第3話:クラリスの決断——師匠との決別
森林遺跡を出て、王都への道を進んでいた時だった。
前方に、見覚えのある姿が現れた。
白銀の鎧。金色の短い髪。鋭い青い瞳。
クラリス・フォン・アルトハイム。
聖騎士団第三部隊隊長。
俺の——元婚約者。
「久しぶりだな、カイ」
クラリスが、俺に近づいてきた。
「また会ったな」
「……ああ」
俺は、警戒しながらクラリスを見た。
「今度は、逮捕しに来たのか?」
「違う」
クラリスが、首を振った。
「話がある」
「話……?」
クラリスが、深呼吸した。
そして——
「私は、聖騎士団を離脱する」
俺は、目を見開いた。
「離脱……?」
「ああ。オズワルド師匠の命令には、もう従わない」
「なぜ……」
「この数週間、私はずっと考えていた」
クラリスが、空を見上げた。
「オズワルド師匠は、『選別』を行っている。弱い者を切り捨て、強い者だけを残す。それが、世界を救う唯一の方法だと」
「……」
「だが、私は——それに従えない」
クラリスの目に、強い光が宿った。
「私は、聖騎士になった時、誓った。『すべての民を守る』と」
「……」
「弱い者を切り捨てることは——その誓いに反する」
クラリスが、俺を真っ直ぐに見た。
「だから、私は——お前の側に付く」
「俺の側に……」
「お前は、世界を救おうとしている。一人も殺さずに。その方法が——正しいかどうかは、分からない」
クラリスが、微笑んだ。
「だが、私は——信じたい。お前の計算を」
俺は——しばらく、何も言えなかった。
5年前、婚約を破棄した時。
彼女は、俺に言った。
『お前は、数字しか見ていない。人の心が、見えていない』
今、俺は——変わったのだろうか。
彼女が、俺を信じてくれるほどに。
「……ありがとう、クラリス」
「礼は要らない。私は、自分の正義を選んだだけだ」
クラリスが、剣を抜いた。
「さあ、行くぞ。空中庭園へ」




