第6話:王都の心臓——最後の欠片
オズワルドが去った後、俺たちは王都の中心部に向かった。
王宮の地下。
そこに、最後の欠片がある。
『王宮地下「根源の間」』
『深度:地下200m』
『周辺マナ濃度:10.5MP/㎥(通常値の525%)——極めて高い』
『備考:世界樹の根の中心部——世界のマナ循環の起点』
「ここが……世界の中心……」
エルが、息を呑んだ。
地下の空間は、巨大だった。
天井は見えないほど高く、壁には世界樹の根が這っている。
そして——その中心に。
七色に輝く結晶が、浮かんでいた。
『検出:世界樹の欠片(第七片)「調和の欠片」』
『マナ含有量:150,000,000MP』
『特殊能力:すべての欠片を統合し、世界樹を再生する』
『状態:休眠中——他の6つの欠片が揃えば活性化』
「最後の欠片……」
俺は、結晶に手を伸ばした。
触れた瞬間——
俺の懐にある6つの欠片が、光を放ち始めた。
それぞれの光が、中央の結晶に吸い込まれていく。
『世界樹の欠片:7/7個 統合完了』
『総マナ量:620,000,000MP』
『世界滅亡までの猶予:655日 → 1,200日以上(暫定)』
『成功確率:12.8%』
「12.8%……」
エルが、涙を流した。
「10%を超えた……」
「ああ。だが、まだ終わりじゃない」
俺は、統合された欠片を見つめた。
「世界樹を再生させるには——もう一つ、必要なものがある」
「もう一つ……?」
「『心』だ」
俺は、自分の胸に手を当てた。
「世界樹は、マナだけでは動かない。人々の想い——祈り、感謝、喜び——それが、世界樹の『心』を支えている」
「でも、どうやって……」
「方法は、ある」
俺は、マナ・レジャーを起動した。
「俺の瞳は、900年分のデータを持っている」
「900年分……?」
「ああ。過去900年間、世界中で流された涙。捧げられた祈り。交わされた約束。すべてが、ここに記録されている」
俺は、データを展開した。
『歴史の再監査:準備完了』
『対象データ:912年分のマナ収支記録』
『検出された「無駄」:感情由来のマナ消費 推定800億MP相当』
『備考:これらは「無駄」として計上されていたが、実際には世界樹の心を支える「必要経費」だった』
「800億MP……」
エルが、目を見開いた。
「そんなに……」
「ああ。俺の前世は、これを『無駄』として切り捨てた。だから、世界樹の心が死にかけた」
俺は、結晶を握りしめた。
「今度は——この『無駄』を、『投資』として再定義する」
「投資……?」
「そうだ。人々の想いは、無駄じゃない。世界を救うための、最大の資源だ」




