88 陰謀?
おいおい、ちょっと待って欲しい。
「異世界関係者用のサークルなんて、学校に作っても意味はないんじゃないか。同じ学校の近い学年にいる可能性なんて、ほとんどないだろう」
「そうかな」
メイは悪戯っぽいニヤニヤ笑いを浮かべつつ、口を開く。
「この学校だけでも、生徒は1,920人いるんだよ。だからもう1人2人いる可能性は無いとは言えないでしょ。バナジードから他にも逃げてきた人がいる可能性は当然あるし、敵だったサラステクスから逃げてきた人もいる可能性があるし。
衣緖菜がこの世界を知って、逃げてくることが出来た。なら他にもこの世界を知って、逃げてきた人がいても不思議ではないよね」
言いたいことはわかる。
しかしだ。
「でも、衣緖菜と衣緖菜の部下あわせても6人だろう。日本全国の中高生が何人いるかわからないけれど、その中の1,920人という中に逃げてきた生徒がいるという可能性は、ごくごく低い気がするんだが」
「逃げてきた総人数が、都築が思っているよりずっと多い可能性はあるよね。ケイトさんから衣緖菜が聞いたところによると、大陸には人間の国家だけでもバナジードやサラステクスの他に、フィルメディ、ロクモア、アルメディアがあるんでしょ。その上でエルフやドワーフの里なんてのや、島嶼部を拠点にする海洋国家なんてのまであるそうだから。
ならある程度の人が来ていても不思議ではない。実際ケイトさんみたいに、異世界から来た子供を保護するNPOなんてのがあるくらいだし。違う?」
なるほど、俺は理解した。
メイの言葉に納得したのではなく。
メイがこれだけの知識を持っていて、俺にこう勧めている。
当然知識の出所は衣緖菜だろう。
つまり、きっとこの件は、ここで話す前に……
「この独自の課外活動を作る件については、既に衣緖菜と相談済みということか。近未来予知魔法を使って、上手くいくかどうかの確認もして」
「バレたか。でもその方が話が早くて助かる」
「個人名ではなく、公的な拠点を作って受け付けた方が、早く結果が出そう。見つかったという具体的な状況までは見えていない。でもいい方にむかうという感覚はある」
やはり共謀済みだったか。
なら「するかどうか」の判断ではなく、「どうやってやるか」を考える段階なのだろう。
でもその前に、確認しておきたいことがある。
「このサークル、衣緖菜が入るのは当然として、俺やメイはどうするつもりで考えてるんだ? メイはさっき、第二文芸部に入ると言っていたけれどさ」
「都筑は衣緖菜を受け入れた当事者でしょ。だから当然入ってもらうし、会長として運営をやってもらう予定。衣緖菜も知識はあるけれど、都筑の方が日本的な常識で運営できると思うから。
あと私は参加はしない予定。あくまで、衣緖菜や都筑の友達という立場だから。
でも名前だけは貸すつもり。課外活動を申請するには、校則で3人以上の生徒が必要となっているから。実質幽霊部員だけれど、問題は無いよ。部や同好会の掛け持ちはOKだからね。私も第二文芸部とこれの他に、幾つか名前を貸す予定。サークルが多い分、面白そうだけれど人数が厳しくて廃止寸前というところが多いみたいだから」
既にそういう予定が入っているほど、メイは情報収集や周囲との付き合いを進めている様だ。
俺は周囲の男子連中とくだらない話をしただけだけれど。
ただこの学校の生徒だと、くだらない話なりに話が通じるので楽しかったなんてのはある。
ある程度以上はプライベートに踏み込んでこないし、正しい理屈なら通じるし、無茶は言わないし。
あと衣緖菜も、それなりに周囲の女子と話は出来ていたようだ。
話の内容までは確認していないけれど。
というのはともかくとして、こんな問題が気になる。
「これって、新入生がいきなり提出しても認められるのか?」
「設立時の手続きと提出書類、様式はネットで出る。名称や設立目的なんかの記載は、都筑に全部任せた。提出要領なんかは衣緖菜の魔法で確認して。活動拠点になる部室も確保できる予定だから」
「明日の午前中までに提出すれば、部室の確保は可能。提出は担任の匝瑳先生ではなく、ネットで直接。ただ書類の内容詳細までは見えない」
この話は、とりあえずこういう理解でいいのだろうか。
確認しておこう。
「つまり書類の作成と活動の責任者は、俺がやれということか。今日中に書類を書いてそのままネットで提出すれば同好会として認められるし、部室は確保できると」
「そう。部の名称や設立目的は、都筑が考えて記載するということで。どうせそういうのは得意でしょ。それに多少無茶な内容でも、衣緖菜の魔法で問題なく申請が通るはず。むしろわかりやすい方がいいかな。常識としてはありえない内容でも。ということで……」
メイはそこで一度言葉を切って、一拍置いてから。
「私が新しい同好会の件でここで話すべきことは、こんなところかな。ここから先は、都筑と衣緖菜に丸投げで十分でしょ。ということで、夕食時間に間に合うように帰るために、次の話題に移るよ。
次の話は、何処のスーパーが安くておすすめかの情報。寮の朝食や夕食はすぐ飽きると中学からの寮生が言っているみたいだからさ。ここで半年ちょい過ごしている衣緖菜と都筑に、この辺のスーパーの対策を聞こうと思うんだけれど……」




