第12話:世界樹の開花——灰が花びらに
光が、世界を包んだ。
王都の地下から、巨大な光の柱が空に伸びていく。
その光は、雲を突き抜け、空を覆い——
そして、世界中に広がっていった。
『プロジェクト・スプリング:発動完了』
『世界樹:完全再生』
『マナ循環:正常化』
『灰の浄化:開始中……』
俺は、地上に出た。
そして——目を疑った。
灰が——消えていく。
空から降る灰が、一つ一つ——花びらに変わっていく。
白い花びら。ピンクの花びら。淡い紫の花びら。
まるで、桜吹雪のように——世界中に舞い散っていく。
「すごい……」
エルが、空を見上げた。
彼女の頬を、涙が伝っている。
「灰が……花びらに……」
「これが——『プロジェクト・スプリング』の結果だ」
俺は、マナ・レジャーを見た。
『世界滅亡までのカウントダウン:00年000日 00:00:00 → 算出不能(危機回避)』
『世界のマナ残量:0.003% → 100.000% (SURPLUS)』
『灰の浄化率:1%... 10%... 30%... 50%...』
100.000%——SURPLUS。
世界の家計簿が、黒字になった。
「やった……」
エルが、俺に抱きついた。
「カイさん、やりました……! 世界が、救われた……!」
「ああ……」
俺は、エルの頭を撫でた。
「よくやった、エル」
「私じゃないです……カイさんが、みんなが……」
「みんなの力だ。俺一人じゃ、ここまで来れなかった」
ベルが、俺の隣に立った。
大人の姿のまま。
「カイ」
「何だ」
「約束、守ってくれたね」
ベルが、微笑んだ。
900年分の孤独が、溶けていくような——柔らかい笑顔。
「ありがとう」
「……ああ」
俺は、ベルを抱きしめた。
「待たせて、すまなかった」
「ううん。待ってて、よかった」
花びらが、俺たちの周りを舞っている。
灰色だった世界が——色彩に満ちていく。
空が、青くなっていく。
草が、芽吹いていく。
花が、咲いていく。
これが——春だ。
900年ぶりの、本物の春。




