表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神さん  作者: にわとり
PR
3/5

死神さん1-結

上司の名前は、大木と聞いた。彼の会社は、新宿駅から少し離れた雑居ビルの中にある、ありふれた中小企業だった。私はビルのエントランスで、大木が来るのをを待った。

十分ほど待っただろうか。大木は部下らしき二人を連れ、笑いながら現れた。見るからに傲慢そうな男だった。その顔には、他人を支配する喜びが滲み出ている。

私は、彼らがエレベーターに乗るタイミングを狙った。エレベーターの扉が閉まる直前、私は素早く中に滑り込んだ。

「失礼」

そう言って、私は大木の隣に立った。彼は一瞬、私を不審そうな目で見たが、すぐに興味を失ったようだった。

エレベーターが動き出す。私は懐から、彼女の死気を閉じ込めた真っ黒い瓶を取り出した。

「ところで、あなたは誰ですか?」

大木の部下が、怪訝な顔で私に尋ねた。

私は、何も答えなかった。ただ、静かに瓶の蓋を開けた。

瓶の蓋を開けた瞬間、まるで真っ黒な霧が立ち込めるかのように、彼女の死気が瓶から這い出てきた。それは、私にしか見えない。ただ、その場にいる人間の誰もが、空気が重くなったように感じたはずだ。

私はその靄を、大木の背中に向けてゆっくりと流し込んだ。

彼は、一瞬だけ背筋を震わせた。まるで、冷たい水を浴びせられたかのように。

「なんだ、今の…」

大木の部下が顔を見合わせる。

しかし、大木は何も感じていないようだった。彼は不機嫌そうな顔で私を見下ろし、言った。

「おい、お前。どこの会社の奴だ」

エレベーターが、目的階に到着する。私は、彼らの質問に答えることなく、先にエレベーターを降りた。

その日の夜、私は彼女に連絡を入れた。

「仕事は終わった。あとは、待っていればいい」

数日後、ネットニュースで、ある中小企業の社長が、社員へのパワハラを告発されたという記事が掲載された。そして、その社長は、過去に横領をしていたことも判明し、会社は倒産、社長は行方不明になったと報じられていた。社長の名前は、大木。

私は、彼女に記事のURLを送った。

数分後、彼女から返信が来た。たった一言だけ。

『ありがとうございました。』

私は、スマホを閉じ、静かに笑った。

奪われたものを、奪い返す。

それが、私の仕事だ。そして、今日もまた、誰かの死気を求めて、新宿の街を彷徨う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ