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オネエな王子は無自覚な男装伯爵に翻弄される8

 二人がお茶を飲んでる間に、株分けをすることになった。

 使用人がシュロソの葉を部屋から持ち出す。庭にもっていき、そこで株分けをする予定だ。


「メルデルはシュロソの葉がどういう効果があるのか知っているの?」

「睡眠作用で、合っていますか?この二週間調べてみたのですが、薬の一つとして使用される例もあるみたいですね」

「よく調べたわね。隣国に行った時にわかけてもらったのよ。香りを嗅ぐと落ち着いた気持ちになったから」

「確かに。寝る前に少しだけ煎じて飲むとよく眠れそうです」

「え?煎じるつもりなの?」

「まあ、試してみたい気持ちはあります。味とかも」

「そ、そうなのね」


 (私がここで試してみて、あなたを眠らせてみたいわ。そしたら……。だめよ。だめ。サラサン。嫌われたらどうするの?)


 サラサンは兄の言葉を思い出して、首を横に振る。


「どうかされましたか?」

「いえ、何も。このお茶も美味しいわね。少し甘い感じがする」

「わかりますか?陽の光がしばらく当たらなかった葉を煎じたら、甘く感じたので、わざと覆って日を遮った後、収穫したのです。丸い味がしますよね」


 メルデルは熱を込めて説明する。

 緑色の瞳が熱を帯びて、輝きを増す。言葉を紡ぐ唇はまるで熟した桃のようで、サラサンはまたもや気持ちを乱された。


(本当、罪な存在だわ。メルデル。ずっとそばに置いておきたい。伯爵じゃなければ私の侍従にしたいくらいだわ)


「そうだわ。メルデル。あなたには弟がいたわよね」

「はい」


 突然の質問に少し驚いたように「彼」は返事した。


(弟がいるならメルデルが伯爵の座を退いても……。だめよ。だめ、そんな自分勝手な希望を持ってはだめ)


「弟がどうかしたのですか?」

「え、あの。ほら、私も弟でしょう?兄は私が弟で苦労しているから、あなたはどうかなあと思って」

「あの、苦労というか。ザッハル王子殿下は苦労も何もされていると思いませんよ。私も弟のことは可愛いと思いますけど、そういう気持ちを持ったことはありません」

「そ、そうなのね」


 メルデルが弟を語る時、少しだけ不思議な印象を受けた。

 可愛いというのは事実だろうけれども、辛そうなそんな印象だ。


(二人が仲が悪いという話は聞いたことがないけれども)


 兄弟仲が悪い例はよくある。弟が出世欲が強かったり、母親が違ったりするといざこざが起きやすい。


(メルデルと弟くんは母親も同じだし。歳も離れ過ぎてる。何かあるのかしら?)


 聞くにはあまりにも家庭の事情に足を突っ込むことになり、サラサンはメルデルに尋ねることはなかった。

 

 そうしていると株分けが終わったようで、使用人が持ち込むか確認してきた。

 話も途切れたので、いい機会だと彼は株分けしたシュロソを持ってくるように伝える。

 

「そう、二つともそっちに置いておいて。メルデル。こんな感じでいいかしら?」


 使用人に窓際に置くように指示し、「彼」に株分けしたシュロソを見せる。二つの同じ大きさの鉢に、細長い葉を持つシュロソが収まっていた。二つに均等に分けられ、茎には葉にも傷は見当たらなかった。


「綺麗に株分けされてますね。ありがとうございます」

「結構重いから、使用人に運ばせるわね」

「いえ、私が持ちます」

「重そうよ。大丈夫?」

「大丈夫です」


 メルデルはそう答えたが、ほっそりした「彼」に鉢は負担に思える。

 けれども彼の予想に反してメルデルは軽々と鉢を持ち上げると抱える。


「服が汚れるわ。やっぱり」

「大丈夫です。株分けしていただきありがとうございました」


 心配するサラサンににこやかな微笑みを向け、メルデルは鉢を抱えて帰って行った。

 意外に逞しい「彼」にまたしてもトキメキ、うっとりとしているとサラサンは気がつく。


「次の約束をするのを忘れたわ!」




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