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燈崎琴莉の革命日記  作者: 倉石 雨


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5/9

5.伊藤高校とかいう誇れない母校。

ところで、絶賛生徒として教育を受けている高校を母校と呼ぶことってできるんでしょうか。

私は呼べると勝手に思ってるんですけど。

伊藤高校とかいう誇れない母校。

私は今、そこの校舎三階教室の窓側席でのんびり外を眺めながら身体を休めている。

いわゆる"主人公席"らしいけど私は一度も自分を主人公なんて思ったことは無いし、よくある「テロリストに占拠されたら〜」なんて妄想もしない。

起こったらその時はその時ってだけ。

「燈崎〜答えられそうか〜」

ぼーっとしてたら先生に当てられてしまった。

チラリと先生の方を向いて、そしてその後ろにある黒板を見る。今はユーラシア史の時間で、1933年ドイツで政権を奪い取った政党の名前について復習しているようだった。

「…国家社会主義ドイツ労働者党じゃないですかね」

「おっ流石、燈崎。まともに答えられたのはお前くらいだぞ」

こんな長くて面倒な名前を覚えるとか普通しないよね。略称とかないのかな。まぁ私は小学生の頃の先生が歴史に異常な執着を示してたから、そのせいで覚えてたけど。

それにしてもこの政党が掲げてる旗、日本国旗に似てるというか…赤と白が反転しただけじゃん。挨拶もダサいし。この指導者のチャップリンとかいう人もなんだか喜劇家みたいな雰囲気で変。


…寝てしまっていたようでいつの間にか歴史の授業は終わっていた。

そういえばお昼ご飯の弁当作るの忘れてきたんだった。

購買やってるかな。並ぶの面倒。

「ねぇ琴莉ー!やっと起きた?」

声の主にちらっと目を向ける。そこには寧々がいた。

「購買一緒に行く?」

私が弁当を取り出す気配がないのを察してか、そう寧々は声をかけてくる。

「うん」

寝起きであんまり声が出ないから、寧々からそう言ってくれて少し助かった。


彼女は学校一頭が良い。この間なんか模試で全国何位〜みたいなのを自慢されたくらいには。

私は二番目くらい。そのせいか自然とあちらから声をかけてくるようになった。

まぁ、話が合うので全然良いのだけど。

頭が良すぎるのも考えもので、彼女はなんでもズバズバ言う性格も相まって周りから煙たがられていた。なのである意味、私は『寧々係』である。


私は購買で180円の焼きそばパンと100円のコーヒーを買った。

寧々は真似てか同じ焼きそばパンと、ココアを買った。

「また夜更かししてたの?」

「ちょっとジムに」

「いつもそうじゃん」

「そう言う寧々は?」

「ちゃんと10時に寝たもん」

「そう。じゃあいつも通りなら睡眠時間7時間くらい?」

「8時間とは言わずとも、7時間は寝ないと頭回らないからね!そういえば、新しい小説書いたんだけど読む?」

「うん。感想は明日で良い?」

「大丈夫だよ〜そんな長くないから放課後までに読み切れるはず」

「じゃあ頑張ってみる」


寧々がバッグから嬉しそうに取り出した本は360ページ近くあった。

…ちょっとキツくない?

「これなんだけど〜」

渡された小説のタイトルは『倉石雨の日記』だった。


内容はすごくリアルなもので、現代日本に近い『GDP世界二位』の時代が昔に終わり、失われた30年なる衰退期である独立国日本に住む高校生が、日常を日記形式で書くと言ったものだった。

特に途中で書かれる歴史の授業パートはサラッとしつつも分かりやすく歩んだ歴史について書かれており、その世界ではユーラシア連邦なんて言葉は一言も出てこない。


面白いディストピア小説だと思った。

他のディストピア小説なんかよりずっとリアルで、みんな政治なんかに無関心ってところがちゃんと映し出されてるし。

補足:日本共和国はユーラシア連邦の構成国。単独にしてGDP世界二位で、アメリカを単独で追い抜けそうになってる設定です。遅めの高度経済成長。

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