第7話:追撃——300の刃
遺跡から脱出した俺たちを、待ち受けていたのは——
300人の聖騎士団だった。
白銀の鎧が、灰色の平原を埋め尽くしている。
その先頭に、一人の男が立っていた。
白銀の鎧。黒い髪。そして——冷たい、死んだような目。
『検出:オズワルド・グラナート』
『聖騎士団長』
『年齢:外見35歳(実年齢:推定900歳以上)』
『マナ効率:82%』
『戦闘スタイル:大剣術 + 補助魔法』
『脅威度:SSS』
『特記事項:900年間、マナで肉体を維持し続けている。グラナート家はレオンの実家』
グラナート家——レオンの実家?
オズワルドと、レオン師匠は——
「カイ・ヴェルナー」
オズワルドの声が、平原に響いた。
「お前を、殺しに来た」
「殺す? 逮捕ではなく?」
「お前を生かしておくと、面倒だ。ここで消える方が、世界のためになる」
「世界のため……?」
俺は、オズワルドを見つめた。
彼の目には、狂気があった。
フロストが言った通りだ。
「オズワルド。お前は、何を目指している」
「世界を救うことだ」
「救う? 人を殺して?」
「必要な犠牲だ。お前一人の命で、世界の秩序が守られるなら、安いものだろう」
オズワルドが、大剣を構えた。
「さあ、抵抗しろ。その方が、俺も楽しめる」
俺は——後ろを見た。
エルとベルが、俺の後ろにいる。
300人の聖騎士団。
勝ち目は、ない。
「カイさん……」
エルの声が、震えている。
「ベル」
「何?」
「お前の力で、何人倒せる?」
「全員、いける。でも——」
「でも?」
「カイが、許可してくれないと思って」
俺は、考えた。
ベルの《ソウル・コンバージョン》を使えば、300人の騎士を一瞬で消せる。
だが——彼らは、ただ命令に従っているだけの兵士だ。
悪人ではない。
「……使うな」
「分かった」
「逃げるぞ。俺が時間を稼ぐ」
「カイさん!?」
エルが、叫んだ。
「一人で、無理です……!」
「一人じゃない」
俺は、懐から何かを取り出した。
レオン師匠がくれた地図。
その裏に——別の文字が書かれていた。
『カイへ。お前が困った時、これを使え。——レオン』
そして、その下に——魔法陣が描かれていた。
俺には見覚えのある、古い、だが強力な魔法陣。
「これは……」
『検出:召喚魔法陣(契約済み)』
『効果:契約者を任意の場所に転送』
『消費MP:1,000』
『備考:レオン・グラナートの署名入り』
師匠が、俺のために用意していた。
俺が追い詰められた時のために。
「エル、ベル。この魔法陣に触れろ」
「カイさんは……?」
「俺も行く。だが、その前に——」
俺は、オズワルドを見た。
「オズワルド。一つだけ聞かせろ」
「何だ」
「レオン・グラナートは、お前の何だ」
オズワルドの表情が、わずかに歪んだ。
「……弟だ」
やはり。
「お前は、弟を裏切ったのか」
「裏切ってなどいない。奴が、俺に逆らっただけだ」
「逆らった?」
「奴は、俺の計画を邪魔しようとした。だから——」
オズワルドの目が、暗く沈んだ。
「俺は、奴を追放した。二度と、俺の前に現れないように」
追放。
レオン師匠が、運用局を退職した理由が——今、分かった。
「お前は……」
「さあ、もう十分だろう。死ね、カイ・ヴェルナー」
オズワルドが、大剣を振り上げた。
俺は、魔法陣を発動させた。
「《テレポート》!」
『消費MP:1,000』
光が、俺たちを包んだ。
最後に見えたのは——オズワルドの、怒りに歪んだ顔だった。




