第43話 エンキとオーガ その4
今回は、エンキとオーガの決着です。
ゆるく読んで頂けると嬉しいです
温羅は動揺を隠さなかった。
温羅
「炎鬼…生きていたのか?」
エンキ
「ああ…オヤジ…久しぶりだな」
温羅
「本当に炎鬼なのか?」
エンキ
「ああ」
温羅
「どうやって…」
エンキ
「母さんが…逃がしてくれたんだと思う…そのあと、ある男に助けられた」
温羅
「そうか…」
二人の間に一瞬空白が生まれた。
シグリ
「お父さん?どーゆーこと!?」
ティア
「わからない…」
アポロ
「…」
アポロ達は、二人を見守ることしかできなかった。
温羅
「…死んだと思っていた、息子と再び出会えるとは…」
エンキ
「オヤ…」
温羅は、エンキの言葉を遮るように言葉を続けた。
温羅
「それも!勇者の一行として!何の因果か!」
温羅の声はわずかに震えていた。
温羅
「炎鬼!お前も知っているだろう!人間が何をしたのか。阿佐を奪い、鬼族を殺し、我らの未来を踏みにじった」
エンキ
「…俺も…殺そうとした…許してなんかいない…」
温羅
「ならば…何故勇者などといる?私と…共に来い!」
エンキ
「…俺は…行かない…」
温羅
「何だと?」
エンキは白い息を吐いた。
エンキ
「俺はアポロと…仲間たちと、この旅をやり抜くと誓ったんだ!」
温羅
「…貴様」
エンキ
「…オヤジ…ここを…通してくれ」
温羅は、虚空を見つめた後エンキを睨みつけて答えた。
温羅
「ならぬ…どうしても通りたくば、私を殺していけ」
エンキ
「…この頑固オヤジが」
勝負は一瞬だった。
温羅の剣が振り下ろされる。
それはかつて、エンキが何度も見上げた剣だった。幼い頃、何度挑んでも弾かれた、力強い一振り。いつか超えると誓った父の剣。
鉄と鉄がぶつかる音が響いた刹那、二人の脳裏に、かつての記憶がよぎった。
次の瞬間、温羅の剣が宙を舞っていた。
温羅
「…」
エンキの剣先は、温羅の喉元で静かに止まっていた。
エンキ
「やっと勝てた」
温羅
「…殺せ」
エンキ
「…はぁ、本当…頑固者だな」
エンキは剣を鞘に納めた。
エンキ
「オヤジを殺せるわけないだろ」
エンキは呆れたような声で答えた。
温羅
「殺さなければ、人間に仇をなすぞ…それでもいいのか?」
エンキ
「いいわけないだろ!」
温羅
「ならば!」
エンキ
「…オヤジ…本当にそれが本心なのか?」
温羅
「…」
エンキ
「昔…よく話してくれたじゃねぇか…魔物も人間も変わらねぇって!だから、お互い分かり合えるって。心が通い合った人間と魔物の話を何度も教えてくれたじゃねぇか!」
その瞬間、風にあおられた一枚のチラシが、温羅の目の前にふわりと落ちた。
それは『魔王軍名物魔饅頭』と書かれたチラシだった。
温羅
「…セイラ」
温羅は、胸の奥にこびりついていた黒い靄が、静かに薄れていくのを感じた。
温羅
「行け…」
エンキ
「…いいのか」
温羅
「気が変わらぬうちに早く行け!」
エンキ
「オヤジ…ありがとう」
温羅
「炎鬼!!」
エンキ
「…」
温羅
「…またな」
エンキ
「ああ…」
エンキは、ゆっくりと温羅に背を向けた。
アポロ達も、それ以上何も言わずに歩き出す。
温羅は、遠ざかっていく背中を黙って見つめていた。
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