事態収拾請負人
「あの、ホントすみません。うちの班長の突然の思い付きで」
「いやいや、こちらこそすいません。こっちもこっちでのってしまったみたいで」
「いつもこうなんです。ノリというか、なんというか」
「こっちも一度エンジンはいると、なかなか止まらないものなんで」
「あまり気にしないでください。というのも難しいですよね……」
「大丈夫です。ずっと一緒にいるのでよくわかってます」
「ホントに苦労しています。こういう時にストッパーというかまとめ役が必要なんですけど」
「いつもそういう役が回ってくるんですよ。まぁこういうことに関しては」
「「「「慣れてますから……」」」」
広場にあるベンチに座っていた四人は、揃って大きなため息をついた。俺と邦岡さん。明桜学園の執行班である副班長の反田さんと、二年代表の立花さん。
こうなったきっかけは徳田さんが言い出した、手合わせをしないかという提案。それに対して反田さんと立花さんは、いきなりこんな申し出をしては向こうが困るだろう。と言ったんだが、紅葉と天王寺さんがのっかってしまった。
その結果徳田さんと、それに便乗した二年男子の松本さんが紅葉と天王寺さんの相手をすることになり、前述の四人は少し離れてそれを見学し、残りは観客・・・っていうか盛り上げ役と化している。
「もうこうなると僕らじゃ手のつけようがないんですよね」
「それ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫……じゃあないんですよね。班長、一回あぁなると周りのこと一切耳に入りませんから」
「熱中するのは決して悪いことではないが、度が過ぎるのも困りものだな」
「うちの場合だと、熱中っていうより暴走する人が多いって感じですかね」
それ故、かなり手を焼いている。
「そんなところだな。今は観戦する側に回ってはいるが、袴田と北島、後は草薙も暴走しやすい。何かとほとんどのメンバーには苦労している」
「しやすい。ってレベルじゃないってことは、身に染みてますけどね」
「そちらもいろいろ大変なようで」
お色気トラブルメーカー。大魔術師リリーシェ。暴発注意の火薬庫。あの三人について自分なりに一言で言い表すとこうなる。
戦闘とか任務に限った話でもなく、個性が強いが故、時に手のつけようがなくなるくらいに・・・って言うことがたまにあったりなかったり。
こうなって一度火がついてしまった以上、燃え尽きるまで待たないことには収まらないくらいにまで事態が発展してしまったわけで。向こうが不完全燃焼ともなると、こっちにいらぬ飛び火が降りかかってきそうなのだ。現に今、被害に巻き込まれることのない遠く離れた安全なベンチに座って見ているわけだが、かなり白熱してきている。
「話に聞いたとおり軽やかな身のこなしですね、能力の使い方も面白いですね」
「崎田自身が得意としている剣術を活かせないかと模索して、今のあの形になったそうだ。扱い慣れするのにも、かなり試行錯誤をしたと言っていた」
「炎を刀として形成。こんな使い方があるんですね。それにしても松本の奴大丈夫だろうか。えらい押されてるぞ」
「なにか心配事でも?」
「あぁやって突っ切って行きましたけどあいつ、うちの中だと下の上くらいなんで」
「下の上って……」
それはもう実力はこの中だと低い方だと言っているものでは無いのか。と心に思ったことは言わないことにして。自信家なのか張り切りというのか。
「もちろん執行班なんで弱いとは言いませんよ。でもあれを見た感じ・・・って今度は飛んだ!?」
向こうで戦っていた紅葉が相手の攻撃を躱し、その勢いのまま空を飛んだ。突然の展開に松本さんもかなり驚いていた。
「最近できないものかって特訓していたんです。出力や方向の調整にかなり苦戦してたんですけどね」
「まだぎこちない感じもあるが、だいぶ様になってきているな」
「尚更松本の奴、大丈夫かねー」
「明らか劣勢なのは……ってあぶねぇ!?」
いつの間にか流れ弾が飛んできていた。この状況じゃ避けたところで何かしら被害が出ることは避けられない。すぐさまベンチから立ち上がり、少し前に出てから一瞬だけ能力を使って、飛んできた炎の弾をかき消した。
「済まない黒宮。助かった」
「急に来たんでびっくりしましたけどね。間に合ってよかったです」
「い、今のすごいですね。何をしたんですか!」
「俺も気になります! いったいどんな能力を!?」
「単純に能力そのものを無効化して、流れ弾の炎を消したんです」
「能力無効化って……すごい能力じゃないですか! 万能じゃないですか敵なしじゃないすか!」
テンション振り切れてる立花さんには申し訳ないが、便乗してそうでしょう。と言えるもんではない。
「いや。そうも世の中都合がいいってもんでもないっていうか、そこまで便利なもんでもないっていうか」
「?」
ベンチに座りなおしてから、きょとんとした顔をしている反田さんと立花さんに説明する。
「まず周りに影響を及ぼす類の能力にしては、効果範囲が異常なくらいに狭い。体感だけど半径二メートル程」
「それってもう近接格闘戦の間合いじゃないですか!」
「そして何よりネックなのが俺自身、能力を長いこと持続させられないこと。さっき飛んできたのは火の玉一発、一瞬だけだったからいいが、もしあれが火炎放射でこようものなら、そう長々と防げるものじゃないってことです」
「それを聞くと、使いどころが難しい能力ですね」
「はい。少しでもこれが改善できないものかと考えてはいるんですが」
「彼の能力によって成功した任務もいくつかあった。より有効的に、安定して使えるようになると幅が広がるんだが」
俺と邦岡さんで、自分の能力のことに着いては考えていたら、邦岡さんの隣に座っていた反田さんから提案があった。
「気になるのでしたら、明日研究棟を訪れた時にでも聞いてみたらどうですか?もしかしたらなにか参考になることが聞けるかもしれません」
「研究棟か。能力に詳しい人に聞いてみれば、なにか見えてきそうだな」
「ありがとうございます。そうすることにします」
反田さんの提案のとおり、明日そこの研究員の方に聞いてみることにしよう。
「それにしても反田さん。あれどうするんですか?」
「あの様子だとそろそろ一段落はつきそうですね。この後学生寮のほうで歓迎会もありますから」
「ならそれ迄待つとしようか。余計な被害を被りたくはない」
「向こうは流れ弾のこと、全く気づいてないみたいですからね。下手に近づいたら怪我しそうだ」
あとは手合わせが終わるのを、安全な場所から待つことにした。
「色々苦労してますよ。うちは人数もそちらより多いですから」
「こっちも何かと、変わり者が多いんで……」
「まとめ役ってか、落とし込むっていうか」
「何にしても、大変だということには変わりませんよ」
抑え込む役割が必要だ。




