第9話:灼熱遺跡——第三の欠片
洞窟で一夜を明かした後、俺たちは次の目的地に向かった。
南西の火山地帯。
そこに、第三の世界樹の欠片があるという。
『目的地:灼熱遺跡(南西火山地帯)』
『現在位置からの距離:推定600km』
『到着予定:5日後』
『世界滅亡まで:421日』
旅の途中、俺たちはいくつかの村を通過した。
どの村も、フローズン・ホロウと同じように荒廃していた。
灰に埋もれ、マナに飢え、人々は死にかけていた。
俺は、できる限りの最適化を施した。
だが、全ての村を救うことはできない。
時間が、足りない。
「カイさん……」
エルが、疲れた顔で俺を見た。
「私たち、本当に世界を救えるんでしょうか……」
「分からん」
「分からない……?」
「だが、やるしかない」
俺は、空を見上げた。
灰が、降っている。
「俺たちがやらなければ、誰もやらない。それだけだ」
「……はい」
エルが、小さく頷いた。
「私も、頑張ります」
*
灼熱遺跡は、活火山の中腹にあった。
周囲には、溶岩の川が流れている。
空気は熱く、呼吸するだけで喉が焼ける。
『灼熱遺跡:外気温 52℃』
『周辺マナ濃度:1.2MP/㎥(地熱による活性化)』
『危険度:A(熱射病、火山ガスに注意)』
「暑い……」
エルが、ふらふらになりながら歩いている。
「エル、冷却魔法を使え」
「は、はい……《クーリング》……」
『冷却魔法:消費0.5MP/時』
『効率:87%』
一週間前の彼女なら、同じ効果を得るのに5,000MPは使っていた。
成長は、確実に続いている。
「カイ、あそこだよ」
ベルが、洞窟の入り口を指差した。
溶岩に囲まれた、古い石造りの遺跡。
中から、オレンジ色の光が漏れている。
俺たちは、遺跡の中に入った。
*
遺跡の内部は、予想以上に涼しかった。
古代の冷却魔法が、まだ生きているらしい。
『検出:古代冷却魔法陣(自動稼働中)』
『消費:0.001MP/時(驚異的な効率)』
『備考:現代の技術では再現不可能』
「すごい……こんな魔法陣、見たことがない」
俺は、魔法陣を観察した。
シンプルで、無駄がない。
俺の最適化をはるかに超える、完璧な設計。
「これを作ったのは……誰だ……?」
答えは、遺跡の奥にあった。
*
遺跡の最深部。
そこには、巨大な魔法陣が描かれていた。
その中心に、オレンジ色に輝く結晶が浮かんでいる。
『検出:世界樹の欠片(第三片)』
『マナ含有量:70,000,000MP』
『状態:活性化中』
「第三の欠片……」
俺は、結晶に手を伸ばした。
触れた瞬間、熱さが全身に広がった。
だが、火傷はしない。
世界樹の、命の熱だ。
『世界樹の欠片を入手しました』
『世界のマナ残量に加算:+70,000,000MP』
『滅亡までの猶予:421日 → 472日(+51日)』
「51日……また、延びた」
俺は、欠片を収納空間にしまった。
これで、3つ目。
残りは、4つ。
「カイさん、次はどこに行きますか?」
「海底遺跡だ。東の海にある」
「海底……」
エルが、少し不安そうな顔をした。
「私、泳げないんですけど……」
「心配するな。方法はある」
俺たちは、遺跡を後にした。




