89 課外活動の書類作成
「今日は寮の食事を頼んであるから、そろそろ限界」
という感じで、17時45分にメイが帰った後。
再び外出してスーパーに行くのは面倒なので、今まで買って衣緖菜が魔法で収納していたもので夕食。
具体的には冷凍唐揚げ袋入り500gを魔法で解凍。
ポテトサラダ袋入りを500g、いろいろ入っているカットサラダ1袋。
主食のごはんは炊飯器の早炊きで炊いて、いつもと同じように食べた後。
「それじゃ、サークルの申請をするから」
「私もここでFXと株をやる」
スマホでも出来るだろうけれど、文字を打ち込むのならパソコンの方が楽だろう。
ということで俺は自分用のノートパソコンを部屋からダイニングテーブルに持ってくる。
衣緖菜も自分のパソコンを出して、ダイニングテーブル俺の隣へと置いた。
オンライントレードや勉強をやるときは、だいたいこうやってリビングのテーブルで、横並びに座ってやっている。
横並びだと少し狭くなるけれど、お互いの作業が見えるし相談がしやすいから。
起動してブラウザを開き、ネットでメイに聞いた検索用キーワードを打ち込んで、出てきた検索結果から竹出高校のページを開く。
学籍番号とパスワードで内部生用ページにログインして、『生徒会・課外活動』のページへ。
『同好会・課外活動』申請のページは、あっさりと見つかった。
書かれている注意事項を確認。
メイが言っていた通り、生徒3人以上いれば、新しい同好会や課外活動を申請できる様だ。
顧問の先生については、申請が通った後、学校側でつけてくれることになっている。
課外活動の数が多すぎて、どの先生も5~6箇所の顧問をかけ持っているようだけれど。
申請書に記載べき項目は、次の5点。
① 課外活動の名称
② 課外活動の目的
③ 課外活動の活動内容
④ 代表者と構成員の学籍番号
⑤ 活動場所の希望
このうち④と⑤は今の時点で書ける。
メイの学籍番号は知っているし、活動場所の希望は『専用部室』を第一希望にして、第二希望を『教室、準備室等学内の屋内』にすればいいだろう。
考えなければならないのは①、②、③だ。
名称は別として、本当の目的は『異世界から脱出してきた衣緖菜の部下を探すこと』。
活動内容は『ネットそのほかあらゆる手段を使って、衣緖菜の部下を探す』。
そんな目的、正直に書くわけにはいかないだろう。
でも叩き台として、一応は書いておく。
さて、それではどう加工しよう。
すぐには思いつかないので、隣でオンライントレードをしている衣緖菜の手が止まったところを狙って聞いてみる。
「衣緖菜、今、話をして大丈夫か?」
「問題ない。今、確実に稼げる分は仕込んだ」
今は基本的に、衣緖菜のオンライントレードで稼いだお金で家賃や生活費、学費を稼いでいる。
もちろんケイトさんも、『保護者だし、足りなければ出すぞ』と言ってはくれている。
でもケイトさんの稼ぎも衣緖菜と同様に、予知魔法とオンライントレード。
戸籍を作って引き取ってくれただけでもありがたいのに、これ以上負担をかけたくないのが本音だ。
だから衣緖菜が稼いでくれるのはありがたいし、俺が出来ないのは衣緖菜に申し訳ないというのもあったりする。
というのは、とりあえず今は置いておいて……
「これが課外活動の申請書なんだが、何か他に目的とか、書いた方がいい内容って思いつくか?。俺は今ひとつ思い浮かばないんだが」
衣緖菜は少し考えるような間をおいた後。
「課外活動としてなら、私と陽翔だけの目的ではなく、もっと大勢の生徒を対象にした目的と活動内容にした方がいい。そういった活動の過程で部下の情報が入ってくるというのが、きっとあるべき形」
なるほど、確かにそうだ。
「ありがとう。その方向で考え直してみる」
「あとこの書類については、常識は気にしなくていい。非常識だとかおかしいとか思っても、次の瞬間気にならなくなるように魔法をかけておくから。必要なのは、集まって欲しい人、あの異世界から来た人から見た、わかりやすさ」
そういえば、メイも言っていた。
『多少無茶な内容でも、衣緖菜の魔法で問題なく申請が通るはず。むしろわかりやすい方がいいかな。常識としてはありえない内容でも』
もっと大勢の生徒を対象にした内容で、非常識でもいいから、わかりやすさが重要。
「わかった」
異世界から来た生徒の交流会としての課外活動か。
傍から見るとこんな感じの活動になるだろうか。
活動が、『異世界からの帰国子女というロールプレイを行いつつ交流を深める』
目的が『自分たちが異世界からの帰国子女であるというロールプレイを行うことで、想像力を養うとともに、物事を新たな観点で見ることを心がける』。
こうなると、課外活動の名称は『異世界交流会』、いやいっそ『異世界部』だろうか。
うむ、怪しい上に微妙。ボツだ。
もう少し考えてみよう。
あの異世界から来た人を集められそうなキーワードはないだろうか。
あの世界にあってこの世界にないものとか、あの世界のものでこの世界で役に立ちそうなものとか。
そう考えると、すぐに思いついたものがある。
魔法だ。
俺たちは衣緖菜の魔法のおかげで、お金を稼いで生活できている。
なら一般常識をふりきって、こんなのはどうだろう。
名称を『魔法部』。
目的が『異世界出身者の懇親の場として機能するとともに、この世界にはない知識を使用して、この世界には無い魔法を使えるようにする』
なら活動は、こんな感じだろうか。
『異世界出身の生徒の交流を図る。そのために校内だけでなくネット等で広く情報を集め、異世界出身者との交流を図る。また異世界での知識を教え合う等して、魔法の知識を収集・研究・訓練して、使えるようにする』
名称、目的、活動が『魔法』をキーワードにしてすっきりつながっていて、わかりやすい。
それにこれなら、衣緖菜の部下を探す活動も課外活動として行える。
なので先ほどと同様、一応記載して印字して確認。
冷静に見てみると、どう考えてもまともな課外活動じゃない。
魔法なんてものは、少なくとも日本の常識としては存在しないから。
信じているとすれば怪しい秘密結社とか、危ない新興宗教とか、もしくはただの電波とかだろう。
しかし重要なのは、わかりやすさらしい。
メイや衣緖菜はそう言っていたし。
ならこれが正解なのだろうか。
そう思った時だ。
「それで大丈夫。ただ名前がただの『魔法部』では良くない」
微妙に予想外の意見が出た。
もちろん衣緖菜からだ。




