第8話:プロジェクト・スプリング——再監査の開始
俺は、マナ・レジャーを全開にした。
900年分のデータが、俺の視界を埋め尽くす。
数字の洪水。
生まれた命。消えた命。使われたマナ。生み出された灰。
すべてが、俺の目の前を流れていく。
『歴史の再監査:実行中……』
『対象期間:912年前〜現在』
『総レコード数:800兆件』
『処理速度:1秒あたり10億件』
「すごい……」
エルが、俺の横で呟いた。
彼女の体から、緑色の光が放たれている。
世界樹との接続が、確立されつつある。
「エル、世界樹と繋がれ」
「はい……」
エルが、目を閉じた。
彼女の体が、光に包まれていく。
『エル・アルシェラ:世界樹との同期率 10%... 30%... 50%...』
「繋がってる……世界樹の声が、聞こえる……」
「声……?」
「うん……世界樹が、言ってる……『助けて』って……」
俺は、データの分析を続けた。
900年分の「無駄」を、洗い出していく。
『検出された「無駄」の内訳:
・母親が子供のために祈った回数:812億回(消費MP換算:200億)
・恋人同士が交わした約束:340億回(消費MP換算:150億)
・老人が孫のために流した涙:95億回(消費MP換算:80億)
・死にゆく者が遺した最後の言葉:42億回(消費MP換算:100億)
・その他の感情由来消費:270億MP
・合計:800億MP相当』
800億MP。
途方もない量だ。
だが——これらはすべて、「無駄」として切り捨てられていた。
俺の前世が、「効率化」の名の下に。
「違う……」
俺は、呟いた。
「これは、無駄じゃない」
『再定義中……』
『「無駄」→「投資」に変換……』
『世界樹への供給可能マナ:+800億MP』
「エル、これを世界樹に送れ」
「はい……!」
エルの体から、巨大な光の柱が立ち上った。
その光が、天井を突き抜け、空へと伸びていく。
『世界樹との同期率:70%... 90%... 100%(完全同期)』
『マナ転送開始……』
『転送量:1秒あたり1億MP』
世界が、震え始めた。




