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俺たちは考える

「――以上が報告になります、小松主任」

「そうかわかった。ご苦労だった」

 その後遅れて学院に到着した小松主任に、先程の襲撃の一件について報告した。

 襲撃者は俺たちと同じぐらいの年の少年。現在も逃亡中。警察がその行方を追っている。

 被害状況については校舎の外壁、来客用玄関の窓ガラスの破損。戦闘が行われた周囲の地面の損壊。

 現場に居合わせた生徒、職員の数名が怪我を負ってしまったが、いずれも重篤なものでなく、一般生徒全員の避難も確認された。

 天王寺さんは大怪我こそ負ってなかったが、念のために今は近くの大学病院にて検査を受けている。

 そしてここからが問題。襲撃者が能力者であることは明らかだが、肝心な能力の正体が不明。そして一番重要なことである襲撃理由も未だ不明。



 警察と管理局による現場検証及び警戒態勢が敷かれたことにより午後の授業は打ち切られ、明日は休校の措置が取られることとなった。執行班にも自宅待機の命令が言い渡された。

 自宅に帰ってきてから、今、夕方に至るまで。襲撃のことについて考えていた。報告の時点で不明だった襲撃者の能力の正体と襲撃理由。そしてそれだけではない。


「(もう……戦いたくない!!)」


 あの時に聞こえたあの言葉についてもだ。それがあの襲撃者の本心なのかはわからない。

 ともかく今わからないこと、考えなければならないことが大まかに三つある。ごっちゃごちゃになっても仕方ないので、落ち着いて一つずつ考えていくことにしようか。



 一つ目。襲撃者の能力について。最初に言ってしまうと、あの戦闘だけでははっきりとこういう能力だと決めつけることができない。

 わかっていることといえば、天王寺さんや紅葉の攻撃は一切通用せず、俺が能力を発動しているときの攻撃は通ったこと。周りのモノを破壊できるほどのすさまじいパワーを持っていたこと。

 そしてこれが参考になるのかはわからないが、悠の射撃でさえあの襲撃者には意味をなさなかった。ちなみにあの時拾った睡眠弾は悠の立会いの下、証拠品として管理局に提出してある。


 さてと。能力の候補はいくつかあるが、何にしても反例があるせいで絞り込みができない。

 まず真っ先に思い付くのが純粋な身体能力の強化。あの破壊力と、天王寺さんらの攻撃も受け止めてしまった。という点もあるがこの場合、紅葉の炎をも寄せ付けなかったことの説明がつけられなくなってしまう。

 次に邦岡さんのような硬化能力。これも攻撃を受け付けなかったという点を考慮してのことだったが、これもないだろうということに。紅葉が特に痛がっている様子もなかったし、第一俺も最初は能力使わずに相手の身体に触れたが、特に変わった感触でもなかった。

 こんな俺の体たらくのせいで、わからずじまいというわけだ。


 二つ目。襲撃者がこんな昼間に学院を襲撃してきた理由。戦闘によって周囲の建築物にこそ被害は出たが、それ以外について言えば何もなかったというのも気にかかるところだ。それに誰かが連れさられたというわけでもない。生徒、職員全員の身柄の安全については保証されている。


 でもって三つ目。聞こえてきたあの言葉についてだ。

 あの時、何故かズボンのポケットに入っていたペンダントが教えてくれたことなのであろう。何でポケットに入っていたのか・・・というのもあるが、今はそっちが本題ではない。

 あれが本音なのかどうかはわからない。しかしそれがあの少年の本心だったとするなら、何か俺にしてやれることはないモノなのかと考えてしまう。何かにとらわれていて、自分の本来の意思に反してこういうことをしているのだろうか。

 しかしそうだったとしてもやはり引っかかることがある。俺はあの時、射程内にあの少年をとらえた状態で能力を使用している。それにも関わらず少年の様子が変わることはなかった。まぁその理由が能力にかかわったことでもないから、その辺については何とも言い難いものではあるが。


 スマホを取り出し、誰かに電話をしようか悩んだ。こういう悩んだ時頼りになる真琴か、考察力のある邦岡さんか。それとも、こんな気の沈んだ時に励ましてくれる紅葉にするか。

 誰に掛けても良かったんだけど、勇気が足りなかったのか言葉がまとまっていなかったのか。

 結局、もう少しだけ一人で考えてみようという結論に落ち着いた。こういう時こそ誰かを頼れと、前にくらく沈んだ俺に袴田さんは教えてくれた。でも今はもうしばらくだけ一人で背負ってみようと思った。きっと皆も俺同様に忙しいんだろうなという配慮も少しばかりはあった。


「さてと」

 しばらくベットに寝っ転がって考え事をしていたんだ。そんな自分らしからぬことをした後だし、気分転換にちょいと体でも動かそうかと思ってベットから降りた時、ピロンっとスマホの着信音がなった。

 小松主任からメールが届いたようだ。今回の襲撃事件のことについて、現段階でわかったことを資料にまとめたので目を通してもらいたいとのことであった。

 メールに添付されたファイルを開いて内容を確認する。右人差し指で画面をスクロールさせていっていくと、現場検証の報告がまとめられている。一部伏せられているところもあるが、そこは向こうの事情もあるだろうからつつくのはやめておこう。


 そしてあるところで指が止まった。襲撃者の身元の一部が判明したという報告であった。随分と速いもんだと最初は思ったが、名前を見て俺は驚いてしまった。

「若草……」


 この名前には、つい最近聞き覚えがあった。


深く考えるのは俺の主義ではない。

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