エピローグ:春への道
海底遺跡から脱出した俺たちは、地上に戻った。
灰が、降っている。
だが——俺の目には、その灰が——少しだけ、薄くなって見えた。
『世界滅亡まで:00年461日 → 00年520日(+59日)』
『世界樹の欠片:4/7個 回収済み』
『成功確率:1.7%』
1.7%。
初めて、1%を超えた。
「カイさん」
エルが、俺の隣に立った。
「次は、どこに行きますか?」
「北西の森林遺跡だ。そこに、第五の欠片がある」
「北西……」
「遠いぞ。2週間はかかる」
「大丈夫です」
エルが、微笑んだ。
「カイさんと一緒なら、どこへでも行けます」
「……ありがとう」
ベルが、俺の手を握った。
「カイ」
「何だ」
「私、嬉しい」
「何が」
「カイが、思い出してくれたこと。私のこと、忘れてなかったこと」
俺は、ベルを見た。
幼女の姿。
だが、その奥には——大人のベルがいる。
900年前に、俺と約束を交わした、美しい女性。
「ベル。俺は、お前を——必ず救う」
「……うん」
「お前が封印から解放されて、本当の姿に戻れる日を——必ず、作る」
「……ありがとう、カイ」
ベルが、俺に抱きついた。
小さな体。冷たい肌。
だが、その温もりは——900年前と、同じだった。
「大好きだよ、カイ」
「……ああ」
俺は、空を見上げた。
灰が、降っている。
だが、その向こうに——青い空が見えた気がした。
春は、まだ遠い。
だが——確実に、近づいている。
俺は、必ず——この灰色の世界に、春を取り戻す。
ベルのために。
師匠のために。
リナのために。
そして——この世界に生きる、すべての命のために。




