第10話:オズワルドとの決着
マナ転送が80%に達した時——
地下空間に、新たな気配が現れた。
オズワルド・グラナート。
白銀の鎧。大剣。そして——900年分の執念を宿した目。
「来たか、オズワルド」
俺は、振り返った。
「来た」
オズワルドが、剣を構えた。
「約束通り、決着をつけに来た」
「待ってくれ、オズワルド。今、手を離すわけには——」
「分かっている」
オズワルドが、微笑んだ。
それは——900年間、一度も見せなかった、穏やかな笑顔だった。
「俺は、お前を止めに来たんじゃない」
「……え?」
「見届けに来たんだ。お前の『計算』が、正しかったかどうかを」
オズワルドが、剣を降ろした。
「俺は、900年間——『選別』を続けてきた。弱い者を切り捨て、強い者だけを残す。それが、世界を守る唯一の方法だと信じて」
「……」
「だが、お前は違う方法を選んだ。誰も切り捨てず、全員を救う方法を」
オズワルドが、俺を見つめた。
「俺は——お前の方法が、正しいことを願っている」
「オズワルド……」
「驚いたか? 俺も、驚いている」
オズワルドが、苦笑した。
「900年間、俺は——自分が正しいと信じていた。だが、ベルの言葉を聞いて——分かった」
「ベルの言葉……?」
「俺は、苦しかったんだ。世界を守りたかったのに、守れなかった。その悔しさを——誰かにぶつけるしかなかった」
オズワルドの目に、涙が浮かんでいた。
「レオンは、俺の弟だった。俺が一番——愛していた存在だった」
「……」
「だが俺は、彼を追放した。俺の計画を邪魔したから。俺の——弱さを、見透かされたから」
オズワルドが、俺の前に膝をついた。
「カイ・ヴェルナー。俺は——お前に、託す」
「託す……?」
「世界を。レオンの想いを。俺の——900年分の願いを」
俺は——オズワルドの手を取った。
「分かった。必ず、成功させる」
「ああ。頼んだぞ」
オズワルドが、立ち上がった。
彼の顔には——900年間で初めての、安らぎがあった。




