第4話:空中庭園——第六の欠片
王都の上空。
雲の上に、古代の庭園が浮かんでいた。
空中庭園「セレスティア」。
かつては貴族の社交場だったが、今は誰も近づかない禁域。
『空中庭園「セレスティア」』
『建造年代:推定800年前』
『高度:地上から約3,000m』
『周辺マナ濃度:5.2MP/㎥(通常値の260%)——極めて高い』
『備考:強力な防衛機構あり——侵入者を排除する自動砲台』
「どうやって上がるんですか……?」
エルが、空を見上げた。
「飛行魔法で行けるか?」
「行ける。だが、防衛機構が問題だ」
俺は、マナ・レジャーで庭園をスキャンした。
『自動砲台 × 24基』
『各砲台の出力:5,000MP/発』
『反応時間:0.3秒』
『回避難易度:A+』
「24基の砲台か……」
「カイ、私が盾になるよ」
ベルが、前に出た。
「私の体なら、あの程度の攻撃は耐えられる」
「いや、それは——」
「大丈夫。私、しぶといから」
ベルが、にっこりと笑った。
900年を生きた魔王の、自信に満ちた笑顔。
「……分かった。頼むぞ、ベル」
「任せて」
俺たちは、飛行魔法で空中庭園へと向かった。
*
砲台が、俺たちを検知した。
24の砲口が、一斉にこちらを向く。
「来るよ」
ベルが、俺たちの前に立った。
「《ダーク・シールド》」
『消費MP:測定不能』
『効果:闘属性の絶対防御壁を展開』
『効率:99.99%』
『灰排出:0kg』
黒い壁が、俺たちの前に現れた。
砲台からの攻撃が、次々と壁に当たる。
だが——壁は、びくともしなかった。
「すごい……」
エルが、目を見開いた。
「ベルちゃん、すごい……」
「えへへ。まだまだだよ」
俺たちは、ベルの盾に守られながら、空中庭園に着陸した。
*
庭園の中は、静かだった。
かつては美しい花が咲いていたのだろう。
だが今は、すべてが灰に覆われている。
枯れた木。朽ちた東屋。崩れかけた噴水。
「悲しい場所だね……」
エルが、呟いた。
「昔は、きっと綺麗だったのに……」
「ああ。だが——」
俺は、庭園の中心を指差した。
「あそこに、欠片がある」
庭園の中心に、古い祭壇があった。
その上に——淡い白色の結晶が浮かんでいる。
『検出:世界樹の欠片(第六片)「浄化の欠片」』
『マナ含有量:100,000,000MP』
『特殊能力:灰を分解し、マナに還元する』
『状態:活性化中』
「第六の欠片……」
俺は、結晶に手を伸ばした。
触れた瞬間——
周囲の灰が、風に舞い始めた。
そして——消えていく。
灰が、目の前で——マナに変わっていく。
「すごい……」
エルが、息を呑んだ。
「灰が、消えてる……」
「これが、『浄化の欠片』の力だ」
俺は、結晶を手に取った。
『世界樹の欠片を入手しました』
『世界のマナ残量に加算:+100,000,000MP』
『滅亡までの猶予:582日 → 655日(+73日)』
「73日……」
エルが、涙ぐんだ。
「世界が、どんどん延びてる……」
「ああ。残りは、あと1つだ」
俺は、王都の方角を見た。
「最後の欠片は——王都の心臓部にある」




