表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神さん  作者: にわとり
PR
4/5

佐藤さんと初仕事

大木の件が片付いてから、一週間が経った。

私は事務所で、古びたソファに座り、煙草を燻らせていた。すると、扉がノックされ、ゆっくりと開いた。

そこに立っていたのは、あの女性だった。彼女は、少し緊張した面持ちで、しかし、以前の悲壮感は消え、まっすぐな瞳で私を見ていた。

「あの…」

彼女は、何かを言い淀んでいるようだった。

「何か用か?」

私が尋ねると、彼女は意を決したように言った。

「…私を、雇ってください」

私は、煙草の灰を灰皿に落とし、彼女をじっと見つめた。

「助手、ということか?」

「はい。あなたみたいに、人助けがしたいんです。私には何もできないかもしれないけど、でも、誰かの役に立ちたい。そう思って…」

彼女の言葉は、以前とは全く違う、力強い響きを持っていた。私は、少しだけ考えてから、静かに頷いた。

「いいだろう。ただし、報酬は出ない。その代わりに、私が食わせてやる」

彼女は、驚いた顔で私を見上げた。

「本当ですか…!」

「ああ。ただし、仕事は選べない。君が嫌がるような仕事も、時にはやってもらうことになる」

彼女は、それでも構いません、と言って、私の前で深々と頭を下げた。

「ありがとうございます…」

「名前は?」

佐藤莉子りこといいます」

「そうか。佐藤さん、君の今日の仕事は、清掃だ」

私はそう言って、立ち上がった。莉子は、不思議そうな顔で私を見つめた。

「清掃、ですか?」

「ああ。とあるマンションの、空き部屋の清掃だ。準備はいいか?」

私は、彼女を連れて事務所を出た。向かうは、新宿のとある高級マンション。そのマンションは、この事務所のオーナーから依頼された仕事だ。

事務所のオーナーは、昔、私が助けた老人だ。彼は、自分の命を救ってくれた私に、恩返しがしたいと言って、この事務所を無償で貸してくれている。そして、定期的に仕事を回してくれる。その仕事は、奇妙なものばかりだが、今回はただの清掃だ。報酬は驚くほど良かった。

マンションの一室で、私たちは黙々と清掃を続けた。助手は、私が指示した通りに、ゴミを集め、床を磨き、窓を拭いた。彼女の動きはぎこちなかったが、その真剣さに、私は何も言わなかった。

数時間後、部屋はすっかり綺麗になった。助手は、汗を拭いながら、達成感に満ちた表情で部屋を見回した。

「すごい…こんなに綺麗になったんですね」

私は、無言で彼女の隣に立ち、静かに言った。

「誰も住んでいなかったこの部屋に、再び人が住めるようになる。これも、人助けだ」

莉子は、驚いたように私を見た。そして、その顔は、次第に温かい笑みに変わっていった。

「これで依頼は完了だ」

私たちは、部屋を出て、エレベーターで一階へと向かった。

エレベーターの中で、助手は私に尋ねた。

「…そういえば、あなたの名前、なんですか?」

私は、何も答えなかった。ただ、彼女の顔をじっと見た。そして、口を開いた。

「私の名前は、黒瀬だ」


数日後

「あの、死神さん、ですか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ