幕間7 語らい
お久しぶりです。
少し間が空いてしまいましたが、また少しずつ投稿していきます。
今回は幕間です。
ゆるく読んでいただければ幸いです。
そこは白く或いは黒い空間だった。
全てが曖昧に感じられた。
「ここはどこじゃ?」
魔王は、足元すら定かでない空間をあてどなく進んだ。すると、白とも黒ともつかぬ先に、ひとつの影が揺れていた。輪郭は溶けるようにぼやけていたが、それでも人の姿であることだけは分かった。
「お主、こんなところで何をしておるんじゃ?」
「…気が付いたらここにいたんです……貴方は?」
「分からぬ。わしも気が付いたらここにいた…」
「そうですか……」
「因みに……お主はどちら様じゃ?」
「僕は……冒険家を…している者です。貴方は?」
「なるほどの……わしは、しがない経営者じゃよ」
「そうなんですね…何でしょうね、この場所は?」
「うーむ、わからぬ」
「……」
二人の間に、静寂が流れた。
それに耐えかねたように、人影が口を開いた。
「…経営者なんですね……経営、大変じゃないですか?」
「ん?うーむ、そうじゃな、責任で押しつぶされそうじゃよ」
「そうなんですね…」
「そうじゃよ……部下も変なやつばっかりでな。この前も……」
魔王は饒舌に語った。この空間が気持ちを曖昧にしているのだろうか。
「はは、面白い職場ですね」
「そうじゃろ。お主は何故冒険を?」
「僕は、師匠に世界を見ろと言われて……それに……」
「それに?」
「……使命があるんです」
「大変そうじゃの。うむ、わしが応援するぞ」
「ありがとうございます……ちょっと聞いてもいいですか?」
「なんじゃ?」
「貴方は、生きていて孤独を感じることはありますか?」
「変な質問じゃの…まぁ、そうじゃな……わしにはいい部下がいるしの、面白い飲み仲間もいる……それに、胸の中にあやつがいるからの…だから孤独ではないぞ……なんじゃ?お主は孤独なのか?」
「……いえ……僕は」
影が蠢いていた。それは、まるで人影の気持ちを代弁するように見えた。
「ふむ」
魔王は言葉を続けた。
「お主は、悩んでおるのじゃな」
「なぜ、そう思いますか」
「言葉の歯切れがよくない。あと質問が変じゃ。」
「それだけ?」
「うむ」
「はは…流石経営者ですね」
「伊達じゃないじゃろ」
魔王はまんざらでもない顔をしたが、人影には伝わらなかった。
「僕は、自分がしていることが正しいのか、分からないんです。」
影が少し小さくなった。
「なるほどの…漠然としていて…本質的じゃな…」
魔王は、少し考えた後続けた。
「実は…答えは、自分の中に出ているんじゃないかの?」
「ただ、まだ折り合っておらぬだけじゃ。お主は今、折り合いをつける途中におる。いろんなことを知って、選んで、覚悟して、決める……ただ、それだけじゃ」
「…折り合い」
「そうじゃ…お主、若いじゃろ?」
「…はい。なぜ分かるんですか?」
「わしも、そういう悩みがあった時期があった」
「はは、同じですね」
「ははは、そうじゃな」
「はは…なんだか気持ちが少し軽くなった気がします」
「ん?そうか?それはよかった」
「はい。よければ…話、もっと聞かせてもらってもいいですか?」
「何をじゃ?」
「何でも」
「そうか…じゃあわしの部下とのエピソードなんかどうじゃ?」
「いいですね」
「あれはの………」
魔王は、いつもの調子で話し始めた。
人影は、ときどき笑いながら、それを静かに聞いていた。
いつの間にか、声の輪郭がぼやけていた。
白とも黒ともつかぬ空間に、遠く、小さな鳥の声が滲んでいく。
チュンチュン、チュンチュン
ガバッ
「は!?……夢か」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます
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