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アンブレイカーズ  作者: MRプロジェクト(詳しくはプロフィールにて)
第2章「強敵」

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「5」探索前日準備(2)

目標の居場所、目標の容貌性質は多少なりとが割れている。

しかしならば何故俺達はすぐに出動しないのか。

それは人間や動物と違い[怪人]が圧倒的に個として強い事に起因する。


人間や動物が木造家屋を破壊しようと奮闘している間に何十件も家を破壊できるのが[怪人]だ。その生物的差を少しでも埋める為に下調べをする。アンブレとの違いはその下調べの期間が短い所。時間をかけすぎたら結局アンブレの負担を軽減できず仕舞いになるからだ。


「山葵ちゃん、病院の耐用年数って39年で間違いないよね」

「はひ、あっへま……あってます」

「ごめんな、食べてるときに」


ところで生物としての格が違うというのならば、どうやって人間は生活圏を維持しているのか。

それは、1つ。[怪人][怪獣]は群れない。

それにより雪崩れるように人の領域を侵犯しない為対応が出来ている。

2つ。単純に人間の【能力】と人の数で[怪人]を倒している。

が、それ以上に生物は[怪人]らを倒すと[怪人]らのような生物的強さを少しずつ手に入れる事ができる。肉は柔らかいままに強靭になり、骨は折れてもくっつきやすくなる。

脳みそは衝撃に強くなり、目玉は気圧の変化や温度、抉られるような風を受けても傷がつきにくくなる。


こうした身体強度向上現象を「レベルアップ」と呼んでいる。


しかしそれでも不安定な生存確率。そこを補う為に[怪人]らの素材を有効活用し、武器、防具に加工、兵器製造に活用している。また、もっと恒久的かつ常態的に人間の生活圏を守る為に堅牢な分厚い〈都市壁〉が建設されておりこれにも[怪人]らの素材が使用されている。


まぁしかし、その防壁も守る数が多い程に大きくしなくちゃいけないし材料と工期を要する事になる。つまりは〈東京〉みたいに人口が馬鹿多い都市は全員を今すぐ守れない訳で、だから壁の外と内で生活区画が分かれてしまっている。


一応将来的かつ段階的に壁を建設し内外の枠組みを撤廃する考えではあるらしいが、少なくとも≪大怪獣災害≫から11年経った今ではまだ遠い未来の予想図でしかない。


かといって俺たちは法律上簡単に〈都市〉を移り住むなんて出来ないし、外周より外では[怪人]だけじゃなく[怪獣]たちものさばっている。そして[怪人]らは栄養を得る為生き物を襲う。それは人間も例外ではない。勿論バリケードを設置してはいるが、効果は薄い。そうした点から俺たちは実質的な肉壁として壁の完成を黙って待つ事しかできない。


[影怪人]や[光怪人]みたいな特殊な[怪人]の侵入を抑制する電磁波バリアはこの外周まで及んでいるが、普通の[怪人]らを抑制する機能はまだ備わってない。


じゃあ俺達外周民は常に[怪人]らを恐れなければならないのか、と言えばいいえだ。

俺たちにはアンブレイカーズがいる。


アンブレイカーズ。


それは[怪人][怪獣][大怪獣][宇宙人]その全てに果敢に挑み人間の安寧を築く為の国営組織。街中に[怪人]が出現すれば緊急出動。定期的に外周より更に外――復興を一時的に停止している区画、所謂郊外に赴き巡回。

たむろする[怪人]らを討伐し、最終的に内地への接近危険性を下げる事を目的に活動している。だから別に俺たちは守られていない訳でも虐げられている訳でもない。

それにアンブレの仕事は他にもあって、他都市への不足電力の運搬。【転移・転送能力】で運びきれない分の討伐・巡回活動の為に必要な人材や資材の大型トラックでの護衛運送。都市間貿易の補助などなど、リソース限界を常に行ったり来たりしている。


元より11年前に起きた≪大怪獣災害≫で隊員が半分以上死亡し、アンブレトップ6を喪失している。今はなんにでもに対応できる状況じゃない。だから、助けてほしいと叫んでもヒーローはすぐには来れない。それが今のアンブレイカーズの現状。


限りしかない資源を究極的に選定して運用しているのを皆知っている。

そうした面を理解しているから俺達外周民は黙っている事ができている。

そしてそれこそが俺達みたいな人間が台頭している理由なんだ。


「よし、終わりー」


時刻は19時、秋となればもう流石に暗い時間。病院の建物情報をまとめ、掘り出した構内マップや病院内外の安全な避難ルート、探索ルートを幾通りか策定し終えた。

そうしてまとめた印刷書類をパンチで穴を開け、紐で結んで息を吐く。

デジタルだけで管理したいのに直感的に見れる物がないと忘れてしまうこの体。実に難儀だ。


「さて……改めて目を通しますよーん」


[怪人]が発見された場所は都内有数だった大型の廃病院。廃墟になって老朽化が加速しているがある程度全力を出しても病院が崩れるなんて事はなさそう。

まぁ元より怪人怪獣襲撃対応設計の大病院だ、そうでなきゃ困るまである。ここに[怪人]が居残ってればアドバンテージを取ったまま俺達は戦えるのだが[怪人]の心理を操作なんてできないから運でしかない。


「物質系で体躯は3m以上。筋肉質で、肥大化した足はクマの足のよう。黒い体色をしてて、黒色の粘液ないし体液を垂らしている……こいつほんとに物質系かぁ…?」


紙の束を軽く振りながら唸れば新人くんが「20ページ目に詳細があります」と言った。


「実際に石油や液化した石炭、水をまとった[怪人]の実例があります。何れも怪人の特性とシナジー……つまりは火を使う[怪人]は燃焼性が高い石油に近い体液を使って攻撃。魚類の[怪人]は生み出した水の柱の中を高速移動したり、といった風に性質を活用してきます」

「ほーん。じゃあ今回の[怪人]は体に特殊な機構が備わってる可能性がある訳だな」

「そうですね。その機構も火や風と言った特性を有しているかもなので耐火性を重視した装備で行く必要があるかと。それと、対象行動概括を読む限り【能力】は有していなさそうです」


新人くんの進言を聞きながらもう一度危険度を見つめて見る。


「こいつの危険度は「2」に変更なのね」


危険度とは、怪人の強さに対して必要な人員の数と実力を示す指標。


危険度は「1」~「10」まであり。


「1~3」アンブレイカーズ下位向け支給品着用。

     かつ一般人より3倍以上の身体能力レベルを有した下位上層3人以上、

     で対応可能の[怪人]


「4~7」アンブレイカーズ上位向け支給品着用。

     かつ一般人より500倍以上の身体能力レベルを有した、

     かつ最適な班構成及び最適な支援、

     で対応可能の[怪人][怪獣]


「8~9」アンブレイカーズ最上位向け支給品着用。

     かつ一般人より7000倍の身体能力レベルを有した、

     かつ最適な班構成及び最適な支援、

     で対等可能な[怪人][怪獣][宇宙人]


「10」総力戦を要する。


「10」は指標形態が変わろうと歴史上で[大怪獣]以外に適用された事がない。

いずれも、こうした危険度の算定はアンブレイカーズのHPに記載されている情報統計報告の危険度を元に情報を複合的に照らし合わせて算出している。何故危険度などが公開されているのかと言えば、発見した[怪人]の通報情報の質向上の為と避難方法を明確にする為だそう。


「危険度は足し算です。脅威になり得る情報が多く、体躯が大きくなる程危険度は上昇します。ただこの調査情報の密度が薄く「1」と断定するには軽薄かなと。[怪人]の性質や体躯を見るにもう少し気構えがあっても問題ないかと思い「2」にしました」

「ふん……。山葵ちゃんはどう思う」

「私としても賛成ですね。歩行速度、デコイで確認したという疾走速度も同体系帯で平均より遅いようですが遅さは重さでもあります。体躯と筋肉量に加えて特殊な内蔵や液体の保管など、非露出部位を勘案し攻撃の多様性を鑑みた時、危険度の上方修正は正しいと考えます」

「おっけー……んだとしたら、山葵ちゃん、どうする。危険度「1」じゃないけど」

そう顔を合わせて問うてみれば、山葵ちゃんは少し、目を逸らした。けど、彼女は「大丈夫です。私、元と言えど上位上層、危険度「7」を相手してましたから」と頷いた。

「心強いな。……ちなみに、新人くんのアンブレイカーズの階級ってなんだっけ」

「あー……。…下位の、中層ですね」

「ああそうだったそうだった」


アンブレイカーズには3つの階級がある。


下位――危険度「3」以下の[怪人]を10人程度の戦線で不足なく活躍できる者。


上位――危険度「7」以下の[怪人][怪獣]を10人程度の戦線で不足なく活躍できる者。


最上位――危険度「8」以下の対象の討伐を単独で容易にこなす実力のある者。


更にこの区分はもう一段 階層化されていて、最上位を除き「下層」「中層」「上層」にわかれている。

この区分の中でも実力ははっきりしていて、これを元に班編成が決められる。


「下位の中層の業務は[怪人]探索と報告までだっけ」

「そう、ですね。……っあ! 一応戦闘に参加しては、いました……瀕死の相手ですが」


歯切れの悪い新人くんの間に入り「いわゆるパワーレベリングというものですね」と山葵ちゃんは注釈を入れた。


「そもそも知識や技量だけじゃ[怪人]らに絶対に敵いません。人間には肉体のレベルアップが不可欠です。その為下位中層下層は上位の指導の下レベリングをする義務があるんです」

そうした説明を前に終始罰の悪そうな新人くん。


「なに。自分の事戦力外と思われそうで怖いの」


そう聞けば少しの間を空けて「いえ」と首を横に振った。間ほどあからさまな物はないのに。


「……まぁ階級にはある種の絶対性はあると思う。けど、下位っていう指標を貰えてるって事は入社難易度の高いアンブレイカーズに入れた実力とかセンスがあるって証明になってる。つかそもそも、調査任務が基本っつってもそれ含めて命掛けじゃん。じゃあずっと戦ってきてたんだよ君は。そこは流石に自分でも誇った方がいい。富士山くらい突き出るつもりでさ」


新人くんの肩を叩いてそう発破をかけて見たが、はたして彼に届いているのだろうか。

罰の悪い彼の返答を俺は見守るしかできなかった。


それから1時間程度かけて班構成と戦略の確認、各事項の共通認識を図り了解を得た。

山葵ちゃんと話し合って防具や武器の質、背負う物資も決めた。

俺達がいた情報精査室の向かいの部屋は道具や武器、防具の保管庫兼更衣室になっている。一旦そこで耐火性の高いバッグに食料や救急セット、爆竹や光の強い懐中電灯など幅広くも必要な物だけを詰め込み、その後には武器や防具のほつれや劣化を確認し、場合によっては縫合、研磨をして準備を終える。

そしたら時刻は22時。

立派なブラック企業だ。


「ほんじゃ、また明日。くれぐれも酒と牡蠣、生魚、生肉、食べないでくれよぉ。かといって何も食べないのはダメだぞぉ。1日3食、忘れずにだ」


そうおどけて言えば山葵ちゃんは腕を組んで心外そうに「常識です、アンブレイカーズに勤めていた者なら」と言い、山葵ちゃんの鋭い目線に新人くんも激しく頭を揺らした。


「心強いねぇ。その感じで明日もよろしく。じゃ解散あ、俺今から飯食いに行くけど来る?」

「「お疲れさまでした」」

「はい、お疲れさまでした」

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