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第37話 勇者災害

今回は、防災訓練です。


ゆるく読んで頂けると嬉しいです

今日は年に一度の、魔王軍防災訓練の日である。


魔領域には、様々な災害がある。

魔火山の噴火、魔界台風、魔獣の暴走、ドラゴン君のくしゃみ、サキュバスちゃんのエロストーム。


そして近年、魔王軍が最も警戒している災害があった。


勇者である。


魔王

「皆の者、今日は防災訓練じゃ」


スライム

「はい、今回は何をやるんですか?」


魔王

「うむ、いい質問じゃ。悪魔魔道士君」


悪魔魔道士

「はい、今回は魔王様を勇者に見立て、皆さんには逃げてもらいます」


大カタツムリ

「勇者とは、戦わない想定なのですか?」


魔王

「戦っては、防災訓練にならんじゃろ」


大カタツムリ

「えっ?それはそうですが……」


そんな中、オークは、真面目な顔で手を挙げた。

魔王軍にはすっかり馴染んでいたが、防災訓練に参加するのは今回が初めてだった。


オーク

「魔王様、よろしいでしょうかっす?」


魔王

「何じゃ」


オーク

「スライムさんが『今回は』と仰っていたっすが、毎回内容が違うのでしょうかっす?」


魔王

「いい質問じゃ。オーク君は今回が初めてじゃったな」


オーク

「はいっす」


魔王

「悪魔魔道士君」


悪魔魔道士

「はい、私が説明します。魔領域に起きる災害は、予期せぬことばかりです。ですので、どんな災害が起きても柔軟に対応できるように、様々なケースを想定するのです」


オーク

「なるほどっす……ちなみに、過去にはどんな訓練があったっすか?」


悪魔魔道士

「そうですね、前は魔王様の怒りにより魔火山が一斉噴火した場合の避難訓練でした……その前は、魔王様が落ち込んだ時に降る大雨による洪水からの避難訓練。その前は、魔王様が……」


オーク

(……ほぼ、魔王様っす)


サキュバス

「魔王様に捕まったらどうなるのかしら? 何かエロいこと……」


悪魔魔道士

「されませんし、させません」


悪魔魔道士は神速の否定を繰り出した。


魔王

「うむ……勇者に扮したわしに捕まったら、恐怖を叩き込む。わしが。本物の勇者が来たとき、死に物狂いで逃げおおせるように」


オーク

(やっぱり、魔王様が災害っす)


悪魔魔道士

「魔王様…みんな怖がってますよ」


魔王

「まぁ多少緊張感を持たせんといかんのでな」


悪魔魔道士

「本当ですか?」


魔王

「うむ」


ドラゴン

「我は、大丈夫だぞ」


悪魔魔道士

「ドラゴン君もそう言ってますし…始めますか…魔王様、ほどほどにお願いしますね」


魔王

「わかっておる」


訓練が始まった。

悪魔魔道士の危惧は現実となった。


スライム

「ギャーー!」


大カタツムリ

「ニギャー!」


オーク

「っす!? っす!?」


サキュバス

「うふ」

 

ノリノリで、恐怖を叩き込む魔王。必死で逃げ惑う魔物たち。訓練後の光景は目を覆う惨状だった。

スライムは床に薄く広がり、大カタツムリは、避難経路の最初の角で動かなくなっていた。

オークは壁際で直立不動のまま震え、サキュバスは、なぜか少し満足げだった。


後に魔物たちは語る。


「舐めてました。勇者とかそんなチャチなもんじゃないです。」

「魔王様万歳、魔王様万歳」

「っす…っす」

「エクスタシー…」


玉座の間。


訓練の後、玉座に座り難しい表情をした魔王が口を開いた。


魔王

「やりすぎたかの…」


悪魔魔道士

「まぁ…やりすぎですね」


魔王

「実際に勇者が襲ってきたら、皆には一目散に逃げてもらわねばならんからの。気持ちが入り過ぎたわい」


悪魔魔道士

「そうですか…」


悪魔魔道士は、少しだけ眉を寄せた。

そして、いつもより低い声で続けた。



悪魔魔道士

「魔王様、本当に…勇者が来たなら…ちゃんと私達を頼って下さいね」


魔王

「…そうじゃったな」


悪魔魔道士

「そうですよ。皆も同じ気持ちですよ」


魔王

「お主らには恩に着る……そう言えば、訓練の途中からドラゴン君の姿が見えんが」


悪魔魔道士

「ドラゴン君は訓練が始まった途端一目散に逃げていきましたよ。いつもと違う魔王様の雰囲気が怖かったみたいです」


魔王

「…そうか…訓練の正しい姿じゃ…」


少し、複雑な気持ちの魔王だった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます



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