87 メイの作戦
4月8日月曜日、俺と衣緖菜とメイは、無事竹出高校に入学した。
まずは家で、新しい制服を着てと。
「中学校の制服も、これくらい安くて簡単に買えれば楽だった」
衣緖菜の言う通り、ここの制服は安いし、店で簡単に買える。
今まで通っていた中学校の制服の半額以下だし、店で注文してサイズを測ってうんぬんなんて手間がかからない。
中学の時は注文してサイズを測って仕立ててと2週間近くかかって、新学期、転入に間に合うか結構ぎりぎりの思いをしたのに。
理由は明白だ。
「大手ファストファッション店と提携しているからだろう。このジャケットもズボンも中に着るポロシャツも、基本的にはあの店の既製品だし」
ジャケットもズボンもスカートも、元々店のラインナップにあるもの。
中に着るポロシャツに至っては『白色であること』以上の既定はない。
この辺は合理的で、なかなか好感が持てる。
マンションを出て10分程歩いて、学校へ。
まずは衣緖菜と2人で、クラス発表の掲示を確認。
「同じクラス、メイとも」
「何とか7組に入れたな」
中学校から持ち上がりが1組から6組、高校で入学が7組から10組。
ちなみに同じカテゴリーなら成績順だ。
つまり3人とも、無事最優秀なクラスに入れたということだ。
この先はどうなるかは別の問題として、まずはめでたい。
さて、高校が1学年10クラスで、中学が6クラス。
おかげで入学式が、とんでもない人数になっていた。
ただ人数が多いことが生む結果は、それだけではない。
中でも俺が一番想定外だったのは、オリエンテーションの時間、クラス担任の匝瑳真由先生(29歳独身)が資料を配って説明した内容だ。
「この学校は2,000人近い生徒がいて、しかも8割が寮員です。これらの生徒はそのままでは放課後以降授業開始まで、食事と風呂、予習復習以外にほとんど何もすることがありません。
その代わりにこの学校は、課外活動が盛んです。公認だけで100以上存在しているので、ひとつひとつ紹介はしません。詳細は先ほど配った『課外活動のしおり』の通りです。現在は6割以上の生徒が何らかの課外活動に所属しています。予習復習等はするとしても、授業外で他のクラスや学年と交流を持つことは悪いことではありません。
ただ活動はあくまで任意です。また校内でのビラ配りや寮の戸別訪問、勧誘目的の付きまといは禁止されています。もしそういった事案に遭った、もしくは目撃した場合は、遠慮なく職員に届け出てください」
課外活動が任意なのに、100以上あるのか。
ちらっと見たが、野球部やサッカー部といったいかにもなものから、漫研、視聴覚文化研といったありがちなもの、写経愛好会なんて渋すぎるものやUMA捜索部、SCP竹出分室なんてよくわからないものまであるようだ。
中学校とはかなり様子が違うなと感じる。
それともこの学校が、他と違って異常なのだろうか。
学校が終わった後、メイも含めて3人で家に帰り、作戦会議を実施。
「私は第二文芸部に入る予定だけれどね。衣緖菜や都筑はどうするの?」
作戦の前に、疑問点を確認しておこう。
「文芸部って、第一第二があるのか」
「公認でしおりに載っていたのは第三まで。公認でないのもあるようだけれど。第一が純文学、第二がSFもラノベも何でもあり、第三が高校在学中にデビューすべく、ノルマあり、全員での批評会ありだって。私はラノベの溺愛系メインだし、他人のを読んで批評するなんて面倒なことはしたくないから、第二かなってところで。文芸部の中では人数も一番多いみたいだしさ。中学高校あわせて20人ちょい」
飽多の某所の中学でお世話になった文芸部のことを思い出す。
俺が出た後は3人、メイが抜けた後は2人しかいない筈だけれど、大丈夫だろうか。
でもまだ新入生が入ったかどうか、わかる時期ではない。
今は、自分たちのことを考えるべきだろう。
「俺や衣緖菜も、何処か良さそうな課外に入った方がいいんだろうか」
「でも高校も無事始まったし、そろそろ衣緖菜の部下捜しを始めた方がいいでしょ」
そう、部下捜しはいまのところ、ほとんど進んでいない。
5340018は埼玉県の古志ヶ谷にいる夫婦に引き取られ、賀美結月という名前になった。
5360012は豊洲のマンションに住む夫婦に引き取られ、荏原彩葉という名前になっていた。
それぞれ夏休みに、ケイトさんの案内で会いに行ったのだ。
しかしその後は、まったく進んでいない。
ブログの方も、知恵袋や質問箱、ネットの掲示板やSNSでの呟きなんてのを使ってみても、反応がない状態だ。
「ああ。無事高校も決まったし、確かにはじめたい。なら放課後は家に直帰して、ネットで呼びかけたり、何かありそうな所に行ってみるか」
「でもそれじゃ、あまり効果はないんじゃない? 今までもネットで呼びかけていたけれど、反応は無かったんだし」
そう言って、そしてメイはにやりと笑みを浮かべる。
明らかに何かを企んでいる表情だ。
「だからいっそ、堂々と拠点を設けて、部下を含む異世界から来た人、何か情報を持っている人、興味がある人を集めてしまえと思うんだけれど、どう? 具体的にはアトラ世界とかバナジード、サラステクス、フィルメディとかの名前を出した、異世界関係者用のサークルを作ってしまえ、ということだけど」




