スライムの柔らかな身体を裂けなかった。

だが、アポロの剣に宿る光の闘気は、確実にカオスの魔力を削っていた。


スライムは迫る剣閃を受け止めながら、ただ一瞬の隙を待っていた。

逆転の一撃を叩き込むために。


スライム

「俺は…俺は…魔領域を…ピンクスライムちゃんを守るんだーー!!ピンクスライムちゃーーん!好きだーーー!!」


ピンクスライム

「……スライム君……私も…スライム君が大好き!負けないでーーー!」


スライム

「え?」


その瞬間、スライムの紅潮した身体が、紫色に変色した。


エンキ

「これは!?」


アポロ

「最後だーー!」


ピンクスライム

「きゃーーーー!」


ピンクスライムの悲鳴が、魔の森の木々を揺らした。


アイアンスライム

「きゃーーーーーー!」


アイアンスライムの今日一番の悲鳴が、魔の森の木々をざわつかせた。


アポロ

「ぶっ!」


アポロの剣は止まった。


紫色に染まった身体から、膨れ上がっていた魔力が一気に抜けていった。

カオスはその場で、力尽きるように意識を失った。


10分後、スライムを回復するティアの姿があった。


アポロ

「済んだらいこうか」


エンキ

「おぉ…でもいいのか?いつもなら「滅する」とかなんとかって」


アポロ

「…そうした方がいいのかい?」


エンキ

「…いや」


シグリ

「ピンクスライムちゃん…ごめんねこんなことになっちゃって…」


ピンクスライム

「スライム君が傷ついて悲しかったけど、お互い様だし…それに…スライム君の気持ちが知れて…嬉しかった」


ティア

「よかったね」


ピンクスライム

「うん…あっこれ」


ピンクスライムは花を差し出した。


シグリ

「くれるの?」


ピンクスライム

「うん」


シグリ

「ありがとう。頭に飾るね」


ピンクスライム

「え…あ…食用」


ティア

「あっ、美味しく頂くね」


三人

「ふふふふ」


アポロは背を向けた。


アポロ

「…みんな、行くよ」


ピンクスライム

「あの…ありがとう」


アポロ

「次は…どうなるかわからないよ」


ピンクスライム

「優しいね」


アイアンスライム

「本当だぜ」


アポロは困ったように呟いた。


アポロ

「調子が狂うな…」


目を向けた先には、幸せそうに寝言を呟くスライムがいた。


スライム

「うぅ〜ん、ピンクスライムちゃん大好きだ〜むにゃむにゃ」





ここまで読んでいただき、ありがとうございます



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