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残りマナ0.003%、世界の家計簿を黒字化します~追放された元監査官の最適化無双~  作者: 青柳 玲夜(れーやん)
第三章:忘却の聖戦

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第7話:帰還——真実を胸に

 目を開けた時、俺は——海底遺跡の中にいた。


 現代に、戻ってきた。



『時間軸:現在』

『場所:海底遺跡「アビサル・アーカイブ」』

『世界滅亡まで:00年461日 14:58:32』



「カイさん……!」


 エルが、俺に駆け寄った。


「大丈夫ですか……!?」


「ああ……大丈夫だ……」


 俺は、ゆっくりと立ち上がった。


 体が重い。


 だが、心は——軽くなっていた。


 すべてが、分かった。


 俺が何者なのか。


 世界がなぜ滅びかけているのか。


 ベルが、なぜ俺を待っていたのか。


 すべて。



「ベル」


 俺は、幼女の姿のベルを見た。


「……カイ」


 ベルの目に、涙が浮かんでいた。


「思い出した……?」


「ああ」


 俺は、ベルを抱きしめた。


「すまなかった。900年も——待たせて」


「……ううん」


 ベルが、俺の胸に顔を埋めた。


「待ってて、よかった」


 小さな体が、震えている。


 900年分の孤独が、溢れ出している。


「もう、離さない」


「……うん」


「必ず、お前を救う。世界と一緒に」


「……ありがとう、カイ」


 俺たちは、しばらくそのままでいた。



    *



「感動的な再会だな」


 オズワルドの声が、ドームに響いた。


 俺は、ベルを離し、オズワルドを見た。


「オズワルド。お前も、すべてを知っていたのか」


「当然だ。俺は、900年間——見ていた」


 オズワルドの目が、冷たく光った。


「レオンが死んだ時も。世界が滅びかけた時も。お前が転生した時も」


「なぜ、何もしなかった」


「何もしていない? 俺は、ずっと——世界を守ってきた」


 オズワルドが、一歩前に出た。


「俺は、『選別』を行ってきた。弱い者を切り捨て、強い者だけを残す。それが、世界を守る唯一の方法だ」


「選別……」


「貴族は生き残り、庶民は死ぬ。それが、自然の摂理だ」


 俺は、オズワルドを見つめた。


 彼の目には——狂気があった。


 900年間、一人で世界を守り続けた男の、歪んだ正義。



「オズワルド。お前は——間違っている」


「間違っている?」


「世界を救うために、人を殺す。それは、救いじゃない」


「ならば、お前はどうする? 全員を救えるとでも思っているのか?」


「思っている」


 俺は、「記録の欠片」を手に取った。


「俺は、世界の家計簿を黒字化する。一人も殺さずに」


「不可能だ」


「不可能じゃない。俺は、計算した」


 俺のマナ・レジャーが、新しい数字を表示した。



『世界救済計画:完全版』

『必要マナ:500,000,000MP』

『現在の確保量:310,000,000MP(欠片4個分 + レオンの結晶)』

『残り必要量:190,000,000MP』

『欠片残り:3個』

『推定総量:210,000,000MP以上』

『結論:達成可能』



「あと3つの欠片を集めれば——世界は救える」


「……ふん」


 オズワルドが、剣を構えた。


「お前の計算が、また間違っていたらどうする? 900年前のように」


「間違わない」


 俺は、オズワルドを真っ直ぐに見た。


「俺は、もう『数字だけ』を見ていない。人の心も——見ている」


「……」


「師匠が教えてくれた。ベルが教えてくれた。エルが教えてくれた」


 俺は、懐から師匠の結晶を取り出した。


「これが、師匠の命だ。52,000MP。だが——この結晶には、数字以上の意味がある」


「意味……?」


「師匠の願いだ。俺に託された、希望だ」


 俺は、結晶を握りしめた。


「俺は、その希望を——無駄にしない」


 オズワルドが、しばらく俺を見つめていた。


 そして——


「……いいだろう」


 彼が、剣を降ろした。


「お前の計画を、見届けてやる。だが——失敗したら、俺のやり方で世界を救う」


「お前のやり方は、必要ない」


「ならば、証明しろ。お前の『優しい数字』で、世界を救えることを」


 オズワルドが、背を向けた。


「次に会う時は——決着をつける」


 彼は、ドームの奥に消えていった。

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