第10話:包囲——レオンとの再会
灼熱遺跡から脱出した俺たちを、再び聖騎士団が待ち受けていた。
今度は、500人。
前回よりも、数が増えている。
「……しつこいな」
俺は、舌打ちした。
だが、今回は様子が違った。
騎士団の先頭に立っているのは、オズワルドではなかった。
代わりに——
「……師匠」
レオン・グラナートが、そこに立っていた。
「久しぶりだな、カイ」
彼の声は、いつもと変わらなかった。
だが、その目には——悲しみがあった。
「師匠、なぜここに」
「オズワルドの代理だ。奴は、別の任務に就いている」
「別の任務……?」
「お前を追い詰めるための、包囲網を敷いている。俺は、その一部だ」
レオンが、一歩前に出た。
「カイ。悪いが、お前をここで止めなければならない」
「……師匠は、オズワルドの側に付くのか」
「側に付くわけではない。だが——」
レオンが、目を閉じた。
「お前を逃がすためには、こうするしかなかった」
「逃がす……?」
俺は、レオンの言葉の意味が分からなかった。
だが、次の瞬間——
レオンが、懐から何かを取り出した。
古い、禁忌の魔法陣。
『検出:禁忌魔法(自己適用型)』
『効果:術者自身の魂をマナに変換』
『生成マナ:推定50,000MP以上』
『警告:この魔法は、術者の死を伴う』
「師匠……!」
俺は、叫んだ。
「何をするつもりだ……!」
「お前を、逃がす」
レオンが、微笑んだ。
「カイ。俺は、お前の師匠だ。お前が世界を救うのを、最後まで見届けたかった」
「だが、これでは——」
「俺は、もう老いた。あと数年の命だ。それなら——」
レオンが、魔法陣を発動させた。
「お前のために、使った方がいい」
「待て、師匠……!」
俺は、駆け出した。
だが、間に合わなかった。
レオンの体が、琥珀色の光に包まれ始めた。
『リソース:レオン・グラナート → 純粋マナへ変換中 10%... 20%... 30%...』
「師匠……!」
俺は、レオンの前に立った。
彼の体が、少しずつ透けていく。
「カイ」
レオンが、俺を見た。
「お前は、俺の最高の弟子だ」
「師匠……やめてくれ……」
「今度のお前は——」
レオンが、微笑んだ。
「——前よりもずっと、『優しい数字』を書くようになったね」
『変換率:80%... 90%...』
「師匠……!」
「世界を、救え。カイ」
『変換率:100%』
レオンの体が、完全に光に変わった。
そして——俺の手の中に、小さな結晶が残った。
『生成マナ:52,000MP(結晶化)』
師匠の、命の結晶。
「……師匠……」
俺は、その結晶を握りしめた。
温かい。
師匠の、最後の温もりが——そこにあった。
*
聖騎士団は、混乱していた。
指揮官のレオンが、突然消えたからだ。
俺は、その隙を突いた。
「エル、ベル、走れ!」
俺たちは、騎士団の包囲を突破し、逃げ出した。
後ろから、追跡の声が聞こえる。
だが、俺は振り返らなかった。
ただ、走り続けた。
師匠の結晶を、握りしめながら。




