表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神さん  作者: にわとり
PR
2/5

死神さん1-2

彼女は、私の言葉を理解しようと、じっと私を見つめていた。その瞳には、まだ迷いがあった。

「私は…」

彼女が何かを言いかけるのを遮り、私は続けた。

「あなたを苦しめるその上司は、きっとあなたの心を、あなたの人生を、奪おうとした。そして、あなたは奪われそうになった。違うか?」

彼女は、黙って頷いた。

「この世には、奪われそうになった時に、奪い返すための力がある。あなたが纏っていた黒い靄、あれは死気と言って、人の生気を奪い、死へと向かわせるものだ。だが、あれは消えることはない。ただ、別の人間に移すことができる」

私は、彼女の前にてのひらをかざした。

「あなたは、その死気を私に預ける。そして、私はそれを、あなたの人生を奪おうとした、その男に移してやる。そうすれば、あなたは救われる。そして、その男は、今度は奪われる側になる」

彼女は、信じられない、といった表情で私を見つめた。

「でも…そんなことをしたら、あの人が死んでしまうのでは…?」

私は、唇の端を少しだけ上げて、皮肉な笑みを浮かべた。

「死気といっても、必ずしも肉体的な死を意味するわけじゃない。心臓発作で死ぬかもしれないし、交通事故に遭うかもしれない。あるいは…社会的に死ぬこともある。例えば、会社の不祥事の責任を全てなすりつけられて、地位も名誉も失い、家族からも見放される。そんなこともある」

彼女の瞳から、迷いが消え、代わりに、強い光が宿った。

「奪い返す…」

その言葉を口にした彼女の顔には、もう悲壮感はなかった。彼女は、力強く頷いた。

「お願いします…私、奪い返したい」

私は、彼女の決意に満足し、ゆっくりと立ち上がった。

「それでいい。あなたの復讐は、私の仕事だ。そして、私は、報酬は取らない」

彼女は、驚いた顔で私を見上げた。

「なぜ…」

「私の仕事は、人の命を救うことだ。そして、あなたの復讐は、あなた自身の命を救うことでもある」

私は、彼女から黒いもやを受け取ると、懐から取り出した中身の見えない真っ黒い小さな瓶の蓋を開けた。瓶の中は、底の見えない暗闇が広がっているかのようだ。私は、その黒い靄をそっと瓶の中に吸い込ませ、すぐに蓋を閉じた。瓶からは、先ほどの重苦しい気配は感じられない。私はその瓶を再び懐にしまい、彼女に上司の名前と、彼の会社の情報を尋ねた。彼女が全てを話し終えると、私は彼女を事務所の扉まで送り、最後にこう言った。

「明日からは、あなたが奪う番だ」

彼女は、私の言葉に静かに頷き、事務所を後にした。

翌日、私はパワハラ上司の会社へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ