明桜学園へと
立食パーティーが終わった後、各々の預けていた荷物を受け取ってからホテルのロビーへと向かうと、先程挨拶をした明桜学園の日向さんたちが待っていた。
「お待ちしておりました。兼城学院の皆さん」
「おまたせしました。何卒、よろしくお願いします」
向こうの大人の方と小松主任が挨拶をし、握手を交わす。その後、天王寺さんと邦岡さんが前に出て、向こうの生徒代表と握手を交わす。
「では向こうの方にバスを用意致しましたので、早速ご案内致します」
講演会の行われたホテルから、明桜学園側が用意したバスに乗り、次の目的地である明桜学園に向かった。
バスに揺られてから数十分ほどしてそろそろ到着するとの案内を受けたので、窓の外に目をやると、いかにもと思わせるような校舎の形が見えてきた。
「すごく大きいんですね。まるで大学のキャンパスみたいで」
「明桜学園の敷地内には校舎だけでなく、学生寮や能力の研究を行うための研究棟もありますから、それ相応の広さがあるんです」
「寮まであるんだ。ウチとはえらい違い……」
「あまり比較とかするな。うちにもうちの良さがあるだろう」
明桜学園の規模の大きさを羨ましく思う紅葉に対し、邦岡さんがフォローしてやるように声をかける。
「でもこういうの、なんだか憧れますよね」
「アニメのような、オシャレな感じ。色々想像しているだけでもたまらないものねー」
「校風もこの学園の特色です。全ての学生に満足のいく学生生活を送って貰えるように、学園側も様々な施しをしています」
そしてバスは、学園敷地内へと入っていった。
「まずは皆さん荷物もありますから、今晩宿泊する学生寮の方にご案内致します」
「男子三名に、女子四名でしたね」
「いえ、女子は……」
「今そういうことはいいですからね」
「……ごめんなさい」
銃口を突きつけなくとも、悠の恐ろしいがまでの気迫は、隣に座っている俺には伝わってくる。この容姿からは想像つかないようなドスの効いた声がそう思わせた。
「ともかくそういうことで……。ではお先に学生寮の方にご案内します。荷物を置き終わりましたら、学園施設の方を案内しますね」
学園の敷地内に入り、入ってすぐの場所にある建物の前でバスは止まった。マンションを思わせるような立派な建物がそびえ立っていた。
「こちらが学生寮になります」
「では男子は日向さんに、女子は山科さんに、ついて行ってください。お部屋の方にご案内します」
「そういえば、この学園にはどれくらいの生徒がいるんですか」
学生寮の廊下を歩いている途中、悠が日向さんたちに学園のことについて質問した。それに対し、案内してくれる日向さんと立花さんが答えてくれた。
「現在在籍している生徒数は1197名。兼城学院の方とほとんど同じくらいです。そのうちこの学生寮に入寮しているのは、その六割ほどですね」
「全国各地から、この学園に入学してくると聞いていましたが、やはり近郊に住む人は多いんでしょうか」
「もちろんそういう人達もいますけど、本人の希望などで学園近くのアパートを借りて、そこで生活している人もいくらかはいます。それを考えれば、生徒の八割近くは親元を離れて生活しているんです」
「学生寮の規則というのもありますが、それを除けば十分に充実した環境ですから。困ることはほとんどありませんよ」
「学生寮で一人暮らし。なんかそういうの憧れます」
「しかし学生寮に空き部屋ですか」
「今回のあなた達のように、お客様をお招きする機会が多いので、いつでも受け入れられるよう、ゲストルームとして備えているんです」
「そういうことですか」
奥の方で立ち止まると、日向さんが三枚のカードをポケットから取り出した。
「こちらの奥、三部屋があなた達のお部屋になりますそしてこれが、部屋に入るのに必要なカードキーになります。ドアの左にある機械に通してください。それと寮の個室はオートロックになりますので、くれぐれも置き忘れには気をつけてください。万が一の時は、一階の受付に申し出てください」
「あぁ、わかった。ってお前らなんだその目は」
「本当に気をつけてくださいっていう合図です」
「天王寺さん、朝出る時も同じことしてましたから」
「わかっている」
朝ホテルの部屋から出る時、天王寺さんがカードキー持たずに出てしまって色々大変だったことを思い出した。あの時は俺と悠が部屋にいたので受付の世話にならずには済んだが、勘弁して欲しいものであった。
「誰しもよくあることです。僕も何度かそういうミスをしていました」
立花さんが笑いながらそんなことを話していた。
部屋の中に入ると7.5畳ほどの、ホテルのような整えられた部屋であった。広さもそうだが、収納スペースに無線環境、防音対策まで整えられた、一人分の部屋としては持て余しそうなくらいに充実した空間だ。
各自用意された部屋に荷物を置き、貴重品類を持って再び学生寮の外に。
そのあとは明桜学園の執行班の方の案内で、学園内を見て回った。
この学園は、高等学校として全国で初めて研究機関の置かれた学校で、能力の他、技術開発の研究も行っている。
この広大な敷地の中には本校舎に学生寮、研究棟の他にも、カフェテリアや広い図書館など、学生の手助けになる様々な施設も置かれている。
本日は校舎とその他施設を見学させてもらい、研究棟に付いては翌日の予定となった。回るところを一回りし、校舎近くの広場までやってきた。
「こんなに立派な学園で学ばせてもらえるというのは、生徒にとってはありがたいものですね」
「学園側は、生徒のことを何よりに考えて教育方針の他、設備についても整えています」
「夜からは学生寮のほうで歓迎会を行う予定です。それまで時間があるのですが、なにか要望などありましたら、可能な限りお答えしますよ」
「なら俺の方から提案したい」
そういったのは、兼城学院の執行班の誰でもなく、明桜学園執行班の班長である、徳田さんであった。
「よろしければ、手合わせして貰えませんか?」
「立花の奴、俺が知ってる限りじゃ二桁はあったと思うがな。そういうミスは」
「すみませんなにかとおっちょこちょいなもんで……」
「それは流石に、多すぎるのでは……」
「だからなんで俺の方を観るんだ黒宮」
置き忘れには気をつけよう。




