↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/153

似たものと昔を知る者

 翌朝。目が覚めて真っ先に視界に入ったのは、見慣れない天井であった。寝起きで頭がぼーっとしていて、なんでこんな所にいるんだろうかと、少し考えてしまったが、ベットから降りてようやく思い出した。今は明桜の学生寮にいたんだと。

 そういえば昨日の夜、女子風呂の方でなんかあったとかなかったとか。という話ではあったが、詳細については聞かないでおこう。男の俺がそんなことを聞いては色々問題になりそうだ。後が怖い。

 机に置いたスマホで今の時間を確認してみると、六時三十七分。朝食は七時から八時の間に食堂でとるようにと言われている。まだいくらか早いというわけだ。

 しかし部屋にいても、別段やることがある訳では無い。そう思ったので、とりあえず一階に降りてみることにした。


「おはようございます黒宮さん。よく慣れない環境ですが、眠れましたか?」

「お陰様で。ベットの感触が家のものに似ているようにも感じましたので」

「それは良かった」


 部屋の外にある共用のトイレで用を済ませ、一階のロビーまでやってくると、ちょうど立花さんに会った。


「早いんですね」

「いつもこんなものですから」

「昨日はどうでしたか」

「お陰様で。いい時間が過ごせましたよ」


 まだ他人行儀な感じもするが、立花さんとは気が合うのかかなり打ち解けた。ロビーのソファーに座って話していたら、入口の方に二人の影が現れた。何かと思って目を凝らしてみたら、知っている顔であった。


「あの、どうしたんです天王寺さん。えらい汗だくになってますけど」


 まだ朝の七時だというのに、汗だくになっている天王寺さんと、右に同じくの徳田さんがいた。


「おはようございます。朝のトレーニングですか」

「トレーニング?」


 立花さんはいつもそうであるように話しかける。対して俺が質問すると、徳田さんが息を整えてから答えた。


「あぁ。いつもの通りランニングに行こうとした時に、一階のロビーでばったり会ったものでな。彼も日課で早朝トレーニングをしているということだったから一緒に体を動かし、汗を流してきたところだ」

「誰かと共に体を動かすというのはいいものだな黒宮」

「あぁーそうですねー」


 俺と天王寺さんの場合、俺が付き合わされているようなものだがな。


「おかげか気合いが入ってな。いつもは一周だけだが、今日は二周してきた」

「体動かすのはいいですけど、朝からあまりハードなものは、かえって体に悪いですよ」

「一周追加くらい大したもんじゃない。朝飯前のいい運動になる」

「その一周で何キロあると思ってるんですか・・・それより朝食の前に、着替えて汗拭いて来てくださいよ」

「わかっているさ」


 各々の部屋に戻っていく徳田さんと天王寺さんを見送り、気づけば二人揃ってため息をついていた。


「なんか俺ら、結構似たとこ多いっすね」

「自分たちのように気が合うと言うんでしょうか。いや、そうかもしれません」


 班長がこんな感じだと言い、副班長と俺らが気づけばまとめ役になっているといい。その人達同士、どうも引かれるものがあるようで、似たものを感じるのであった。



 朝食を済ませたあと、今日は学園の研究棟を視察させてもらえるとの事なので、用意を済ませて学生寮の入口に集まった。しばらくしてから明桜の教員の方がやって来て、研究棟まで案内してもらった。

 ちなみに小松主任はこちらの管理局局員、並びに明桜学園の職員との会議に出席しているとのこと。しかし伝言曰く、昨日絡み酒にあってか、当人は疲れが残っているとのことで。果たして大丈夫なのだろうか?




「お待ちしておりました。兼城学院の皆さん」


 広大な学園の敷地を歩くこと数分。到着した研究棟に入ると、研究員の男性が出迎えてくれた。


「本日ご案内をさせていただきます渡辺と申します。昨日より遠路はるばる、お疲れ様です」


 お互い一礼したところで案内してもらえるのかと思ったが、その前にこう聞かれたのであった。


「ところで、黒宮蓮さんはどちらでしょうか?」


 目の前に立つ研究員の方が、自分のことを探しているようなのだ。それにしても俺、何かやらかしてしまっただろうか。覚えがないのですごい怖い。緊張しながらも一歩前に出て、名乗り出た。


「はい。自分ですが……どうかしましたか?」

「私、黒宮翔一朗さん、生前の貴方のお父上と同じ現場で仕事をしていたことがありまして。同じ時間を過ごしたものとして葬儀にも参列したかったのですが、それも叶わず面目無い」

「い、いえ。お気持ちだけでも嬉しいです」


 向こうの勢いに流されるまま、渡辺さんと握手をした。どうやら父さんの元研究仲間のようであった。その後、俺の手を離してから元の場所に戻る。


「私情を持ち込んでしまいすみません。黒宮翔一朗の息子さんがいると聞いて是非ともお話したいと思っておりましたので。では改めまして、研究棟を案内する前に皆さんに会わせたい人がおりますので、まずはその方の元にお連れしますね」


 渡辺さんの後ろを歩いているとき、俺の一つ前を歩いていた邦岡さんに、さっきのことについて聞かれた。


「黒宮のお父上は顔が広いのだな」

「父さんは、能力研究に携わる研究員でした。俺が兼城学院に編入する少し前までは、ここでは無いですけど関東にある別の研究所に務めていました。それも昔の話ですけど」

「そうか……生前と言っていたな。安易に聞くべきことではなかったな」

「昨日今日のことではないので、気にしなくてけっこうです」

「そうか。だがこの話題は控えることにしよう」


 エレベーターに乗り込み、最上階の一室まで案内された。


「乃木村さん、渡辺です。兼城学院の方たちをお連れしました」


 ノックして、室内にいる合わせたい人に呼びかける。入りなさい。と女性の声で返答がきてから、その部屋に通された。


「いらっしゃい。首を長くして待っていたわよ」


「昨日も言いましたけど、うちは癖のある人多いんで」

「こっちもですね。しかも人数もそちらより多いので」

「友人のとこは比較的平和だと言うんで、羨ましい限りですよ」

「こうも慣れてしまってるのが、いちばん怖いけど……」


朝から苦労話は気が引ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。