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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第12話 家を出た日

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75 4時間目の授業

 明日で終業式だけれど、今日までは普通に授業がある。

 ちなみに今は4時間目、社会の授業中。

 でも夏休み直前ということで、真面目に聞いている奴は少ない。

 

 進度も遅れていて、今日の授業はやっと明治時代というところから始まった。

 そろそろ公民分野をやっていないと業者テストの範囲にすら間に合わないし、このままでは自由登校までに公民分野が終わるとは思えない。


 この辺は都内でも、ダメダメな場所にあってレベルが低い公立中学なら、きっと同じだ。

 ただ都内や大都市圏内なら、他に逃げ場はある。

 私立の中学があるし、公立でも中高一貫校があったりする。

 同じ自治体内なら、進学する中学を選ぶことが可能だったりもする。

 

 でもここは、他に逃げ場はない。

 町内に中学はこの1校だけ。

 県立の中高一貫校はあるけれど、ここから通うのは難しい。

 都内や大都市圏のような電車の本数はないし、そもそも駅へ行くことすら困難だったりする。


 こういった田舎で育つというのは、上を目指そうという人間にとっては絶対的に不利だ。

 都内で恵まれている連中の数倍の努力が必要になる。


 この町に来て良かったことのひとつは、そういった格差が実感としてわかったことだろうか。

 中学入学直前までの俺は、きっと恵まれていたのだ。

 あのまま行ったら、恵まれていないということが実感として理解できなかっただろう。

 知識としてはわかっていても。


 たとえばメイは、これまでに相当以上の苦労をしているのだろう。

 俺が去った後もこの中学校に残るし。

 それでも高校でこの町を出るから、その分少しはましになるのだろうか。


『はいはい、津久井は余分なことで悩まないの。私もこの学校に通うのは、夏休み後から自由登校になるまでの間の3ヶ月だけだしね。その後はその後で、実はまた少し別の作戦を考えたりしているし』


 放課後にメイから送られてきた文章が思い浮かぶ。

 完全に覚えていて呼び出せるのは、魔法のおかげ。

 このくらいなら魔法と意識することすらないし、使用する魔力も微小で済む。


 ただ、思い出したところで、俺がメイに対して出来ることは何もない。

 別の作戦が上手くいってくれることを祈るくらいだ。

 どんな作戦かは、メイが教えてくれなかったから、わからないけれど。


 社会担当の伊藤という中年女性教師は、もう半ば生徒を無視して授業を機械的に流すように進めている。

 このペースはきっと、この授業中に歴史の現代部分まで終わらせるつもりなのだろう。

 なんだかなと思いつつ、時計を見る。

 12時15分、あと15分で授業は終わり。

 

 そういえばもう、うちの父母との話し合いは終わっただろうか。

 終わっているのなら、ケイトさんか衣緖菜から連絡が来ている可能性が高い。

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