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閑話① その頃の兄姉たち

閑話です。

主人公はでてきません。

今回は、主人公のお兄様とお姉様の会話です。





リスティラが部屋を出て行って一分後、部屋の隅で影を背負いながらキノコを生やしていたアルフィルがすっくと立ち上がり、ソファに座っていたアテネに向かって話しかけました。



「ねぇ、アテネ。リスティは、本当は天才なんじゃないのかな。」


「まぁ、アルフィ兄様。それは、兄バカ90%真面目10%の思考で仰っているのですか?それとも、真面目100%?」


「見たら分かるだろう?これのどこが兄バカ90%の表情なんだ?どう見たって、真面目も大真面目、大真面目120%だろう!」



アルフィルの顔は残念なことに、王子様のようなイケメン顏にもかかわらず、見たら3歩は下がりたくなるほど、デロデロに笑み崩れています。アルフィルは妹たち、殊にリスティラを目の中に入れるどころか、目ん玉の中に溶け込ませてもおかしくないほどに溺愛しています。もっとも、リスティラには軽くあしらわれて、80%以上の愛はそこら辺に垂れ流されているのですが。



「兄バカは否定なさらないのね・・・。それに大真面目120%って・・・。どれだけ真面目をアピールしたいかは伝わりましたけれど、そのデロデロに笑み崩れたお顔で仰ったら、神様並に優しい私でも信憑性は半分。つまり、大真面目60%=真面目50%。信じるに値しない発言でしてよ。」



冷静に棘の生えた返答をするあたり、さすがはリスティラの姉と言ったところでしょうか。このお姉様、見た目は女神様のようなのですが、意外にも毒舌でツッコミ体質なんです。まぁ、妹たちに対して、過剰なまでの愛を注ぐ兄と、何でも人並みの倍以上にできるのに、それを表に出さないようにしているつもりで、意外とポロポロとボロを出している、ちょっぴりおっちょこちょいな妹に挟まれていれば、必然的にストパー役になってしまったと言うべきでしょうか。まぁ、何かあった時には真っ先にリスティラの味方をするのですから、こちらも大概、シスコンなのではありますが。



「アテネっ‼ひどいよ!!兄様をいじめるだなんて!!さっき、リスティに胸に突き刺さる言葉をプレゼントされたのが、ようやく回復して、傷痕を見て微笑めるようになったのに!!アテネまで僕のガラスのハートに刃を突き立てるのかい!?」


「傷痕を見て微笑むって・・・、アルフィ兄様、やっぱり変態だったんですのね。その上、どM!?ガラスのハートって、もっと壊れ易くって、修復の難しいものではないんですの?あぁ、もしかしてバラバラになったカケラを集めて、接着剤で貼り付けるのではなくって、一旦溶かしてから元の形に作り直すのかしら。その方が幾分、早い気はいたしますけれど、体の中に高い能力をもったガラス職人さんが必要ですわね〜。はぁ、それにしても、アルフィ兄様にマトモなお嫁さんが来る日は来るのかしら・・・。」



あぁ、今日のアテネも、素晴らしい切れ味の毒舌ですね。



「ねぇ、アテネ。そんな恐ろしいことをサラッと言うのは止めてくれるかい。あまりのことに、兄様は灰になって吹き飛びそうだよ・・・。」



ガラスのハートの大部分にヒビが入った様子のお兄様。ガチで崩れる5秒前。



「あら、失礼。心の声がポロポロと。そんなに気をお落としにならないで、アルフィ兄様。きっと、アルフィ兄様を貰ってくれる奇特なご令嬢が、世界のどこかにはいらっしゃいますわよ。」


「アテネ、僕は灰どころか、煙になって飛んでいってしまいそうだよ・・・。」



崩れるどころか煙レベルに粉砕されてしまいました。



「まぁ、冗談はさて置き。」


「冗談だったの!?」


「うるさいですわ、アルフィ兄様。8割本気でしてよ。」


「そんな!ひどい!!僕を弄んだんだね!!」



アルフィル、あなたは彼氏に二股かけられた彼女ですか?



「はぁ。ちょっと黙っててくださらない?話が先に進みませんわ。」


「はい・・・」



捨てられた仔犬のようにしょんぼりしているアルフィル。アテネは気にもしておりませんが。



「リスティが天才か、というお話でしょう?まぁ、確かに天才という部類に入るでしょうねぇ。というか、アルフィ兄様、今頃お気づきになったの?愛は盲目ってことかしら。サングラスでもおかけになった方がよろしいんじゃありません?そうすれば、太陽光線並に眩し過ぎる愛も、見られるものになるかもしれませんし。」


「ねぇ、アテネ。僕、何か君を怒らせるようなことしたかな・・・?」



恐る恐るお伺いを立てるアルフィル。もはや、どちらが年上かわかりません。



「あら、これがデフォルトでしょう?というか、アルフィ兄様。黙っててって言ったじゃありませんか。良いって言うまで口を開かないでくださいませ。でないと私、すぐに出ていきますわよ。」


「はい・・・。」



アルフィルは、しゅん、としぼんだ風船のようにおとなしくなりました。アテネはそれを見て、満足そうに微笑んでから話し始めました。



「よろしいですわ。リスティは、まぁ、身内の欲目なしでも天才といえますわね。本人は知られると面倒だと思っているようで、隠しているつもりみたいですけれど、たまに自分の欲望に勝てなくなった時にポロっと、地が見えてしまっているので、長く側にいる者には知られてしまっているようですわ。本人は過剰に騒がれたくないみたいですし、何だか人生を精一杯楽しく生きることをモットーにしていると、この間庭に向かって叫んでおりましたから、あの子が気に病まないように、周りも知っていることは黙っておりますけれど。」


「・・・・・・。」



神妙な顔で、沈黙を守っているアルフィル。もはや犬そのものですね。

アテネが飼い主・・・。なかなかに笑えない構図が完成している気がします。



「アルフィ兄様、もうしゃべってもよろしいですわよ。」


「ねぇ、アテネ。もしかして、身内でこのこと知らなかったのって、僕だけ?」


「まぁ知っているのは、父様と母様と私と執事のロレンツォ、メイド頭のケイティとリスティの侍女のエレナくらいですわよ。あぁ、あとお祖父様もご存知かもしれませんわね。あの方、びっくりするくらいの千里眼ですもの。」


「やっぱりそうなんだ・・・。大丈夫だよ、アテネ。慰めはいらない!!僕は今、この孤独感を味わっているんだ!!」



と、勝手に盛り上がっているアルフィル。アテネはもはや、呆れ顔です。



「あら、そう。まぁ、それは勝手ですけれど、一人芝居は他所で演ってくださいな。でも、アルフィ兄様、今までお気づきにならなかったのに、今さらどうしてお気づきになったのですか?」


「あぁ、それはね、僕のいない間は僕の部屋に自由に入って構わないとリスティには言っておいたんだよね。そしたら、昨日、たまたま学院時代の数学の教科書が机の上に置きっ放しになっていてさぁ、ちょっとパラパラめくってみたら、教科書の中でも研究って書いてある、学院の生徒でもよっぽどじゃないと解くのが難しいと言われる問題があっさり解かれてたんだよね。もちろん僕が解いたわけじゃないし、明らかに筆跡がリスティのものだったからさぁ、もしかして、と思って、ちょっと今までのことを振り返ってみたんだよ。そしたら、何か今までにもこんなことあったなぁって思ってさ。やっぱり、リスティは天才なのかなって。だから、少なくとも僕よりは長くリスティの側にいるアテネに確認してみようと思って。やっぱりそうなのか。いや〜納得、納得。」


「あぁ、あの子が一番ボロを出しやすいのが数学に関係するものですからね。何だか好きみたいですのよ。難しい問題を解くのが。解けたときにちょうど居合わせたことがあるんですけれど、リスティを見るアルフィ兄様のような顔をしておりましたわよ。血のつながりって怖いですわねぇ。」


「アテネ、もう僕をいじめないでくれるかい・・・。」


「うふふふふ。あと、他にも結構いろんなところでボロを出していますわよ。例えば、書庫から持ち出した、上級魔術の本を読みふけっているかと思えば、その中の魔法を使ってみていたり、世界史やら科学史やら魔法史やらの専門書を読みながら頷いていたり、とか。あぁ、あと、あれは凄かったですわねぇ。この国からずっと離れた東国の “琴” という楽器を持った商人が我が家にきた時、一度も触ったことがないはずなのに、楽譜を見ただけでサラッと弾きこなしてしまったんですの。あれには、側にいた皆唖然としてしまいましたわ。流石のリスティもマズイと思ったみたいで、そそくさと自室に引っ込んでしまいましたけれど。」


「へぇ。確か、 “琴” って家で買い取ったんだろう?ぜひ、今度聞かせてもらおう。それにしても、リスティは、流石僕の妹!!あぁ、早く帰ってこないかなぁ・・・。」


「そこで、どうしてアルフィ兄様が出てくるのだか、私にはさっぱりわかりませんけれどね・・・。」






そんなこんなで、隠しているつもりなのに、何だかいろいろバレてしまっているリスティラ。今生を精一杯楽しく生きているせいか、少々詰めが甘くなっている様子です。

まぁ、精神年齢はともかく、一応見た目は15歳。少し詰めが甘いくらいの方が人間味があってちょうどいいんじゃないでしょうか。






こうして、なんだかんだ仲の良い兄妹たちのの午後は過ぎて行ったのでした・・・。






なんか、アテネのキャラが・・・。

ブラックな女神様!?そんなのいるんですかね・・・f^_^;)

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