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幕間8 アポロ

今回は、アポロの独白です。


ゆるく読んで頂けると嬉しいです

僕は、他の誰とも違わない普通の子どもだった。

ある夜、啓示を受けるまでは。


夢の中で聞こえた声は、今でも記憶の奥で朧げに揺れている。


導け。そう聞こえた気もする。


魔を滅しろ。そう聞こえた気もする。


目が覚めたとき、僕の身体には力が宿っていた。周りは色めき立った。


勇者が生まれた。


これで勝てる。


魔を滅ぼす者が現れた。


幼い僕に向けられた期待、希望、羨望の眼差しは、僕に選択肢を与えることを許さなかった。


僕の目の前に一人の男が現れた。世界で一番強い男らしい。王国からの命令で遣わされたと、僕の父に話していた。


男はよく、子守は面倒だとぼやいていたが、まんざら嫌でもなさそうだった。自堕落で、適当で、ズボラで、お酒と女性に目がなくて、どうしようもない人間だったが、一緒に過ごす時間は不思議と嫌じゃなかった。


この旅のきっかけは、彼がもたらした。

飲み仲間に言われたからと。

本当に適当な男だ。


旅に出てよかったと思えることがある。仲間と出会えたことだ。運命の悪戯か、神がもたらした必然なのか。僕にはどちらでもよかった。


エンキには腹が立つことばかりだし、いつもぶつかりあってばかりだ。それでも、僕の隣で肩を並べ、同じ歩幅で歩いてくれる。


ティアは、控えめであまり自分を出さない。それでも、いつも後ろからそっと後押ししてくれる。


シグリは、元気すぎて手に負えない。それでも、彼女の明るさが、僕たちを前に進ませる。


僕たちは、長い旅路で力を得た。それでも、変わらない関係性に、僕の心はどこか安心していた。


人々は僕に救いを求めた。


その期待に応えることが僕の使命だ。僕の使命は魔物を滅ぼすこと。それだけだ。


だけど、あるドラゴンの言葉を思い出すと、心がささくれるのはなぜだろう。


今まで、多くの魔物を倒してきた。


人々に仇なす魔物たち。


その全てが、魔王のことを語らなかった。


どの魔物も口は固かった。あるいは、本当に何も知らないのかもしれない。


その得体の知れなさが、魔王への恐怖を少しずつ膨らませていった。


明日、僕たちは魔領域に入る。やり遂げなければいけない。


僕は勇者だ。


魔を滅ぼす者だ。


みんなから、そう教えられてきた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます



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