選ばれたもの
「いやだからそれ全部通せばいいんですって。詰まったりはしませんから」
「そ、それでいいのか」
「袴田さんそっちじゃないですから! そっち行ったら特急のホームになりますから!」
「向こうにも改札あったからー」
「普通二回も改札通らないでしょう! 後それから悠、そっちは違う。東京行きのホームはあっち」
「あ。そうだったの」
「最初はややこしいってか迷うのはわかるよ」
「なんだと! ではそちらは魔境へ通ずるゲートではないということか」
「そうだなーそっち行ったらその魔境とやらからは遠ざかるなー」
点呼を済ませた後、主任から東京行きの切符を受け取り、すぐにホームへと向かった。
数名か、こういう移動に慣れていないメンバーを呼び止め誘導するのだけでも、中々に大変なことであった。
「まさかホームまで行くのにここまで苦労するとは……」
「ごめん。なんかこういうの慣れてないから」
「いいんだ。誰にだって慣れないことの一つや二つあるもんだ……」
「蓮君はこういうの慣れてるの?」
「慣れてるっていうか、実家はこっちで前まで向こうのほうに住んでいた。その時の移動が新幹線だったから」
「それ結局は、そういう機会が多かったから慣れてるってことじゃないの?」
「そういうことになるな」
長々と言い切る前に、悠に要約された。
長期休みの時に帰省するときは決まって新幹線だったし、向こうに住んできた時も電車で移動することは多かったので、まわりくどい言い方になってしまったが、慣れているということになる。
「他の皆さん、こういう旅行経験とかって言うのは」
俺が他のメンバーに聞いてみると、皆それぞれ違った答えが帰ってきた。
「私は家柄のこともあるから、頻繁にとは言わないけど、そういう機会は結構あったかな」
「僕は電車でっていうのはあまりないかな。父さんがドライブ好きだから、必然的に車での移動が殆どだし」
「ほとんどないな」
「小さい頃には何度かあったな。兼城学院に入ってからは、無いかもしれん」
「前に一人で東京行ったことはあるのだけど、その時は大いに迷っちゃったわね。あの時は色々苦労したわねー」
「我が魂の依代と、同じ器より産まれし敬愛の者たちと三度」
「家族で三回はって」
「翻訳どうも。てか自分の家族をそういう言い方するなや」
その後新幹線で東京まで移動。到着後は手配されたバスにて宿泊先のホテルまで移動し、そこで一晩を過ごした。
翌日、ホテル到着時の集会での確認の通り、七時起床。七時半から朝食。その後は各自用意を済ませてホテルをチェックアウト。そして講演会の会場へと移動することになった。
会場は俺達の宿泊していたホテルとはまた別のホテル。その中にある大ホールが会場となっている。
中へはいると、既に多くの人が集まっていた。一般の宿泊客の他、見慣れない制服がチラホラと窺える。彼らもまた全国から招待された執行班の面々ということだろう。
主任が受付を行うため、俺たちの方から離れていった。その間は悠達と話をしながら待っていたが、これまで感じたことの無い緊張感があった。
「あのさぁ蓮。なんか僕らがここにいるっていう実感。中々湧いてこないんだよね」
「俺もだ。周りにいるのは選ばれた人達ってことなんだからな。正直俺がいていいものかと不安になるよ」
「ならお前たちも彼ら同様、選ばれたその一人ということだ。胸を張っていい」
「「天王寺さん」」
「どうかしたかお前ら。俺の顔になにかついているのか?」
「「いえいえ」」
こういう時の班長は、なんだか頼もしく見えてくる。もちろん普段からもそうなんだが。
「それにしたってかなりの数来てるのねー。どれくらいいるのかしら」
「聞いた話だと全国各地から五十校程、約四百五十人ほどが招待されているそうだ」
「そんなにいるんですか」
「執行班の所属のものでも、全国でかなりいると聞いている。明確な数は私にはわからないがな」
「私達その中の七人ってことですよね。相当すごいってことかー」
「此度は我々が、運命に導かれたということか」
「大袈裟かもしれないけど、そんな感じなのかなー」
男女各々で話していたら、主任が受付を済ませて戻ってきた。
「お前たち。これ付けて、先に向こうのホールに入っていてくれ」
主任から人数分のパンフレットと、各々の名前の書かれたネームタグを渡された。
タグを首にかけて、主任の言っていたホールへと歩いていった。
「講演会って言っていたけど、講師は誰になるのかしら」
「パンフレットに書いてあるみたいですよ」
「ひとまず座席についてから見ることにしよう。歩きながらでは、周りに迷惑がかかる」
「わかってますよ。邦岡さん」
そう言うので、会場となる大ホールまで歩き、学校ごとに指定された座席に着いた。
「蓮君。隣いいかな?」
「あぁ。もちろん」
「じゃあ僕はその反対側に」
「なら私は紅葉の横に」
「じゃああとは入ってきた順でいいわね」
「主任の座る場所も必要だ。もうひとつズレてくれ」
「「「はーい」」」
「承知した」
席につき、そのパンフレットに目を通した。この後の流れと、講演会のことについて簡単に書かれていた。
ちなみに講演会の終了後、立食パーティーが催されるとのことであった。まぁそれは今いいとして、講演会の方の情報について見てみる。今回の講師は二名。一人は前の文部科学大臣であった高倉氏。そしてもう一人は――――
「能力研究の第一人者、アルバス・ウォーカー……」
「兼城の奴ら、遠征行っているんだって?」
「そうみたいっすね。うらやまっすわー」
「ん? なんか電話なってません?」
「ホントだ。しかも内線じゃない」
何かの予兆




