第5話:王都潜入——オズワルドの罠
王都エルディア。
俺が追放された街。
今、俺は——その街に、戻ってきた。
『現在位置:王都エルディア』
『警戒レベル:最高——カイ・ヴェルナーの指名手配中』
『聖騎士団の配置:500名以上』
『備考:オズワルドが直接指揮している』
「カイさん、どうやって入るんですか……?」
エルが、不安そうに俺を見た。
「正面から行く」
「正面から……!?」
「隠れても無駄だ。オズワルドは、俺たちが来ることを知っている」
俺は、王都の門を見た。
「堂々と行く。それが、一番早い」
「でも……」
「大丈夫だ」
クラリスが、前に出た。
「私が、道を開く」
「クラリス……」
「私は、まだ聖騎士団の制服を着ている。離脱したことは、まだ知られていないはずだ」
クラリスが、微笑んだ。
「門番を騙して、お前たちを中に入れる」
「……すまない」
「謝るな。これは、私の選択だ」
*
クラリスの作戦は、成功した。
俺たちは、王都の中に入ることができた。
だが——
「待っていたぞ、カイ・ヴェルナー」
声がした。
俺たちの前に、聖騎士団が立ちはだかった。
その先頭に——オズワルドが立っていた。
「お前が来ることは、分かっていた」
「オズワルド……」
「クラリスが裏切ったことも、な」
オズワルドの目が、クラリスに向けられた。
「師匠……」
「失望したぞ、クラリス。お前は、俺の最高の弟子だったのに」
「師匠。私は——」
「言い訳は聞かない」
オズワルドが、大剣を構えた。
「裏切り者には、死を」
「待て、オズワルド」
俺は、前に出た。
「クラリスは、お前を裏切ったんじゃない。自分の正義を選んだだけだ」
「正義? 笑わせるな」
オズワルドの目が、冷たく光った。
「この世界に、正義など存在しない。あるのは、力だけだ」
「力……」
「強い者が生き残り、弱い者が死ぬ。それが、自然の摂理だ」
「お前は——900年前から、ずっとそう思っていたのか」
オズワルドが、一瞬だけ——動きを止めた。
「……お前、何を知っている」
「すべてだ」
俺は、オズワルドを真っ直ぐに見た。
「お前は、900年前——世界が滅びかけた時、何もできなかった。だから——『選別』という歪んだ正義にすがった」
「黙れ……」
「お前は、弱い者を切り捨てることで——自分の無力感を埋めようとしていた」
「黙れ……!」
オズワルドが、剣を振り上げた。
「お前に、俺の何が分かる……!」
その瞬間——
ベルが、俺とオズワルドの間に立った。
「オズワルド」
ベルの声が、静かに響いた。
「久しぶりだね」
「……ベルフェゴール」
「900年ぶり、かな」
ベルが、オズワルドを見上げた。
「あなた、あの時——私に言ったよね」
「何を……」
「『お前のせいで、世界が滅びかけた』って」
オズワルドの顔が、歪んだ。
「……覚えている」
「私、ずっと——その言葉を、背負ってきた」
ベルの目に、涙が浮かんだ。
「でもね、今は分かる。あなたも——苦しかったんだよね」
「……」
「世界を守りたかったのに、守れなかった。その悔しさを——誰かにぶつけるしかなかった」
オズワルドが、剣を降ろした。
「……お前は、俺を許すのか」
「許すとか、許さないとかじゃない」
ベルが、微笑んだ。
「私は——あなたを、理解したかっただけ」
沈黙が、流れた。
オズワルドは、しばらくベルを見つめていた。
そして——
「……いいだろう」
彼が、剣を収めた。
「今日は、見逃す。だが——」
「だが?」
「次に会う時は、決着をつける。お前の『計算』が正しいか、俺の『選別』が正しいか」
「分かった」
俺は、頷いた。
「最後の欠片を手に入れたら——お前に、証明する」
オズワルドが、背を向けた。
「楽しみにしている」
彼は、聖騎士団を率いて去っていった。




