第42話 エンキとオーガ その3
今回はも、シリアスな感じです。
ゆるく読んで頂けると嬉しいです
惨劇の日、幼いエンキは安心に包まれ目を覚ました。
エンキ
「う…うぅ…ここは」
男
「世界で一番安全な場所さ」
エンキ
「誰?」
男
「世界最強の男さ」
エンキ
「最強?」
次の瞬間。眠っていた記憶が、胸の奥から一気にせり上がってきた。
エンキ
「……オヤジ……オフクロは!?」
男の表情から、わずかに軽さが消えた。
男
「……君は、一人で倒れていた」
エンキ
「……そんな……何が起きたんだよ!?」
男はすぐには答えなかった。ただ、小さく息を吐いた。
男
「手柄に目がくらんだ宰相が、暴走した」
エンキ
「宰相……?」
男
「ああ。和平交渉の名を借りた襲撃だ。……馬鹿なことをしたもんだ」
エンキ
「街の…街の人は?」
男
「街の人…鬼族達か…残念だが…」
その言葉で、エンキの意識は闇の坩堝へおちていった。
エンキ
「…殺してやる…」
男
「…」
エンキ
「殺してやる!俺の大切なものを奪った奴らを!必ず!」
次の瞬間、男は力強い体でエンキの体を優しく抱きしめた。
男
「それは、俺の…大人の仕事だ。お前はそんなことは背負わなくてもいい」
エンキ
「…でも…でも」
男は、エンキを引き離し、その瞳を見つめながらたずねた。
男
「お前は、殺めたいか?」
エンキ
「俺は…俺は…わからない」
男
「お前は、どうなりたい?」
その時、父と母との思い出が脳裏によぎった。
「こらこら、父さんクタクタだぞ。そんなに練習して、お前はどうなりたいんだ」
「俺は、世界一の剣士になって、困ってる人達の助けになるんだ」
「そうか、楽しみだな」
「ふふ、エンキあなたならなれるわ」
「その前にオヤジを超えてやる」
「ははは、楽しみにしてるぞ」
「ふふ」
エンキの瞳に、大粒の涙がこぼれた。
エンキ
「俺は、世界一の剣士になりたい…」
男
「…そうか…強い子だ」
気がつけば、その涙は乾き、その瞳には小さな炎が灯っていた。
その数年後、エンキは旅立った。
鬼の王の噂を聞いて。
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