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アンブレイカーズ  作者: MRプロジェクト(詳しくはプロフィールにて)
終章「生き様」

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34/35

「34」大怪獣Ed0001

草原に立つ、骨を纏った黒い影。目の前で鳴り響いている大怪獣の足音と深い足跡。強烈に靡く風の波を仰ぎ息を吸いこむと、それは地面を大きく爆ぜさせて大怪獣に肉薄した。



「ゥ”ォ”ァアアアアアアァァアァアアア!!!!!!」



大怪獣は、生物の頂点に立つ生き物。


理不尽の体現者だ。


そんな理不尽に立ち向かう強い意志がある時、それは敵う――そんな訳が無い。


それが自然の摂理であり、自明の理。朝日があれば夕陽があるように、生まれれば老いて死ぬように、それは絶対のまま君臨し続ける。


(俺の今じゃ【降霊】の力を含めても大怪獣には敵わない。もっと個としての力がいる。……俺は怪獣で、完全無欠を誇る個として成熟しきった生物だけど、人間でもある)


佐伯雀が与え直した佐伯陽介の名を【怪獣ノア】は大切に胸に包み込み、息を吐く。


(人の生き方を準えて良い。俺は不完全で、至らない所だらけの残念な人間だ。だから)


あの日教わった声の導きを追って――


『死ぬほど困ってもう自分でどうしようもなくなったら、恥も外聞も捨ててでっかい声で助けを乞え。そしたら全員は来ないが誰かが来てくれる。力を貸してくれる』


――蹴り飛ばされ空高く浮かんでいる土根草は【怪獣ノア】の大咆哮に吹き飛ばされる。



(――力をお貸して下さいませ!! 皆々様!!!!!)



アンブレイクとの死闘。

繰り返された擬似的物質系怪人状態での瀕死と、再生と、攻勢と守勢。死の淵を彷徨い続けた先に発生していた【能力】の拡張と増幅と進化。


更にそこに託された思い。強い使命感。目の前の絶対的差に抗う強い意志。


能力段階は、その者が死を諦めなかった数と、立ちはだかった障壁の高さを反映している。



【降霊】能力段階「5」



「効果」能力行使者を甲とし、霊や怪異を乙とする。【降霊】の行使により、短期契約を経て甲の肉体に乙の力を宿す事が可能となる。

この時甲の意識の譲渡は発生しない(・・・・・)。

またこの時、契約可能数が1万となる。


全身に纏わりつき、激しく重く圧し掛かる空気の波を斬り割きながら大怪獣の腹部に着陸した【怪獣ノア】は一転、手の形をした鎌を巨大化させ大怪獣の左腹を掻っ捌いた。


「ゥ”ォ”ァア”ア”ア”ア”ア”!!!!!」


様々な【能力】の力により通常以上の速度で、威力で、大怪獣の高温の肉塊と鮮血を外へと解き放つ  瞬間  【怪獣ノア】ごと腹を抉り飛ばした巨大な腕。

大怪獣の腕。

自傷を物ともせず貫いた手首に付着した血が蒸気を発しながら地面に零れ落ちる――その最中、近くの森が立てる木々に黒い雨粒となって打ち付けられていく【怪獣ノア】は、己に問うた。


『お前は人間か』と。


(そうだ。俺は人間だ。でもただの人間じゃない――俺は怪獣だ!!!!!)


激しく飛散した黒い雨粒は瞬く間に逆流し大怪獣に付着しながら体を再構築させる。


その体躯――約40m。大怪獣との差――約45m。


【支援能力】を重ねた【巨大化】の力。


巨大な粒が描く豪たる雨が塊となり、【怪獣ノア】はそして今、これを持って疑似的に大怪獣Abへ成り上がる。


逆流の勢いをそのままに大怪獣の腹にタックルを仕掛け押し倒した【大怪獣ノア】。


自然しか発生させられない様な音のうねり。


大怪獣は余りもの威力に容易に数十m吹き飛び、その衝撃で土も草もドンッと空へ舞い上がった。


【大怪獣ノア】は間髪入れず右腕を上げた――大怪獣がすかさず【大怪獣ノア】の顔面を掴んだ。

そうして【大怪獣ノア】を地面に引き込みながら立ち上がると大怪獣は【大怪獣ノア】の腹に左膝を蹴り込み、後頭部に左手を撃ち落とした。


チカチカと目の色を点滅させる【大怪獣ノア】は、けれどすぐに怪獣である事を思い出し意識を取り戻す。

そうしてグラついた体は、けれど影怪人の体。

影怪人の強みは無際限の形状変化。


だから。


「ウォ"ォ"オオォオオァ"アア"!!!!」


【大怪獣ノア】は黒い竜風を描き、大怪獣の顔面に後ろ回し蹴りを打ち込んだ。


口腔に満ちていた光の唸り声は黒足に蹴り飛ばされ、大怪獣は規格外の体とは思えない勢いと速度で回転し、跳ね転がり、無差別に焼き溶かす光線と共に地上の青に土と赤を塗りたくる。


切断された山々、切り開かれた森林、子供の絵の様な深い筆跡が草地を駆ける。そして、大怪獣の跳ね転がるもう1回転。


その最中。


大怪獣は光線の威力を更に引き上げ、自身の頭部を吹き飛ばした。そうして太首の根元から極太の光線を放ち【大怪獣ノア】へと伸ばし当てる――だが正確性に欠けたそれは【大怪獣ノア】に半身で避けられた  刹那  ダンッという擬音では表せない音で爆裂した衝突の轟。


大怪獣が極光を地面に押し当て、爆発的な推進力で【大怪獣ノア】へと飛来し激突していた。


途轍もない質量と衝撃に惨く弾け飛ぶ【大怪獣ノア】。


黒の雨粒はそして瞬く間で大怪獣の極光に全てを焼かれた。


「………」


意図せず地表を畑の様に掘り返した巨大な怪獣の呆然と佇む姿。復元している顔面。その2つの大目玉に映ったのは、全身を高速再生させながら走り勇む【大怪獣ノア】の進取果敢な姿。


(【防護壁】ほんとありがとうございます!!!)


【大怪獣ノア】が描く瞬間移動。光線を構えていた大怪獣は目前に急に現れた黒影を前に、けれどゆっくりと光を充填する。例え腹を蹴られ数十m後退しても、例え顔面の半分を食われても、それは大怪獣の予想を超えな――狂気の一手。【大怪獣ノア】は大怪獣の顔面に空いた大穴に顔面を突っ込むとその体内に光の螺旋を描き、佇む超大巨躯の怪獣を大爆発させた。


吹き飛び山に降り立つ巨大肉片のどん。森に鮮血が落ちれば火災を呼び込み、草原に肉片交じりの大怪獣の核が落ちれば大穴が開く。


しかしその核には傷が1つとして、ない。


(もっと力がいる!! もっとだ!!!!!)



【降霊】能力段階「5」――能力拡張「能力相乗格浄」



「効果」獲得した能力は一時的に甲の【能力】となる。この時【貸与能力】の能力段階が甲の【第一能力】、つまり【降霊】の能力段階と同一の段階に変換される。なお、【貸与能力】が甲の能力段階を上回る場合、甲の能力段階は【貸与能力】の段階と同化する。


(この力、お借りします)


【超高速自己再生】能力段階「6」。

これにより全ての【能力】の能力段階が「6」に移行。

【降霊】能力段階「6」――降霊契約数の際限を撤廃。


(守樹さん、今回もまた、お世話になります)


【長距離転移】能力段階「6」――対象を人に類するモノに限定し同時的に転移させる。これを補強する数多の【支援能力】は、転移の範囲を日本列島を覆い尽くすまでに拡大させ、全ての霊魂をこの場に呼び寄せた。


そうして大怪獣の元に溢れかえった無限に近い亡霊の影々。


【大怪獣ノア】は大怪獣の核から再生した肉片を飲み込み、【超高速自己再生】を発動。


(設計図を越えろ!!!!)


身体に大怪獣の特徴である体毛などを宿しながらも【怪獣ノア】をベースに【大怪獣ノア】は更に巨大な体躯へと、大怪獣に並ばんと成り変わる。


(今からお前の【能力】でお前を攻略する)



【適応】能力段階「6」



「効果」肉体の損壊の度にダメージに99%耐えうる体へと体構造を変質させる。また、対象を設定した場合対象の【能力】にも適応し、対象が有する【能力】の効果を80%打ち消す。


【大怪獣ノア】が振り下ろした一撃は大きな隕石が振り込んだかの様な威力を誇り、地面を大爆発させ土砂を一帯に弾け飛ばした。


けれどもその大核に罅も欠片も生み出せていない。


――大怪獣は【大怪獣ノア】の再生速度に【適応】し、肉体再生の速度を【大怪獣ノア】と同じ格に成り上げる。


そうして一瞬にして復活させた肉体で【大怪獣ノア】を殴打し、投げ飛ばし、蹴り飛ばし、光線を放ち、投げ飛ばされ、光線を放ち合う。野は荒地と化し、花も木も死に、けれどその上で確かに生物が生きている。2つの命が躍動している。


「ウ”ォオオ”ァアアアアアアアアアア!!!!!!」

「キュァァアアアアアアァアアァァァアアアア!!!!!!」


大怪獣は【大怪獣ノア】の個としての強さに追い込まれ始めていた。


ついさっきまで一切の攻撃が通用していなかったというのに、今や【大怪獣ノア】は大怪獣の強装甲を容易く打ち破り、腕の一振りで大怪獣の半身を吹き飛ばす。


だが大怪獣も負けじと【適応】し、硬質体と同じ強度の甲殻と厚い体毛を腕に纏い、攻撃を安定して受け止めれる様に進化。弾け飛ぶ腹は弾性を強烈に高め攻撃を跳ね返させられる様に進化。頭部は破壊される度に退化していき、光線を吐き出すだけの機構と成り極光を撃ち放つ。


「………………」


だが、それらはもう【大怪獣ノア】の脅威でもなんでもない。

同じ【能力】を持っていて、【大怪獣ノア】の方が多くの【能力】を有している。

後手を踏めば勝ち目などない――そして、ついに強靭な核に白線を生み出し粉をふかした。


それは間違いのない、大怪獣が負った明確で不可逆な傷の痕。


(行ける!!!!)


【大怪獣ノア】が形成した大鎌の手が再び掲げられ核に落とされる  回避  その文字が大怪獣に初めて明確に表れた。死を感じた大怪獣は核を護りながら戦いに身を投じ、核を護る方向で【適応】していく。


だが、そうした肉体はやはり【大怪獣ノア】の前に塵となる事だろう。


再びと復活した大怪獣の肉体を脳天から掻っ捌いた【大怪獣ノア】。その鋭刃が大怪獣の核を両断する――刹那、肉体の高速膨張と筋肉に溜まったエネルギーの解放を推進力に核を【大怪獣ノア】に向かって弾き飛ばした大怪獣。


それは豪速を束ねた速度で空を翔け走る。


そうして一瞬にして【大怪獣ノア】から身を離した大怪獣――


(――俺は、いるぞ)


しかし核の破壊を完全に止める為に【大怪獣ノア】の肉体を爆散させた事が裏目に出た。


豪速飛行に【大怪獣ノア】が追随  そして  【大怪獣ノア】は大怪獣の核を乗っ取ったかの様に核から体を再生させ、生み出した己の上半身。

命の皿を眺める死神が今、核に鋭利なカトラリーを振り下ろす――生餌はその手を食い止めようと腕を幾万と伸ばし抵抗する。


だが、もうその肉体に【大怪獣ノア】を止める力は備わっていない。



大怪獣Cc0001【能力】急速進化。

――【適応】能力段階「7」



「効果」元の肉体を消し去る代わりに対象が不得手とする肉体に変質させる。



差し迫った命を刈り取る死の刃  刹那  天と地を貫き破壊する極光の導き。



大怪獣の核に纏わりつく【大怪獣ノア】の体はその強烈な光に飲み込まれ完全消失。


後続から大怪獣の元に襲来した【大怪獣ノア】の肉体は体を再構築しながら光を前に立ち止まる。


眼前で広がる、極めて煌めかしく何処までも眩い光の極地。その光を掴むように中から飛び出てきた光の大腕。

それは千手となり、核を覆い尽くし、巨大な球体として君臨した。


大怪獣は【適応】の果てに肉体を捨て去り、光の大怪獣・・・・・へと成り代わった。


「…………………」


交錯する巨光と巨影の大怪獣。


「…………………」


その戦いは――


(――【意識剥奪:衆】!!!!)


搬送をやめ戦地に駆け付けた田所によって遮られる。三月の【無敵】の力を貸与された事で田所は大怪獣の元に容易に接近が出来ていた。


そして今、光の大怪獣Cc0001を沈黙させた。田所がその報告をしたと同時彼女は救護院に転移。


代わりと淡い光を纏って現れた、アンブレイカーズトップ1、朱円玲人。


(【箱庭】)


そして、アンブレイクの全員が幸せのまま居られる様にと言う願いを込めた足首のミサンガ。

それが切れた事に気を向けない長本三月。


(【無敵:範囲拡張】)


【大怪獣ノア】はその光景に感謝をし光を失った核の落下を前に右拳を握る。


数多の【能力】の羅列。

威力の上限は【能力解釈】という【能力】により【箱庭】の性質を理解していた為に取っ払われていた。


(小影。お前の力、借りるな)


【大怪獣ノア】はその白と黒の肉体に赤を混ぜ合わせた。


強烈な蒸気を解き放ち、急沸騰したヤカンの様な、否、荒れ狂う大海の唸りが天に羽ばたく。


(大怪獣。お前は、俺の親かもしれない)


大怪獣の子供として生み落とされた生物、それが佐伯陽介の正体。親の指示に従い群れていた怪人・怪獣達同様、つい先程まで言いなりになっていた【大怪獣ノア】。


けれどもう、その抑圧の咆哮は【大怪獣ノア】に届かない。


(俺の居場所はお前の元じゃない。俺は、もう、そこに帰る事はない)


その光と影の対峙は、奇しくもあの日の小影と陽介の光景を真似ていた。



そして描かれた、至上究極の、全てを穿つ、たったの一撃。



しかし巨影は確かに巨光を食い破り、光の根源を穿ち、跡形も残さず黒く塗り潰した。


火山の大噴火を彷彿とさせる超自然的重低音と破壊音が風の津波を撒いて大地に広がり轟く。


そうして幾間いくまの果て。


全ての風が落ち着いた時、真なる光が野を花を森を土を山を、人を、今、照らしあげていた。


大怪獣Ed0001――別名【大怪獣ノア】



「ゥ”ォ”ァアアアアアアァァアァアアア!!!!!!」



彼が天に向けた右の拳と咆哮は、この地に再び平和を齎したという報せとなり響き渡った。

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