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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第12話 家を出た日

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79 最後の放課後(3)

 その後はいつも通り文芸部の活動を開始。

 なお俺は、今回だけは真面目に小説の校正にとりかかる。

 引っ越してからメイに送ってもいいのだけれど、そこまで時間をかけるほどのものではない気がするから。


 加賀谷先生は年生最終日だというのに、今日も見回っただけで、そのまま部屋を出て行った。

 おかげで邪魔を気にせず作業が出来る。


 一通り小説を校正して、こんなところかなと思って時間を確認。

 17時35分。まだ終わりまで少し余裕があるけれど、これでいいだろう。


「メイ、とりあえず書き終わったけれど、テキストファイルで送信していいか?」


「ZIPで圧縮かけて送って。圧縮と解凍の時間を足してもその方が早いから」


「わかった」


 中1から2年ちょい、パソコンもスマホも使えない生活だったから、そういった操作はあまり得意じゃない。

 それでも何とか圧縮して、学内メッセンジャーアプリでメイに送る。


「おし、到着。校正指示その他は後でやってメールで送るから。この文章量ならページ調整でイラストを半ページつけるかもしれないけれど、その辺はまた後でということで。何ならイラスト、津久井が自分で描く? サイズは概ねB6くらいで」


 いや、人に見せられるイラストを描く能力は、俺にはない。


「やめとく。絵描きには自信がない」


「わかった。それじゃ誰かに描いてもらうなりAI絵でごまかすなり、何とかするから。仕上がりは後にPDFで送るから、その時は校正よろしく。あと仕上がった部誌もPDFでいいよね。郵送だとお金かかるし面倒だから」


 うーむ。


「そういう冊子を作るのに慣れている感じだな、メイは」


「去年一昨年とやっているしね。コンピュータ室のプリンタはPDFをUSBメモリから読み込めるし、ページ順で一部分ずつ両面印刷できるから楽だよ。漫研もそうやって印字して製本しているしね。あっちはページが多くて製本が面倒だって言っていたけれど」


 そういう趣味的なことは、思えばほとんどやっていなかったなと気づく。

 でも大学受験まで考えたら、勉強以外にそういった趣味に手を出す余裕はほとんどないだろう。

 スポーツ特待とか、芸術系へ進学する連中を除けば。


 俺の趣味は、強いて言えばネットでWeb小説を読むことだろうか。

 小遣い0なので、それ以外に出来なかったというのもあるけれど。


「さて、それじゃ少し早いけれど、そろそろ片付けようか。焦らなくても明日午前中が終わったら夏休み、お話を描く時間は十分あるから」

 

 片付けと言っても、基本的には自分のタブレットとキーボードを仕舞うだけだ。

 時計を確認。17時50分、学校を出ても文句は言われない時間になっている。

 ケイトさんや衣緖菜を待たせているだろうから、早く出た方がいい。


「それじゃ一学期の間、世話になりました」


 課外が始まったときに挨拶はしたけれど、最後だから一応もう一度、頭を下げておく。


「はいはい。でもちょくちょくメールはすると思うから、その時はよろしく」


「わかった」


 何か少し気になるけれど、それでも衣緖菜たちのことが気になる。

 だからメイたちより先に部屋を出て、まっすぐ昇降口を目指す。


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