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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第16話 俺は確かめられなかった

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92 買い出し開始

 4月13日土曜日、朝9時少し前。やや肌寒いけれど、雨は降らなそうな程度の明るさの曇り空の下。

 俺と衣緖菜が歩いているのは、私鉄ガード北側の道。

 俺も衣緖菜も、空の通学用ディパックを肩にひっかけて歩いている。


「先に待っているなんてことはないか」


「だいたい同着」


 この道は学校への行きには通らないけれど、帰りには時々通る。

 この先にそこそこ安い業務用スーパーがあるから。

 今回の目的地もその業務用スーパーだけれど、いつもと微妙に動機と目的が異なる。


 スーパーの入り口まであと5mというところで、知っている奴が先の交差点を曲がってこっちを向いたのが見えた。

 メイもこっちを認めて手を振る。


「おはよー。それじゃちょうど誰も周囲にいないから、これをまず収納して。ちょっと重いから持ち歩きたくない」

 

 メイが肩にかけていた、でっかいバッグを衣緖菜に渡す。


「わかった」


「今のは何だ?」


 わざわざ何を持ってきたのか、わからないから聞いてみる。


「ノートパソコンとフライパン2種類とタッパーと包丁とピーラー。今日はピーラーで皮をむく必要はないと思うけれど、一応。そっちにも一通り料理道具があるのは聞いているけれど、今日はあった方が便利だから。それじゃ買い出し行くよ」


 今日はこの後、メイと業務用スーパー、もうひとつ別のスーパーと買い出しをした後、うちの家で昼食を作って食べる予定だ。

 何故こうなったのか。

 これは昨日の夜、メイと電話で話した結果だ。


 ◇◇◇


 午後8時過ぎ、英語の予習をしていたところで、スマホが振動し始めた。

 画面を見るとSNS経由の無料音声通話、メイからだ。

 何だろうと思いつつ、画面をタップする。


「出た出た。都築、今話して大丈夫?」


 ちょうど一区切り英文を訳し終わって、きりがいいところだった。


「大丈夫だけれど、何だ?」


「火曜に話していたご飯食べにいく件。さっき衣緖菜に聞いたら、そっちの家、調味料その他があまり揃っていないよね。それに魔法部も部室があるなら、お茶とお茶菓子くらいあった方が良くない? ということで、明日は夕食を食べに行くんじゃなくて、買い出しをして昼食を作るのに変更したから」


 ちょっと待て。


「変更したって、確定かよ」


「そう。予定がないのは衣緖菜に聞いて知っているし、食材が今どれくらいあるかも、ここ一ヶ月の夕食についても聞いた。肉野菜炒めとそばつゆ味の煮物だけってのは心配だから、もう少しあれこれ覚えてもらおうと思って」


 確かにここへ来て半年ちょっと、家で作ったのはその2品くらいだ。

 基本的に惣菜かレンジでチンするタイプの冷凍食品を買ってきて、魔法で暖めて食べているだけ。


 ただ高校生の料理能力なんて、普通はその程度だと思う。

 十分大人のはずのケイトさんも、その応用くらいしかしていない様だし。


「あと折角部室を手に入れたんだから、お茶くらい飲めるようにしたいし。冷蔵庫がなくても魔法で暖めたり冷やしたり出来るから、問題ないでしょ。だれか新人が来た時、何もないと間合いを取るのが面倒だよ。身体を動かす系の部活なら別だけれど、部屋で話をする系の部活だと。他にも知っている魔法や使える魔法を系統別にまとめるとか、やった方がいい作業が結構あるしさ。設立して部屋をキープした他は、私とやったWebページ作業等以外、何もしていない様だけれど」


 確かにメイが来た木曜以外は、あの部室で衣緖菜とのんびりしていただけ。

 異世界魔法部なら、ある程度そういった魔法に関する資料の作成をしておいた方がいい。

 衣緖菜の記憶や知識をコピーするのではなく、紙や文書ファイル形式で作っておくべきだろう。


 それに間合いを取るのに飲み物があった方がいいというのは、わかる気がする。

 俺はあまりコミュニケーションが上手い方ではないから、そういった小道具はあった方がいい。


「ということで、あれこれやる事が出来たから、明日は業務用スーパーに朝9時集合、他にスーパーをもう一件回って買い出しをした後、そっちの家で昼食その他を作って。作って昼に食べなかったうちの3割は私が持って帰るからよろしく」


 一方的な話だけれど、どうせきっと……

 ということで、一応は確認してみる。


「どうせ衣緖菜も了承済みなんだろ、これ」


「そーゆーこと。あと買い物は予算6,000円でいい? 1人2,000円で計算で、私も2,000円払うから。食べるほかに持ち帰る分もあるし」


 なるほど、その辺はきっちり割り勘なのか。

 その辺はなかなか良心的だ。


 一人2,000円というのも、そこそこ実情に沿っている気がする。

 出来合いの弁当と惣菜を買って食べる場合の、3~4食分。

 土曜、日曜、月曜朝分だと思えばそう高くない。


 ただ微妙に余分な考えも混じっている気がする。

 たとえば……


「学校や寮の食事が今ひとつだから、うちで大量に作って持って行こうってことじゃないよな、ひょっとして。寮の部屋のキッチンの流しは極小サイズで、コンロも無茶苦茶低火力だって聞いたし」


「バレたか。夕食、揚げ物が多いし味が薄いし今ひとつで。でもよく知っていたね。寮は入ったことはないと思うけれど」


「香取が言ってた。火力が低すぎて冷凍チャーハンがべたつくし、フライパンを洗うのも難しいくらいキッチンが狭いって」


「なるほど、そっちから聞いたわけか。まあそういう意図もあるけれどさ。料理を覚えてもらおうというのも本当だよ。ということで明日9時に業務用スーパー東竹出店待ち合わせで。スーパーは2軒回る予定だから、そのつもりで」


 ◇◇◇


 そんな感じで、買い出しに来た訳だ。

 そしてメイは、スーパーの入口でカートにカゴを乗せる。

 

「カートが必要なほど買うのか?」


「重いからね」


 どうなるんだろう。

 そう思いつつ、俺はメイと衣緖菜の後をついていく。

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