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その輝きは何を誘うか

 一体どれだけの時間が経っていたのだろうか。俺の意識が無くなっていったあと、現場ではどんなことが起きていたのだろうか。そして……彼はどうなったのだろうか。



 次に俺が目にしたものは、白い天井だった。時折感じるエアコンの風が、今のこの暑い時期にとってはありがたいほどに爽やかに思える。

 どうやら体は横向きになっているみたいだ。この感触は……ベットの上だろうか。そして時々鼻にはなにか薬の匂いがする。となればここは……病院か。


 ゆっくりと上半身を起こしてみる。悲鳴をあげるような痛みはないようだ。



 ちょうど体を起こした時に、居合わせた担当医の方が気づいたようだ。俺の意識が安定していることを確認してから、ここに運ばれてくるまでの経緯と現在の容態について、簡単に話してもらった。


 昨日の管理局襲撃事件。俺は、現場となった支部から離れた場所で気を失って倒れていたそうだ。

 近くにいた執行班の班員、恐らくはあの時近くにいた泰牙か竜胆から通報を受けたと言う。


 搬送後、すぐにメディカルチェックが行われたが、大事には至っていないとのことだった。

 翌日までは検査入院してもらい、その後再びメディカルチェックを行った上で、今後の判断をするとの事だ。と言っても特に問題はなかったとの事なので、何事もなければ明日には退院出来るとの事だった。



 説明を受け終わり、時間の頃合もちょうど良かったので、そのまま食事を取った。



 その後は意識が戻ったという知らせを受けて、希愛と真琴。それからじいちゃんばあちゃんが見舞いに来てくれた。


 希愛と真琴は周りの迷惑になるんじゃないかってくらいに心配してくれてた。

 じいちゃんとばあちゃんにも心配かけてしまったけど、明日には退院出来そうって言ったら、直ぐに安心してしまった。




 面会が終わり、昼食を食べ終えた後。

 ベットの上で横になりながら、枕元の棚の上に置かれたペンダントを左手で握りしめていた。



 あの輝きが示してくれたモノは結局なんだったのか。無我夢中になり、導かれるがままに。あの創られた世界の中で俺はちょっとした旅をしていたのか。

 こいつがあったからこそ、今回の一連の事態は解決出来たのかもしれないが、多くの謎を残していくことにもなった。


 このペンダントには一体、どんな力が秘められているのか。もしかすれば、まだ俺の知らないような力でもあるのではないか。このペンダントをくれたあの時の少女は一体何者なのか。

 そして―――――このペンダントはどんな思いを持って作られたのだろうか。


 ほんの前までは単なるプレゼントだと思っていたものが、今では謎多きキーアイテムにまでなっているのではないかと思える。




 考え事をしていたら、病室のドアがノックされる音が聞こえた。

「どうぞー」と一声返すと、それを待っていたという勢いでドアが開けられた。


「蓮君!」


 水色のワンピースを着た紅葉が来てくれた。


「真琴ちゃんから蓮君が目を覚ましたって聞いたからすぐさま用意してやってきたの!それでそれで……」

「落ち着けって。俺は逃げやしないからさ……」

「あ。そ、そうだよねー…」


 よほど慌てていたのか。前の時と変わらないな……そう思って彼女を見ていたら、持っていた紙袋から何かを取り出した。


「これ、ウチからのお見舞い。こっちの方に置いておくね」

「悪いな。気を使わせてしまって。そんな大層な怪我じゃないからそこまでしてもらわなくても良かったのに」

「崎田家としては、蓮君には恩があるから。それに程度がどうであれ、入院していることには変わらないでしょ?」

「……そうだな。ならそのご好意はありがたく受け取らせてもらうよ」


 崎田家からのお見舞い品を受け取ったあとは、紅葉と色々と話をしていた。そしてずっと気になることがあったので聞いた。



「なぁ。あの後一体どうなったんだ?」

「話すとそれなりに長くなりそうだけど大丈夫?」

「大丈夫さ」




 紅葉が話してくれたことについて、まとめてしまうとこうなる。


 あの後、襲撃者七名の身柄については全員を取り押さえたとの事。現場に急行する際に俺たちを襲撃してきたヤツらについて、こちらは警察によって身柄を拘束したとの事。

 管理局及びその周辺の建物に被害が出た他、局員並びに班員数名が怪我をおったとの事。しかしいずれも軽いもので、大事には至っていないそうだ。

 襲撃犯の身元や目的については、現在調査中。



「ねぇ。私からも聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「なんだ?」

「結局、あの少年の能力ってなんだったのよ?って思って。蓮君ならそれがわかったんじゃないかなって思ったんだけど」


「本人から聞いた訳でも報告書を見たわけでもないから、あっている保証はないぞ」

「いいのいいの。それでどうなの?」

「俺なりに考えてみた答えは――――――」





「エネルギーの吸収と放出……だな」





 万物にはエネルギーというものが存在する。今回はその中でも、物理学的なものについてをあげることにしよう。


 例えば投げたボールには、ざっくりと言ってしまえば前に進む運動エネルギーと、地面から高いところにあるという位置エネルギーというものが存在する。


 今回俺が色々な観点から考えてみた結果。あの襲撃者、若草優人の能力がそれではないかという結論に至った。



 天王寺さんや紅葉、悠の攻撃の全てをあしらってしまったのはそれだろうと踏んだ。天王寺さんや悠なら単純な運動エネルギー。紅葉ならそれに熱エネルギーが加わるだろう。


 若草はそれを吸い取ることで攻撃を無効化し、その後の強力な攻撃のためのエネルギーとしていた。そのエネルギーを貯めるというのが、どうにも玲恩の能力に似ているような気がしたのだ。


 それの持つエネルギーを全て吸ってしまえば、それは攻撃ではなくなるであろう。トラックでさえ止めてしまったことにも合点がいく。



 そして袴田さんが言っていた疲れ知らずだという点と、明桜学園研究棟で発覚したという、能力使用時に脳が著しく活性化する特異体であること。


 つまりは、吸い取ったエネルギーを攻撃だけでなく、自分の活動エネルギーにも転換しているのではないか。と考えた。補給があれば、体力が尽きることはない。俺のように体力の消耗が早い特異体であっても、その点をカバー出来てしまう。



 ここまで言ったことはあくまでも、現段階では独自の推論だ。あっている保証なんかはない。





「んー……なんかよく分からない」

「確証はないんだ。俺がこうだと思っただけだし」

「でもそうだったとしたら、蓮君じゃなきゃ勝てなかったってことかな?」

「どうだろうな。やり方によっては袴田さんでも相手は出来そうだけど」

「あそっか。……ってそれよりもさぁ蓮君!」


いきなりテンションが上がるもんだからびっくりしてしまう。


「病院だからもうちょい静かにな」

「あ。ごめんごめん……。とまぁ改めまして! もうスグ夏休みだよね!」

「あ? あぁ、そうだな」

「色々忙しくもなりそうだけどさ、せっかくの夏休みなんだからいっぱい遊ぼうよー!だから早く元気になってね!」

「そうだな。あでも、検査で問題はなかったから、何事もなければ明日には退院できるかな」

「あ。そうなんだ……じゃあすぐに学校にも来られるね! 扇君達も心配してたんだよ」

「そっか。悪ぃことしたな。ありがとよって伝えといてくれないか?」

「もちろん! じゃあしっかり休んで元気になってね!」



 紅葉が帰ってからしばらくして。夕方になった頃合い。

 じいちゃんが持ってきてくれた小説でも読んで、夕食までの時間を潰しているところに、また新しい面会者がやってきたようだ。


「どうぞー」


 ノックして、俺が一言そう返してから、これまでとは違って静かにドアが開けられた。……本来はこれが普通なんだがな。


「……これまた珍しいな」

「……見舞い。雲雀や桐生に頼まれたというのもあるけど、貴方と話がしたかった」


 次に来た客人は、山水高校執行班の竜胆朱音だった。


その尋ね人はなにを語るのか。


あと二話くらいでこの章終わらせたい……。

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