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残りマナ0.003%、世界の家計簿を黒字化します~追放された元監査官の最適化無双~  作者: 青柳 玲夜(れーやん)
第四章:再監査の時

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最終話:エピローグ——春の草原で

 あれから、一年が経った。


 世界は、生まれ変わっていた。


 空には、雲が浮かんでいる。白い、綺麗な雲だ。


 灰は、もう降っていない。


 代わりに、たまに雨が降る。温かい、優しい雨だ。


 大地には、緑が戻っていた。


 草原が広がり、花が咲き乱れている。


 森には、鳥のさえずりが響いている。


 川には、魚が泳いでいる。


 世界が——生きている。



    *



 俺は、監査官の制服を脱いだ。


 もう、着る必要がない。


 世界の家計簿は、黒字になった。


 俺の仕事は、終わった。


 今、俺は——草原の中に立っている。


 リナが、見たかった景色だ。


 12年前に死んだ、俺の妹。


 たった500MPで救えた命。


 彼女は、この景色を——見ることができなかった。


「リナ」


 俺は、空に向かって呟いた。


「見えているか。これが、春だ」


 風が、頬を撫でた。


 温かい、優しい風。


 まるで、リナが——俺に触れているような。



「カイ」


 声がした。


 振り返ると、ベルが立っていた。


 幼女の姿。


 封印が安定して、元の姿に戻っていた。


「何してるの?」


「……妹に、報告していた」


「リナさんに?」


「ああ」


 ベルが、俺の隣に立った。


「リナさん、喜んでるかな」


「分からん。だが——」


 俺は、空を見上げた。


「怒ってはいないと思う」


「そっか」


 ベルが、俺の手を握った。


「ねえ、カイ」


「何だ」


「私、まだ——カイのこと、好きだよ」


「……」


「900年前から、ずっと」


 俺は、ベルを見た。


 幼女の姿。だが、その奥には——大人のベルがいる。


 俺と約束を交わした、美しい女性。


「ベル」


「何?」


「俺も——お前のことが、大事だ」


 ベルの目が、輝いた。


「本当……?」


「ああ。900年前の約束を、俺は——覚えている」


 ベルが、俺に抱きついた。


「嬉しい……」


「……ああ」


 俺は、ベルの頭を撫でた。


 小さな体。冷たい肌。だが、その温もりは——確かにそこにある。



    *



「カイさーん! ベルちゃーん!」


 声が聞こえた。


 エルが、丘の向こうから走ってくる。


 彼女の後ろには、クラリスがいる。


「お昼ご飯、できましたよー!」


「今日は、私が作った」


 クラリスが、少し照れくさそうに言った。


「……味は保証しないが」


「大丈夫です、クラリスさん! 私が味見しましたから!」


 エルが、にこにこと笑っている。


 彼女の髪には、花が飾られていた。


 野に咲く、小さな花。


「行こう、カイ」


 ベルが、俺の手を引っ張った。


「お腹、空いたよ」


「……ああ」


 俺は、歩き始めた。


 草原の中を。


 花の香りに包まれながら。


 温かい風に吹かれながら。


 仲間たちと一緒に。



    *



 これが、俺の物語だ。


 追放された元監査官が、世界の家計簿を黒字化するまでの。


 0.003%から始まった、逆転の物語。


 俺は——数字しか見ていなかった。


 だが、旅の中で——数字の向こう側にあるものを、見つけた。


 人の心。


 想い。


 祈り。


 約束。


 それらは、「無駄」じゃなかった。


 世界を救うための、最大の資源だった。


 師匠が教えてくれた。


 ベルが教えてくれた。


 エルが教えてくれた。


 クラリスが教えてくれた。


 そして——リナが、ずっと前から教えてくれていた。


 大切なのは、数字だけじゃない。


 数字の向こう側にある、命の輝きだ。


 俺は、それを——忘れない。


 これからも、ずっと。



    *



『世界のマナ残量:100.000% (SURPLUS)』

『成功確率:100%(達成)』

『監査官カイ・ヴェルナーの最終報告:

 世界の家計簿は、黒字化されました。

 すべての命が、救われました。

 ありがとうございました。

 ——報告終了』

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