第2話:黄金時代——灰のない世界
目を開けた時、俺は——別の世界にいた。
空が、青い。
雲が、白い。
太陽が、眩しく輝いている。
そして——灰がない。
『時間軸:912年前』
『場所:王都エルディア(過去)』
『マナ濃度:12.5MP/㎥(現在の62倍)』
『気温:22℃(快適)』
『世界樹の状態:完全活性(緑色に輝いている)』
「これは……」
俺は、周囲を見回した。
王都エルディアだ。
だが、俺が知っている王都とは——まったく違う。
建物は白く輝き、空中には浮遊する庭園がある。
道行く人々は、魔法を当たり前のように使っている。
子供が空を飛び、老人が杖を振るだけで荷物を運ぶ。
街全体が、魔法で満ちている。
「美しい……」
エルが、呟いた。
彼女も、俺と同じようにこの「記録」の中にいるらしい。
「これが、900年前の世界……」
「そうだ」
オズワルドの声が、どこからか聞こえた。
「これが、『黄金時代』だ。マナに満ち、誰もが魔法を使い、誰もが幸せだった時代」
「幸せ……?」
俺は、マナ・レジャーを起動した。
数字が、表示される。
『街路照明:消費15,000MP/日(適正値の3,000倍)』
『浮遊庭園:消費200,000MP/日(完全な無駄)』
『一般家庭の平均消費:500MP/日(現在の500倍)』
『効率:平均2.3%』
『世界樹への負荷:持続可能限界の340%』
——340%。
持続可能な限界の、3倍以上。
この繁栄は——
「気づいたか」
オズワルドの声が、冷たく響いた。
「この『黄金時代』は、世界樹を殺すための緩やかな自殺だった」
「自殺……」
「人々は、マナを湯水のように使った。明日のことなど考えず、今日の快楽だけを追い求めた」
俺の視界に、新しい数字が表示された。
『世界滅亡までのカウントダウン(当時):00年487日 08:15:22』
487日。
今と、ほとんど変わらない。
「当時の人々は、気づいていなかったのか?」
「気づいていた者もいた」
オズワルドが、街の一角を指差した。
「あそこを見ろ」
俺は、その方向を見た。
白い建物がある。
その入り口に——見覚えのある紋章が刻まれていた。
マナ運用局の紋章。
「来い。お前に、見せたいものがある」




