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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第17話 訪問者

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96 質疑応答の時間

 返信は、すぐにやってきた。


『ありがとうございます。それでは質問です。まずはそちらの課外活動を作った本来の理由を教えてください。出来る限り具体的に書いていただけるとありがたいです。

 なお説明に必要でしょうから、私について、今書ける範囲の情報を開示していきます。

 ○ 3ヶ月前、アトラ世界から日本に逃げてきた

 ○ 逃げてきた理由は、戦争に伴う徴用で生活が成り立たなくなった上、徴兵させられそうになったため

 ○ 魔法は一通り使用可能で、得意なのは空間系

 ○ 年齢はこの学校の生徒の範囲内です』


 戦争ということは、衣緖菜と同じバナジードの出身か、もしくは敵であるサラステクスの出身なのだろうか。

 なら書いてまずいことがあるなんて可能性はないだろうか。

 そう思ったところで、衣緖菜の声が聞こえた。


「私は近未来予知で問題がない限り、口は出さない。逆に言うと、私が口を出さない限り問題はない。だから返答は陽翔自身で考えて書いて」


 安全を気にせず書いても、何か危険があるなら衣緖菜が注意してくれるということか。

 ならということで、正直ベースで書いてみる。


『もう1人の部員がアトラ世界から逃げる際、先に部下をこちらの世界に逃がしました。その部下がこちらの世界で幸せにやっているか、消息をつかみたいというのがメインの目的です。なお逃げた理由は、このままでは全員が無駄死にするということと、戦うべき意義がなくなったというのが理由です』


 あと、この説明も追加しておこう。


『私自身は日本人で、魔法はここにいるもう1人に教わっているのですが、最小限程度しか使えません。あともう1人は、昨年7月にこの世界に来ました。それまでいたのはバナジード神聖王国軍です。軍では作戦終了後に必要以外の記憶を消去するので、魔法の知識以外には最小限のことしか記憶にありません。脱出を決意したのは、高位聖職者とされる人物が、自己保身のために命令系統を無視した行動をとったのがきっかけです』


 ここまで書いて、誤字脱字がないのを確認。


『以上でよろしいでしょうか。よろしくお願いします』


 そう付け加えて、送信する。

 これで大丈夫だろうか。向こうはどう反応するだろうか。

 衣緖菜は何も言わない。

 きっとここでリアクションすることが、向こうの反応というか、受け取る情報に影響するからだろう。


 1分くらいで、返答がやってきた。

 

『わかりました。それでは次の質問です。そちらの活動にはあと1人部員がいるはずです。ですが今現在、部室内には見当たりません。その方についての質問になります。

 次のメールにある質問項目について、選択肢で、一番適切と思われるものを書いて返信してください。元のメールに書き足して返信いただく形が一番簡単かと思います』


 そこまで読んだところで、メールソフトがもう1通着信したことを知らせてきた。

 このタイミングの良さ、向こうから俺の行動が見えている様だ。

 魔法が使えるなら出来ても不思議はない。

 

 返答の内容だけでなく、メールを受け取って返信を書いている俺自身の反応や、何なら俺の表層思考くらいは見ている可能性がある。

 まあそうだとしても、今更防ぐ方法はない。

 衣緖菜と半年以上暮らした結果、いい加減慣れたし。


 さて、今回の質問は、こんな感じで選択肢を選ぶ方式だ。


『もう1人の部員について、次の質問の選択肢で最も近いものを選んでください。もし必要だと感じたなら、追加説明を書き加えていただいても結構です。


1.その部員の方の、この『異世界魔法部』に対する立場は次のうちどれでしょうか。

 ① 幽霊部員で、名前だけ借りている

 ② 部員として一緒に活動はしているが、今日はたまたま部室に来ていない

 ③ ①とも②とも言い切れない

   (追加説明が書ければ書いてください。面倒、または書きにくい、書くのに時間がかかる場合は、書かなくても結構です)


2.その部員の方は、この部活以外では、どんな間柄ですか?

 ① 単なるクラスメイト

 ② クラスメイトで、友人と言っていい関係

 ③ この学校に入る前からの友人


3.あなた個人は、その部員をどう判断していますか?

 ① 存在を認識しているという程度の間柄

 ② 話をする程度の間柄

 ③ 利用できるが信頼できないと判断している間柄

 ④ 信頼していいと判断している間柄


 以上です。よろしくお願いします』


 ここでなぜ衣緖菜ではなく、メイについての質問なのだろうか。

 それとも衣緖菜については、また次にメールで質問が来るのだろうか。

 わからないけれど、それでもこの質問に対して真面目に答えたほうがいいのは確かだろう。


 そして今の形式でなら、あまり時間をかけずに返答した方がいい。

 ならということで、返信ボタンを押して、書き加える形式で回答する。


 1については、③だろう。

 あと『こちらの事情を知った上で、この部活を作ろうと提案したのはこの人です』と付け加えて。

 

 2は③で、そのままOK。

 3も④でいいと思う。

 メイは信頼していいと思っているから。


 例によって衣緖菜に確認せず、そのまま送信ボタンを押す。

 今度はすぐに返答がやってきた。

 時間にして5秒、返信なんて書く時間も無いだろうくらいの間合いで。


『回答ありがとうございました。それでは、そちらにお邪魔しようと思います。転移魔法を使うつもりですが、宜しいでしょうか。もうお一方にも確認していただけると幸いです』


 俺が尋ねるより前に、衣緖菜が返答する。


「大丈夫。私の方は問題ない」


 そして俺が返信するより早く、次のメールが到着する。


『ありがとうございます。それではそちらに参る前に、私についての説明をしておきます』

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