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輝きが見せたもの

「泰牙! どうしてここに?!」

「どうしたも何も、いきなり通信飛んできたから超特急で駆けつけたんだよ!そしたらお前がなんかやべぇことになってたからよぉ!」

「通信?」


 聞けば、邦岡さんから近くにいた俺らの方に応援依頼の通信が来たんだという。邦岡さん達もなにやら足止めを食っているらしい。


「それに……」

「私はこのバカが単独で突っ込もうとしてるから付き添っただけ。……面倒だけど雲雀の頼みだったから」

「その言い方は…ないだろ竜胆」


 泰牙と同じ学校の竜胆も一緒にいた。


「お前にバカ呼ばわりは言われたくねぇな……あとなんでお前は息一つ切れてねぇんだ……」

「私とあなたじゃスペックが違う。それだけ」

「普段から眠そうなやつにこうも言われるとはな……」

「おい。喧嘩なら後でやってくれ」

「ったく。それどころでないことぐらいわかってるっての」


 俺にそう言われ、泰牙はさっき吹っ飛ばした奴の方を見ていた。不意打ちとはいえ、さすがにあれじゃあ少し怯ませるくらいが精一杯か。

 すぐさま立ち上がり、構えてこちらを睨んでいる。

 すぐには飛びついては来ない。こちらの頭数も増えたので、様子を伺っているところか。



「泰牙。あいつは先の報告にあった、以前うちを襲った奴だ。生半可な……いや、まともな攻撃はあいつには通用しない」

「おい。さっきの俺のタックルなら効いたじゃねぇか」

「あれは奴の不意をつけただけだ。そう何度も同じ手が使えると思うな」

「なら連携だ!」

「いや。やつの相手は俺に任せて欲しい」

「なんでだ!」


 はっきり言ってしまえば、援護を拒む理由なんてない。ならなんでそんなこと言ったのかなんて分かりゃしない。

 しかしそれでやつは納得しないだろうな。泰牙に限らず他の人にそう言っても、人がいるってのに単独で相手すること自体、反対されるに決まっているのだから。



「じゃあ……奴は任せる」

「任せるって竜胆! お前ここに来て傍観するつもりか!」

「そうじゃない。追っ手……というか援軍」

「あ?」


 竜胆に言われ、後ろを振り向いてみれば、こちらに向かってくる人影が一つ。うちのものでは無い。彼女の言うように、襲撃者側の追っ手であろう。


「まじかよおい……!」

「後付けで理由が出来ちまったが、とにかく奴の相手は任せて欲しい。泰牙には後ろのを頼みたい」


 泰牙は唸りながらも考える。そして左の手のひらを、もう片方の拳で叩いて言った。


「……わかったよ。その代わり! 何かあったら叫んででも呼べ! 地面這ってでも駆けつけてやる!」

「そう言って貰えるなら心強い」


 そして俺と泰牙は背中合わせになって、それぞれ前に向かって走り出した。



「足。引っ張らないでね」

「女子に言われるどおりはねぇ! これでも中本さんに仕込まれてんだ!」

「そう」

「なんかその言い方がムカついてくるが……この際この怒りは全部あいつにぶつけてやらぁ!」

「私も……安眠の邪魔をされた……」

「やっぱしあんたを怒らせると怖いようで……」


 ちらりと流し目で、離れていく二人を見送っていった。そして再び奴と向き合う。




「(待っていろ。あの時聞こえた声が本物だって言うのなら、俺が救ってやる!)」


 自分の胸にそう言い聞かせ、力強く地面を蹴って走り出した。



 しかし、決め手がない事がこうも辛いとは。相手はあの時のような衝撃波で遠距離から攻め立て、時々距離を詰めて近接戦に持ち込んでは、また距離を置く。その繰り返しであった。

 さすがに俺の能力では、やつに攻撃を当てることは出来ても、あの衝撃波を打ち消すことは出来ない。能力そのものではなく、奴のパワーによって生み出されたものであるからだ。


 衝撃波とそれによって飛んでくる瓦礫を避け、時々近づいてくる奴に対応するので精一杯だ。なかなか攻めに転じることが出来ない。さっき一発くらったのがかなりキツく、動きがいつもより鈍いのは痛感している。

 しかし、あのパワーが奴の能力によって直接生み出されているものでないことを俺は確信していた。だからこそ、しばらく時間を稼いでいればいずれは尽きる。そこが狙い目となるだろう。そしたら距離を詰めて、そしてその瞬間に――――――



 と思ったが、ここでひとつ。


 しかしどうする? 最悪こいつに全てを賭けてみるとは言っては見たが――――――


「(使い方が分からねぇ!)」


 仕方ねぇじゃん最初の時も! この前の時も! 特に強く意識した訳でもないのにあんな現象が起こったんだからな! 使い方わかりゃ苦労はねぇよ! というかだったらなんでこいつに賭けるなんて馬鹿なこと言ったよ俺は!!


 なんなら思いっきり叫んでみるか?! 奴に肉薄したその瞬間に、こいつに意識を注ぎ込む感じで、やってみれば何か起こるのか?!


 なんて馬鹿なこと考えながらひたすら攻撃を避けることに徹していた。


「(いや……もう考えるのはなしだ!)」


 そんなことしていても俺らしくない。ならばもうこのまま一直線に駆け巡るしかないな!ちょうどあいつの攻撃も、段々と威力が下がってきている。体力に限りもあるので、狙うなら今しかないだろう。


 3……2……1……


 心の中でカウントし、呼吸を整える。


「(今だ!)」


 0! と宣言するよりも前に、真正面に向かって全力ダッシュ。やつもそれを迎え撃とうと、突っ込んできた。


 先に攻撃が飛んできたのは向こうの方から、交錯する直前で踏みとどまり、左腕に力を込めて一発のパンチが繰り出された。それをすんでのところ、かすっているやもしれない距離で交わした。

 好機を逃さず、素早く右腕に力を込め、能力を発動させながらその拳を叩き込んだ。



 奴は吹っ飛ばされ、そして俺は胸元を掴んで叫ぶ。


「お前が教えてくれたって言うなら……お前にその力があるって言うなら、俺にその力を貸してくれよ!!」





 その瞬間――――。


「なんだよコレ?!」


 胸元から眩い光が溢れ出していく。服の下からその光を取り出してみれば、あのペンダントが、これまで見た事のない白い輝きを放っていた。


 その光は益々大きくなっていき、次第に俺を。そして俺が吹っ飛ばしたあいつも取り込んでいく。

 俺の意識はその中に吸い込まれていった―――――――




「……」


眩い光は、気がつけば消えていた。それを感じとり、俺は目を少しずつ開いてみた。が――――――


 俺の全く知らない街の中で、誰一人いないこの街のど真ん中に俺は立っていた。


「ここは……いったい……」

光の先に映るものは、その者の深層心理。

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