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残りマナ0.003%、世界の家計簿を黒字化します~追放された元監査官の最適化無双~  作者: 青柳 玲夜(れーやん)
第二章:氷と聖騎士編

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第8話:レオンの選択——家族の断絶

 転送先は、山奥の洞窟だった。


 周囲には、誰もいない。


 聖騎士団の追跡を、振り切ったらしい。



『現在位置:王都エルディアより東450km』

『標高:2,400m』

『周辺マナ濃度:0.5MP/㎥』

『最寄りの集落まで:推定80km』



「助かった……」


 エルが、へたり込んだ。


「カイさん、あの魔法陣、レオンさんが……?」


「ああ。師匠が、俺のために用意していたらしい」


「レオンさん……優しい人ですね」


「ああ……」


 俺は、地図を見つめた。


 師匠の筆跡。


 『お前が困った時、これを使え』


 彼は、最初から分かっていたのだ。


 俺が、オズワルドに追い詰められることを。



「カイ」


 ベルが、俺の手を握った。


「レオンって人、カイのこと、大事に思ってるね」


「……ああ」


「オズワルドとは、兄弟なんだって?」


「そうらしい」


「どうして、兄弟なのに——敵になっちゃったんだろう」


 俺は、答えられなかった。


 だが——想像はできた。


 オズワルドは、900年間生き続けている。


 その間、彼は何を見てきたのだろう。


 何を失い、何を捨て、何を選んできたのだろう。



「ベル」


「何?」


「お前は、オズワルドを知っているか?」


 ベルが、首を傾げた。


「知らない……と思う。でも——」


「でも?」


「名前を聞いた時、何か——ざわざわした」


「ざわざわ?」


「うん。嫌な感じ。昔、何かあったような……」


 ベルが、こめかみを押さえた。


「思い出せない。頭が、痛くなる」


「無理に思い出さなくていい」


 俺は、ベルの頭を撫でた。


「いずれ、分かる時が来る」


「……うん」



    *



 洞窟の中で、俺たちは休息を取った。


 エルは、疲れて眠っている。


 ベルは、俺の隣で膝を抱えている。



「カイ」


「何だ」


「私ね、900年間、ずっと一人だった」


「……ああ」


「でも、今は一人じゃない」


 ベルが、俺の腕に頭を預けた。


「カイがいる。エルおねえちゃんもいる。嬉しい」


「……」


「カイ、約束して」


「何を」


「絶対に、死なないって」


 俺は、ベルを見た。


 紅い瞳が、俺を見上げている。


 その奥に、深い不安があった。


「約束、できる?」


「……分からん」


「分からない?」


「俺は、世界を救うために戦っている。その過程で、死ぬかもしれない」


 ベルの表情が、曇った。


「……そっか」


「だが——」


 俺は、ベルの手を握った。


「できる限り、生き延びる。お前たちのために」


「……本当?」


「ああ。約束する」


 ベルが、微笑んだ。


 900年分の孤独を背負った、小さな笑顔。


「ありがとう、カイ」


 彼女は、俺の腕に抱きついた。


 小さな体。冷たい肌。


 だが、その温もりは——確かに、そこにあった。

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